HOME > レビュー > 高密度かつ華麗な音はこび。FOCAL「STELLIA」はハイエンド密閉型ヘッドホンの決定版だ!

付属品にまで統一された美しい世界観も特長

高密度かつ華麗な音はこび。FOCAL「STELLIA」はハイエンド密閉型ヘッドホンの決定版だ!

公開日 2019/06/28 06:00 岩井 喬
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続いてラックスマンのD/Aコンバーター「DA-06」+最上位ヘッドホンアンプ「P-750u」の組み合わせにおける据え置き環境・シングルエンド接続でのサウンドもチェック。低インピーダンスかつ高能率な設計であるため、DAP単体でも難なく駆動できるが、据え置き環境での腰の低い安定感と制動性の高さからくる音離れの良さ、余韻の階調性の細やかさといった点で優位性が垣間見える。

装着した様子。しっとりとしたレザーの質感や適度な重みが快適かつ安定した装着感を叶える

ローエンドは適度な厚みを持たせつつも引き締まっていて、リリースは濁らない。高域にかけては倍音の華やかさ、艶感を含め、伸びやかかつ自然にまとめている。管弦楽器の旋律やピアノのアタックはスッキリとして鮮明なアタックを見せるが、滑らかで耳なじみ良い傾向だ。

オーケストラのハーモニーは緻密で、密度も高い。定位も明確で、質感まで丁寧にトレースする。穏やかさも併せ持つ甘美なサウンドである。ボーカルは肉付き感をナチュラルにまとめ、口元は実に瑞々しい。余韻の響きは温かみがあるものの、見通しは深く音場の透明感も十分なレベルにある。

さらに付属の4ピンXLRケーブルに付け替えたバランス駆動においては、ローエンドの引き締めが高まり、音像の輪郭がより鮮明に描かれる。分離の良さも一段と向上。オーケストラの立ち上がりのスピード感や余韻の階調性の細やかさも増して、よりリアルで奥行きある空間を味わえるようになった。

ケーブルボックス、取扱説明書のカバーなどもレザー仕上げ。付属品一つ一つにもSTELLIAの世界観が反映される

ボーカルやリズム隊の重心も低く、より大人びた安定感と落ち着きを感じさせ、余韻のコントロールも巧みにまとめ上げる。ピュアベリリウムならではの癖のなさ、素直で伸びやかなレンジ感とレスポンスの良さが生きており、上質かつ饒舌なサウンドを堪能することができた。



STELLIAはなかなか決定版が表れない密閉型の上級機が目指すべき理想ともいえる表現性と品性の良さを兼ね備えた、美的センスの高い世界観を提示してくれている。オープン型モデルでは表現できない音像の持つパワフルさ、肉声の温かみは音楽をより抒情的に描き出す。聴き慣れた楽曲であっても、熱量の高さときめ細やかな情報量の多さに改めて驚くであろう。

高密度でありながらも華麗な音運びによってストレスなくスムーズに聴かせてくれる懐の深さ、そして表情豊かな音楽性に迫る駆動能力の高さも両立した稀なヘッドホンであることも付け加えておきたい。

(岩井 喬)

<試聴音源>
・飛騨高山ヴィルトーゾオーケストラ コンサート2013『プロコフィエフ:古典交響曲』〜第一楽章(96kHz/24bit)
・『Pure2-Ultimate Cool Japan Jazz-』〜届かない恋(2.8MHz・DSD)
・デイヴ・メニケッティ『メニケッティ』〜メッシン・ウィズ・ミスター・ビッグ(CDリッピング:44.1kHz/16bit・WAV)
・Suara「キミガタメ」11.2MHzレコーディング音源(DA-06試聴では5.6MHzに変換)

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