【特別企画】より安価なTE-D01cとも聴き比べ
“ジャパンチューン”で8,250円! AVIOT「TE-D01a」はガチでハイコスパな完全ワイヤレスイヤホンだった
宇多田ヒカルの「あなた」から聴くと、冒頭から引き込まれた。声はスムーズに抑揚までたっぷりに描写し、ピアノはその響きまで伝わる。ビートの刻みはゴツりとした質感と音圧感を持たせる一方で、ボリューム感としては控え目。それと引き換えに、重低音のなかの質感を見通す解像力を備えているサウンドだ。
「あなた」の楽曲はバンド、オーケストラ、ハンドクラップと音数が多いが、すべての楽器、そしてボーカルに対してもフラット。ボーカルを引き立てることなく、情報量勝負で音楽の一部として調和して鳴らす表現力は、なかなか他に例がないほどだ。
RADWIMPSの「前前前世 (movie ver.)」も、ナチュラルさを志向したチューニング。ただし、これは “耳につく尖りがない” という意味で、情報量でエレキギターの音の動きを、奥行方向も含めたサウンドフィールドに展開し、精密に鳴らし分けていく。
男性ボーカルの聴こえ方も、楽曲のセンターに明確にセパレートされて定位する。低価格なイヤホンでは雑然と鳴らしがちな楽曲も、TE-D01aは真正面からその情報量で持って鳴らすことで、ナチュラルな情報として音源の全体像を描写してくれる。
映画『ラ・ラ・ランド』のサントラよりジャズ音源「アナザー・デイ・オブ・サン」を聴くと、やはり冒頭のピアノの質感はクリア。そしてアタックの沈み込みは空気の振動も伝わるし、楽器の音を正しくセパレートした上での位置感の表現力が素晴らしい。ウッドベースの音の沈み込みは、その質感も見通せるほど。楽器の音に不自然さがないし、楽曲を集中して聴き込むと、ほかの楽器に隠れていた楽器やコーラスまで見つけ出せる楽しみもある。帯域による極端なピーク感もないので、ボリュームを相当上げてもストレスがない。
TE-D01aで実際に音源を聴き込んだ感想は、「この価格でありながら、フラットな高音質で勝負」と言うほかない。特別にウケ狙いをしたドンシャリもせず、音の解像感と立体感の正面勝負のフラットなサウンドで、完成度が高い。価格に対する音質のコスパは非常に高い。
では、同じくフラット志向と評したTE-D01cの音質とどこが違うのか? と問われると、TE-D01aはまさしく癖のない全フラットなのに対して、TE-D01cは低音とボーカルにあたる中高域の立ち上がりにわずかに味付けがある。だたし、市場に出回ってイヤホン全体のなかで両機をプロットすると、両モデルともフラットと語られてしまう程度の差分しかない。これが、AVIOTの掲げる日本人好みの「Japan Tuned」という事なのだろう。
なお、音切れについても「TE-D01a」を装着して新宿の雑踏の中を歩くと、基本は安定しているが、開けた交差点など極端に厳しいシチュエーションではさすがに片側の音切れが発生した。しかし装着して電車に乗り込んだ際には音切れはなく、接続安定性は一定以上の水準は確保しているようだ。また、Netflixで国内ドラマを視聴して遅延もチェックしてみたが、映像に対しての音声の遅延はこちらもほぼ気にならい水準だった。
完全ワイヤレスイヤホンで8,250円(税抜)と、日本メーカー製のパッケージとして最安値クラスで登場したTE-D01a。ネット専売で6,980円(税込)のTE-D01cも凄かったが、TE-D01aは価格差を差し引いても、完成度の高さから極めてコスパが良いモデルと言える。
いずれも「Japan Tuned」のサウンドは文句ナシの水準で、外見のデザインや装着性で選んでも良いレベル。同じAVIOTブランドから2機種を推すのはためらう部分もあるのだが、2018年秋のコスパ志向のアナザーチョイスとしてTE-D01aも外せない存在だ。
(折原一也)