NR1710ユーザーの生形三郎氏が実力チェック
前モデル購入の生形氏、思わず唸る。マランツ「NR1711」が遂げた予想以上の進化
そもそもNRシリーズの魅力は、AVアンプでありながらも迫力傾向の音作りに傾倒しない、Hi-Fi志向の美しい音作りにあると筆者は感じていたが、それがさらに推し進められた印象なのである。これは、今回マランツが発表した新たなサウンドコンセプト、「Modern Musical Luxury」にも通じるポイントなのではないだろうか。
レッド・ホット・チリ・ペッパーズ「By The Way」を聴いてみると、まずはドラムスのクラッシュシンバルやオープン・ハイハット、そしてライドシンバルなどの打音から、ジャリジャリとした雑味が抑えられ、シンバルらしい輝かしさはそのままに、より繊細でナチュラルなサウンドとなっていることに気づかされる。併せて、ヴォーカルもエッジも鋭角的にならずに、よりディテールが詳細だ。
また先述のように、音量を上げても、エレクトリックギターの歪み系の音色も、明瞭ながら決して粗野にならない。低域方向は、重心がもう一歩下がり、キックドラムはより太く、タムタムのフィルインは、より粘り強い連打を聴かせる。エレクトリック・ベースもゴリゴリとした厚みが出て来た。そしてそれらの低域が、しっかりとグリップされていることも特筆ものだ。16分音符の裏拍を突くバスドラムのキックが、より食いつきよく再現され、バンド全体が生み出すグルーヴ感が、より楽しく、より躍動的に迫ってくるのである。
■「音楽を美しく、そして楽しく明朗に再生してくれる」
ジャズでは、オスカー・ピーターソン・トリオ「We Get Requests」を聴いてみる。NR1711に変えると、ピアノのタッチがより詳細だ。スタッカートの立ち上がりや、その余韻の出方、そして、レガートな部分でのフレーズの繋がりの滑らかさなど、演奏の質感がより明瞭に伝わってくる。
ウッドベースは恰幅良く再現され、やはり、NR1710よりも沈み込みが深くなっている。ドラムスはブラシ・スティックが叩き出す跳ねたスウィング感が、より心地よく伝わってきた。曲中でボリュームが増していくトラックも、音圧が増していっても歪み感が無く快い。
クラシックは、鈴木優人&バッハ・コレギウムジャパンによる「J.S. バッハ: チェンバロと弦楽のための協奏曲集 Vol.1」を聴いてみた。倍音がとりわけ豊潤に含まれるチェンバロの音色は、それが飽和したり歪み感に繋がることなく、より艶々とした輝きを持って生き生きと再現される。また、その音が空間に広く抜けていく音の余韻も、しっかりと拾い上げられる。
上下方向の音の拡がりも充分で、音に立体感がある。弦楽セクションも、弦楽器ならではの音艶に加えて、ボウイング方向の違いによる音色の違いもより詳細に描き出される。
総じて、やはりNR1710同様に、音楽を美しく、そして楽しく明朗に再生してくれることが、何よりも魅力的に感じる音作りなのである。
加えて、HDMI入力による映画作品の再生でも、それらのアドバンテージが発揮され、迫力がありながらも、よりナチュラルでリアルな音色によって、セリフや効果音なども臨場感豊かに楽しむことが出来た。
改めて実感したのは、HEOSアプリによる操作性の良さだ。電源ON/OFFからボリューム、そしてソース選択から細かい設定までも円滑に操れるこの操作性は、非常に快適である。日常的にスマホやタブレットなどのスマートデバイスを触る時間が多い昨今、そこにAV機器の操作が完全に組み込まれるこのアドバンテージは、やはり非常に大きいと感じざるを得ない。
以上のように、NR1710からNR1711へのバージョンアップは、予想以上の大きな変化を感じられた。NR1711はさらに魅力的なAVアンプへと進化し、とりわけ音質に関しては、NR1710ユーザーの自分も思わず唸ってしまうレベルであった。
薄型タイプの省スペースで、サラウンド再生を楽しみつつ、なおかつ音楽再生を美しい音で楽しみたい方、そしてゲームも高いパフォーマンスで楽しみたい方にとって、非常に魅力的な選択肢であるとレポートしたい。