大きく進化して登場した新Kシリーズ
生演奏に限りなく近い音。エソテリックのSACDプレーヤー「K-01Xs/K-03Xs」を聴く
K-03Xsの音に触れる
■スピーカーの鳴り方が異なり、音楽を訴える力が大きくアップ
エソテリックの試聴室にて、アンプは「Grandioso F1」、タンノイの「キングダムロイヤル・カーボンブラック」を鳴らすシステムでテストした。まず先代であるK-03Xを聴いた後にK-03Xsを聴き出したが、音が出だして数秒で唸った。音楽が“実”に近いのだ。音像は大きく、音楽を訴える力が大きくアップしている。
そもそもスピーカーの鳴り方がまず違う。プリアンプのことをパワーアンプドライバーと言うことがあるが、デジタルプレーヤーがスピーカーの鳴りっぷりを良くしているのだから尋常じゃない。それはもちろん乱暴さではなく、エモーショナルな抑揚とか、グルーヴ感に直結している鳴り方だ。
確かに情報量という意味での精度、たとえばSACDでのアバド/ベルリン・フィルの『ガラ・コンサート』での手前のソプラノと舞台後方の合唱隊の描き分けも素晴らしいが、音の振る舞い方自体が実に奔放になっている。大学生までは優秀だがまだ線が細かった男性が、社会人になってたくましく、人間味が増したような感じと言ったらいいだろうか。
K-01Xsの音に触れる
■“音の実体感”が一線を超え、生演奏に接しているようなサウンド
K-01Xsはさらに凄かった。まず先代であるK-01Xから聴き出して、改めてその背景の静けさや膨大な情報量を持ちつつもこれ見よがしでなく、しなやかにスケール感大きく聴かせてくれる出来の良さに感心させられたが、K-01Xsに換えるとまたもや世界が違った。
音の実体感がある一線を超えている。精神状態として生演奏を聴いているような錯覚に陥ると言ったらいいのだろうか。デジタル信号をアナログに変換する精度が上がっただけでなく、絵で言えばデッサンがさらに正確で精緻になりつつ、そこに重ねられていく油絵の具の勢いや、ヴァイタリティが大幅に良くなっている。DACデバイスが変更されたことも大きいが、それ以上にアナログ部が大幅に良くなった印象なのだ。
竹内まりやの「シングル・アゲイン」のストーリーがこれほどドラマティックで、積極的に聴こうとしなくてもグイグイ入ってくるとは驚きだ。もちろん情報量としてもさらに向上している。たとえば先述のカルメンでの合唱隊、人数までも数えられるような感じも相当なものだが、そこに感心するというよりも生演奏に接している感覚に気を取られてしまう。積極的に音楽や演奏自体を聴かせる能力の次元が上がっているのだ。芸風が変わったという言い方をしてもいいかもしれない。
ヨーロッパやアメリカのメーカーの個性の強い表現、音楽かく鳴るべしみたいな主張が新しいXsにはある。そういった意味ではエソテリックがこれからどこに向かおうとしているのか、その方向さえ指し示すようなデジタルプレーヤーだ。そして従来のユーザーに向けてK-01X/03XからXs仕様へのバージョンアップのサービスが用意されている(01X→01Xsが35万円、03X→03Xsが28万円/いずれも税抜)。筆者はK-03Xのオーナーなので実にありがたいと感じた。最新のあの音の世界を手に入れられるのだから。
(鈴木裕)
本記事はオーディオアクセサリー168号からの転載です。本誌の詳細および購入はこちらから。