【特別企画】70周年を記念する最新モデル
ハイレゾもドラレコも、いま欲しい機能を網羅。ケンウッドのカーナビ「彩速ナビ Type M」を体験
FLAC/WAVのハイレゾ音源は192kHz/24bitまで対応し、既存の圧縮音源も含め、すべて192kHz/32bitへのアップコンバートを経て再生を行う。それに加えてK2テクノロジーによるビット拡張と周波数レンジ拡張のオン/オフを好みに応じて選択できるので、ハイレゾ以外の音源についても確実な音質改善が期待できる。
音質チューニング機能が充実していることも彩速ナビならではのアドバンテージだ。リスニングポジションの詳細設定はもちろんのこと、13バンドのグラフィックイコライザーを駆使した詳細な音質チューニングに対応。
走行ノイズと音量を速度変化に対応して補正する「ドライブ・イコライザー+」や音像の位置を高めに補正する「サウンドライザー」機能まで実装し、音質にこだわる聴き手の要求に答える一歩踏み込んだ使いこなしを可能にしている。タイプMはミドルレンジのAVナビだが、オーディオ機能については上位シリーズに迫る充実ぶりが目を引く。
ハイレゾ再生に対応する「KFC-XS」シリーズのスピーカーを実装した試乗車で実際に再生音を聴いてみる。トゥイーターの位置がAピラー中央あたりだったのでウーファーとの距離は大きめなのだが、ボーカルやギターの音像はドライバー正面の適切な高さに定位し、しかもイメージの輪郭が引き締まっていて、にじみや緩みが感じられない。
音像のフォーカスの良さと正確な定位はインストゥルメンタル作品でも同様で、サックスやトランペットなどホーン楽器はもちろんのこと、ピアノやベースも楽器イメージが広がりすぎず、一音一音の重心が明確に定まっていると感じた。
エンジンの低周波ノイズやロードノイズが侵入する車内空間では、低音楽器のアタックが不明瞭になり、低音がこもってしまうことが少なくない。それを避けるためには再生システムの低音に十分なアタックのエネルギーが乗っていなければならないのだが、タイプMはもちろんそれを配慮した音響設計を行っていて、低音の遅れやこもりがほとんど気にならない。
低音の俊敏なアタックは、フュージョン系の曲ではベースとバスドラムがクリアなビートを刻み、ピアノ作品では左手の分散和音の動きが鮮明に浮かび上がるといった具合に、どんなジャンルの音楽でも安定したサウンドを生み出す原動力となる。
立ち上がりが速く、制動も効いた低音と紹介すると、重量感や深みが足りないのではと誤解されてしまうかもしれないが、実際の再生音はそれとは対極の安定したバランスを確保していた。試乗車にはアンダーシートタイプのコンパクトなサブウーファーが取り付けられていたこともあり、量感にはむしろ余裕を感じるほどで、比較的小さめの音量で鳴らしてもベースの輪郭が甘くなることはなかった。
ハイレゾ音源をUSBメモリーから再生すると、コンサートホールの余韻の広がりやライヴ演奏の臨場感など、クルマの音楽再生では再現が難しい空間情報や演奏の気配感を確実に聴き取ることができる。音場は耳の高さを超えて天井方向に広がり、車内空間の制約を一瞬忘れさせてくれた。タイプZとは異なりDSD再生には対応していないが、一般的なFLACまたはWAVのハイレゾ音源からは情報量の余裕や立体的な空間再現など、ハイレゾならではの長所を引き出すことができる。
スマホやデジタルオーディオプレーヤーとのBluetooth接続を車内で使う頻度は今後急速に高まるはずだが、そこで真価を発揮するのが新たにサポートしたLDACである。対応プレーヤーを用意して実際に再生音を聴いてみると、既存のBluetoothのイメージを覆すほど鮮度の高いサウンドを体験することができ、このクオリティならメインソースとして活用できるという明確な感触を得た。
普段聴いている音源をそのままクルマのオーディオでも共有し、クオリティにも妥協する必要がない。以前は想像できなかった環境がすでに現実になっていることをあらためて実感することができた。
彩速ナビの最新モデルを実際に操作して再生音を聴くと、ナビの現在の到達点を知ることができる。ハイレゾ対応はすでに欠かせぬ装備になったが、高速な操作レスポンスやドライブレコーダーとの連携など、最新ナビ機能とスムーズにリンクさせながら高音質に磨きをかけるのは決して簡単なことではない。ナビの開発に豊富な経験を積んできたケンウッドならではの完成度の高さにぜひ注目していただきたい。
(協力:株式会社JVCケンウッド)