NR1608との違いも確認
マランツ「NR1200」は“音のレベルが違う”新コンセプトHiFiアンプ。その実力を徹底チェック!
一聴して、NR1608とは出てくる音のレベルが違う。決してNR1608で鳴らすMASSの音に不満があったわけではないが、NR1200との組み合わせでは、単に高音が伸びるとか低音が出るとかを越えた(もちろんそれらも音質を語るうえで大切な要素ではあるが)、音楽が空間の中に、忽然と現れる感覚が味わえる。この感覚は、スピーカーをアンプが精確に、歪みなく、そして力強く駆動していなければ生じ得ない。
最近筆者がリファレンス音源として使っている『天気の子』のサウンドトラック(48kHz/24bit)から「グランドエスケープ」を聴くと、後半のコーラスでMASSではついぞ聴いたことのない圧巻の音の広がりが、見事な透明感を伴って再現された。MASSの美点である明朗快活なボーカルはさらに際立ち、艶やかな質感も伴う。
森口博子『GUNDAM SONG COVERS』(96kHz/24bit)から「哀 戦士 / with 押尾コータロー」を聴くと、音の立ち方、輪郭の切れ味が素晴らしく、冒頭のギターからしてリアリティがまるで違う。森口博子のボーカルの透明感や広がりも申し分ない。NR1200はMASSを見事に駆動し、ギター一本にボーカルというシンプルな構成のこの曲も、デスクトップ環境の狭さを感じさせない豊かな広がりを聴かせてくれた。
■話題の「Amazon Music HD」や映像コンテンツでも高い表現力を発揮
HEOSを搭載するD&Mのネットワーク対応機器は、最近日本でもスタートしたロスレス/ハイレゾ音楽ストリーミングサービス「Amazon Music HD」にも対応している。そこで、こちらもさっそくHEOSアプリから操作して聴いてみた。
さっそくハイレゾ版のストリーミング配信が始まったビートルズの『アビー・ロード』から「カム・トゥゲザー」を聴くと、イントロの楽器の音の俊敏な立ち上がり、音がスピーカーにまとわりつかずスムーズに空間に満ちる様など、たしかにハイレゾ音源に求められる音質的美点が感じられた。
既にTIDALやQobuzといったサービスで実現されていたロスレス/ハイレゾ音楽ストリーミングサービスではあるが、日本でも、正式に楽しめるようになったというのは実に感慨深い。HEOSアプリを使ったAmazon Musicの再生は、操作性の面でまだまだ発展途上と言わざるを得ないが、こちらは今後のアップデートに期待したい。
2本のスピーカーを使いつつ、スピーカーの存在が消えて音楽だけが在る。2chステレオならではの「魔法」を、デスクトップ環境で軽々と実現したNR1200の実力は、紛れもなく「Hi-Fiアンプ」の名にふさわしい。
いくつか映像コンテンツも聴いてみたが、中低域に厚みと押し出しの良さを感じさせるNR1608に対し、NR1200はより精緻な聴かせ方で、細かい効果音やステレオ感の表現に長ける。映像音響の再現においても、やはりNR1200はHiFiだ。NR1200によって、普段何気なくテレビで再生しているコンテンツから数多の驚異が引き出されるに違いない。
NR1200は、「現代の様々なコンテンツを分け隔てなくいい音で聴きたい」という希望に対し、オーディオビジュアルの側からではなく、ピュアオーディオの側から歩み寄ったアンプである。そしてそんな製品が、歴史あるオーディオブランドであるマランツから登場した事実に、筆者は大きな意義を感じている。