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<連載>オーディオワンショット

文句なしの音楽的バランスを備えたハイエンドスピーカー。ソナス・ファベール「AIDA II」を聴く

公開日 2018/10/25 07:00 藤岡 誠
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ちょっと驚くのは前作と同様、背面上部にある “サウンド・シェイパー” と呼ぶ2ウェイ・ユニットの装備である。これはSonus faber社の特許。簡単にいえばプログラムソースに含まれる直接音と反射音の聴こえを制御することを目的としている。言い方を変えれば、聴く部屋の音響特性などから独立して、使用者が好みの音響空間を獲得しようという機能だ。

背面部に用意されたサウンド・シェイパーの調整ノブ

そのユニット構成は、Φ2.9cmシルクドーム・トゥイーター+8cm×2のミッドレンジ(ウーファー)の2ウェイ。音圧レベルなど関わりのある調整は、背面の独立した3個の専用ノブで調整可能である。

キャビネットは、一般的な四角い形態とは根本的に異なり、専用プレス機の使用もあるが職人の手による曲面仕上げ “ライフ・アップ” が造形されている。防振処理、定在波制御などについては “圧縮積層防振構造” を採用。天板は傾斜されアルミニウム削り出し材とガラス板で構成される。

新旧AIDAの背面部の比較

逆に底部は、30mmアルミニウム・ベースプレートと15mmサブ・ベースプレートを配し、様々な不要振動を排除できるように考慮されている。また、本機の内部構造は前作とはかなり異なっている。その “新・旧” の詳細と比較は、輸入元のHPを参考にすればいい。

いずれにせよ、本機は他では見られないデザインと内外の構造を持っている。いささか高価であるが、それだけの複雑で有効な手続きを間違いなく踏んでいるシステムである。

入力は、背面バッフルの最下部にあって6端子方式。それぞれに付属しているジャンパー・プレートを外せば、様々な系統のバイワイヤリング接続、サブ・ウーファー/ウーファー/ミッドレンジ /トゥイーターをそれぞれ独立したパワーアンプで駆動するマルチアンプ駆動など、多彩な駆動方式にチャレンジすることができる。

さらに前述の “サウンド・シェイパー” 機能もあるわけで、これらを総合して評価すれば、本機は例外的に多機能型スピーカーシステムということができるのである。しかも、決して “多機能” に踊らず徹底して高度な音質・音調にチャレンジしているのがいい。

世界最高水準の聴こえと多機能が魅力の逸品

試聴は輸入元の(株)ノアの試聴室で行なった。使用機材はブルメスター製。パワーアンプ「911Mk3」+プリアンプ「077+PSU」+CDプレーヤー「061」を使用。

まずは文句なしの音楽的バランス。特に中音域は自然で子音や息継ぎに違和感がない。例えば、ピアノフォルテとモダン(現代)ピアノの音色の違いなどは見事な再現だ。様々な楽器のリアルな再現性やクラシック音楽を高度に楽しもうという方々にとっては大切なポイントである。

低域方向は低重心だが重苦しさは感じない。高域方向はとてもスムーズで、ヴァイオリンは硬質感がなく倍音成分も清々しい。そして弦楽合奏での弦楽器間の音色的な繋がりが良好だ。さらに室内楽や大編成オーケストラなどの音響空間の自然さと音像定位のシャープさには感激する。

一方、ジャズ系プログラムも同様で、妙な付帯音の付加がないからまさにリアル&ストレートな聴こえである。特に、優れた録音状態の一枚からは青春時代、あるいは今日に理想とする音質・音調、加えていえば空間再現性と音像定位を楽しめる。

“サウンド・シェイパー” はレベルをアップしても妙なエナジーバランス、偏った聴こえにはならない。音圧の単なるアップダウンだけの制御ではないからだろう。無論、部屋の音響条件にもよるが、最終的には、自分自身の好みで調整すればいい。世界最高水準の聴こえと多機能が魅力の逸品である。

(藤岡 誠)

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