小型ドライバー採用で音もシャープ
パイオニアの完全ワイヤレスイヤホン「SE-C8TW」レビュー。装着感◎、キレのある音質
例えばアニメ『宝石の国』オープニング曲である、YURiKA「鏡面の波」。ギターとピアノの空間エフェクトと配置が、それこそ暗闇に宝石が散りばめられたように映えるサウンドだ。SE-C8TWはそのサウンドを、音の艶よりもエッジを引き立たせることで、よりキラッとしたコントラストの強い見せ方で届けてくれる。ポップス+ポストロック的なこの曲のサウンドに含まれる要素のうち、エレクトロな要素を特に際立たせてくれる印象となっている。
同じくギターとエレクトロの要素が強い、MONDO GROSSO「惑星タントラ」もやはり好感触。こちらだとクラブ系の要素もあるのでベースが重めで濃密だと理想的。SE-C8TWの低音は重さこそ控えめだが芯も輪郭もクリアなので、存在感は十分確保できている。
バンドサウンドでは相対性理論「夏至」が好印象だった。こちらもギターのエフェクトが特徴的な曲で、音を反響させるエコーや少しだけ音程を揺らした音が重なっているように聞こえるコーラスなどの空間処理が、このイヤホンで聴くとうまい具合に適度に強調される。エフェクティブなサウンドのそのエフェクト感を存分に楽しめる。
欲を言えば、アコースティックな音源のしなやかさや艶、ウッドベースの深い響きの再現できる低域が欲しいところだが、それを求めだすとこの製品よりも上の価格帯になってしまう。この価格帯で、十分にオールラウンダーなバランスを確保した上で、エッジ感とクリアさという個性もほどよく備える。このモデルのチューニングの狙いどころとその完成度は納得できるし、満足できるものだ。
ノイズキャンセリングや防滴など特殊な機能は搭載していないが、完全ワイヤレスイヤホンとしてのベーシックな機能性、そして音質面においては、ブランド初の製品にして十分な完成度。装着感の面での工夫とその副産物としての独特なルックスなど、本モデルならではの魅了もある。完全ワイヤレスデビューを考えているイヤホンファンにとっては、悩むべき選択肢がまたひとつ増えてくれたようだ。
(高橋 敦)