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DAVE直系のコンパクトモデル

CHORD「Qutest」レビュー。コンパクトなUSB-DACが奏でる驚くべきサウンド

公開日 2018/04/13 10:30 土方久明
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次に聴いたのは女性JAZZボーカルで、メロディ・ガルドー『ライヴ・イン・ヨーロッパ』。情報量、fレンジ、ダイナミックレンジ・・・いわゆるオーディオ的な再現力も素晴らしい。本作を聴いて特に感心したのは、弱音でも音の明瞭度が高く、聴感上のS/Nが非常に優れていること。ステージの気配から客席のざわめきまで、ライブ会場の空気が手に取るようにわかる。また、ボーカルからは情緒的な色気も引き出す。試聴中に書いたメモを読み返すと、「いま聴いている音はさらに価格の高いDACが持つ領域の音」とあった。

Qutestはロールオフ特性を変更したり音色を変えられる4種類のデジタルフィルターを搭載しており、本体のボタン操作で切り替え可能だ。例えば「ウォーム」を選択すると、LEDの色がオレンジに代わり、聴感上さらにスムーズな音調になる。本機1台で手軽に、自分好みの音調に追い込むことができることも魅力のひとつだ。

次に自宅1階の大型システムと組み合わせてその音を聴いた

こちらではMac miniと接続して音楽を再生した

いつもであれば、ここで試聴は終わる。しかし、その音に筆者は「Qutestを大型システムで鳴らしてみたい」という衝動にかられた。自宅の1Fにあるもうひとつの再生環境(EXAKT化によりマルチ駆動されるLINNのKomriを中心としたシステム)にQutestを組み込んでみることにした。トランスポートにはMac Miniを用いて、再生ソフト「Roon」から今年のグラミーショーで「最優秀オーケストラ・パフォーマンス賞」を受賞した、マンフレート・ホーネック『ショスタコーヴィチ:交響曲第5番『革命』を聴く。

Qutestの音は、ハイエンドのシステムに組み込んでもまったく臆することがない。類い稀なる高い音楽性はここでも実感でき、フォルテシモは聴き手に猛烈に訴えかけてくるし、ピアニシモの旋律は実に情緒的な表現を聴かせててくれる。

“小さなDAVE”とも言うべき音。利用シーンの幅広さにも注目

Qutestには、CHORDのDACを一手に担うロバート・ワッツ氏による、FPGAに独自アルゴリズムを組み込んだWTAフィルター、パルスアレイDACによる高精度なD/A変換部が組み込まれている。さらには、CEOのジョン・フランクス氏が得意とするスイッチング電源やアナログオーディオ回路設計といった多くのノウハウも詰め込まれている。素晴らしいのは、この先鋭的な技術アプローチをこの価格帯の製品に、まさに惜しみなく投入したことだ。

Qutestの筐体内部

試聴した現時点において、同価格帯のDACの中でQutestの音質はナンバーワンだ。しかも情報量一辺倒というわけでなく、アーティストが聴き手に伝えたいであろう音を的確に表現できる音楽性もある。まるで“小さなDAVE”のようだ。

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