AKGサウンド+使い勝手を高める機能
デザイン/機能/サウンドすべてがハイレベル! AKG「Y500 WIRELESS」は“Yシリーズ”の真髄だ
宇多田ヒカルの「あなた」を聴くと、キリっと立ったクリアネス志向の女性ボーカルの存在感が印象的。中域は個別に音を立てるような傾向はないが、一定の響きの質感を残している。ゴツリとした重厚感を持って沈み込ませつつ、バランスの取れた重低音を鳴らす。
オンイヤー型のヘッドホンであるにも関わらず、ハンドクラップが空間に拡散していく様まで見通せる。オーケストラがセンターからスケール感を伴い広がっていくようで、密閉型ヘッドホンながら “ヌケ” 感のあるサウンドとでも呼びたくなる。
洋楽からブルーノ・マーズの「24K Magic」を聴くと、Y500 WIRELESSの低音のバランス感が絶妙にハマる。男性ボーカルを楽曲の中でバランス良く響かせつつ、音場もスムーズに広がり、音の開放感をもたらしている。
低音はディープに沈み込み、かつエネルギッシュ。大きめの音量ではやや強めにすら感じられるが、音量を絞るとこの低音が気持ち良いビート感をもたらすようになる。屋外での音楽リスニングでもリズムに “乗れる” バランスだ。
映画『ラ・ラ・ランド』のサウンドトラックより「アナザー・デイ・オブ・サン」を聴くと、クリアに立ち上がるピアノのイントロに、重みを乗せた楽器のアタックが加わる。情報量が豊富で、音楽に集中すると個別に音を聴き分けられるだろう。ウッドベースの音は、やはり大きめの音量では強めに、小音量ではより整って聴こえるようだ。
AKGのYシリーズは2014年に発売された「Y50」の頃から聴き続けているが、Y500 WIRELESSのサウンドはしっかりとその系譜に連なっている。
つまり、華やかに伸びる中高域のクリアネスと、リズム感を巧みに引き出すアタックの表現力を備えている。さらにY500 WIRELESSでは、音の密度感と自然な拡散が特徴として加えられた。開放型のヘッドホンを好む方にも適したサウンドと言えよう。
Y500 WIRELESSは、デザイン、機能性、そしてサウンドのすべてが高次元でまとまったヘッドホンと呼ぶほかない。AKG「Yシリーズ」の真髄として、注目すべきモデルだ。
(折原 一也)