「手軽に良い音で音楽を聴く」
CDからストリーミングまで”全部入り”、オンキヨー「CR-N775」&「D-112NFX」レビュー
続いて、NASを利用してのネットワーク再生を試してみた。アバンギャルドなヴァイオリン協奏曲のネマニャ・ラドゥロヴィチ「バッハ」(96kHz/24bit FLAC)では、壮大なコントラバスとソリストの艶やかなヴァイオリンの質感が上手に表現されており、録音現場の広さが意識できるような空間再現性もある。また、フロントの液晶表示部には、音源のアルバムアートが表示されて視認性も高い。こういったファイル再生の要所はしっかり押さえてある印象だ。
続いてはフロントのUSB入力を使用し、USBメモリー内に保存したダイアナ・クラール「ターン・アップ・ザ・クワイエット」(192kHz/24bit FLAC)を聞く。CD再生でも感じたボーカルのリアリティや、歌手とピアノの位置関係が厳密に表現されており、ずっと聞いていたくなるような高い音楽性を感じさせてくれた。
次にiPhone XとBluetooth接続を行い、先だって日本で正式にスタートした、Deezer HiFiから、テイラー・スウィフトの最新アルバム『レピュテーション』を再生する。情報量や音のリアリティこそCDやファイル再生に劣るものの、音の良いAACコーデックで接続されていることもあり、迫力ある打ち込みのバスドラムやクリアなシンセサイザーなどが上手く再現されており、高いグルーブ感で音楽を楽しむことができた。
最後は、Chromecast built-inを利用して、オンキヨーから発売されている話題のスマートスピーカー「G3(VC-GX30)」からGoogle Play Musicをキャスト再生する。「OK Google, マイルス・デイヴィス『カインド・オブ・ブルー』をかけて」と話しかけると、一呼吸おいて、同曲が再生された。モバイルデバイスにはない、声で操作する次世代のオペレーションによるオーディオ再生には、新しい時代の足音を感じる。この時点で本機能に対応したことは評価できるだろう。
通常、このクラスの製品に搭載されるアンプ部は、ある程度出来上がった技術や回路を利用する形で搭載するのが普通だ。CR-N775はエントリーモデルにもかかわらず、先鋭的な技術アプローチにチャレンジしており、製品にかけるONKYOの意気込みが強く感じられた。スピーカーのD-112NFXも、キャビネットの質感が高く、小型ながらスケールを持ち、サウンドステージの広がりや奥行きの表現も、価格を感じさせないレベルのものだった。
外見だけならこのようなディメンションを持つ製品はある。しかしCR-N775とD-112NFXの組み合わせによる音楽性の高いサウンドは、形だけのオーディオコンポーネントとは一線を画す存在である。そこにあるのは音ではなく音楽だ。
もちろんこれ以上コストをかければ、さらに音楽性を追求することは可能だろう。しかし文頭で記述した「手軽に良い音で音楽を聞く」という目的に、この2機種は応えてくれる。最新のライフスタイルとそこに加わる音楽ライフとのバランスで考えると、とてもコストパフォーマンスが高いコンポーネントだ。
(土方 久明)