トランジスタアンプユーザーにもオススメ
トライオードの新たな300B搭載アンプ「TRX-P300S」を聴く。改めて真空管の魅力に感嘆
■開放的で音色が美しく、音像の定位にも優れる
試聴はTRX‐P300Sを用い、アキュフェーズのプリアンプ「C‐2850」と組み合わせ、B&W「803D3」を駆動させた。CDプレーヤーにはアキュフェーズの「DP‐750」、アナログプレーヤーにはフェーズメーションのカートリッジ「PP‐2000」を装着したラックスマン「PD‐171A」を用いている。
気になる本機のサウンドは、開放的かつ適度な力感と美しい音色が素晴らしいもの。上原ひろみ『Spectrum』は、目を見張るほど中高域の美しい音で、天真爛漫な上原ひろみワールドが炸裂する。低域の重心も低く、鍵盤タッチがリアルに伝わってくるのも良い。
続いてアンドリス・ネルソンス『ショスタコーヴィチ:交響曲 第6番&第7番』では、一聴して弦楽器の色艶の良さがあり、音像はしっかりと前へ音が出て、聴感上のS/Nにも優れている。
アナログレコードも最高だ。ハードバップジャズからジャッキー・マクリーン『イッツ・タイム』では、真空管アンプのアドバンテージをまざまざと感じる、色艶良くグイグイと前に出てくる音に酔いしれた。300Bのシングル構成ではきれいな音は出るが力強さが物足りないという意見もあるが、本モデルはマッシブである。
ここで、同社から発売されたディップフォーミング無酸素銅(DF‐OFC)採用の電源ケーブル「TR‐PS2」を純正ケーブルと入れ換え、改めて同曲を再生してみることに。すると、素晴らしくエネルギーのある音に変貌し、中低域の実態感がグッと上がってくる。
TRX‐P300の音は、普段トランジスタアンプを使う筆者も「改めて真空管アンプを使ってみたい!」と思うほど魅惑的で強いものだった。
なお最近インターネット上には、実際に真空管アンプを使用していない方から発信されたと思われる「壊れやすい」「音が柔らかい」「電球のようにライフが短い」と言う都市伝説的な情報が散見されるのが気になっている。このようなことは実績のあるメーカーには当てはまらないであろう。山崎氏(さきは正しくはたつさき)は常日頃から、「音楽を1日でも欠かさず聴きたいという気持ちに最大限応えていきたい」と対応されており、購入後のアフターサービスに力を入れていることも特記しておきたい。
■開発者から
もっと音楽を魅力的に聴きたい、女性ヴォーカルの吐息を浴びたい。こんな皆様にお薦めしたいのが、トライオードの “300Bシリーズ” のアンプです。今回デビューしたTRX-P300Sは、300Bシリーズのアンプ群の15世代目にあたる製品ですが、ドライブ段の増強とハムバランサーの自動化で更に魅力のある製品に仕上げました。
当社の自負は、同じ真空管を使用した製品でも進化し続けることにあります。このTRX-P300Sはパワーアンプですが、ボリュームつきですので入力1系統のプリメインアンプ単体としても使用可能です。初めての300Bシリーズアンプのお薦めとなると、TRX-P300Sか現在の売れ筋のTRV-A300XRになりますが、この楽しい選択は当社の取り扱い店でお聴き比べいただき、アフターサービスのことも考え試聴した販売店でのご購入をお薦めします。皆様のステイホームでの音楽ライフがさらに豊かになることを願って……。
<Specification>
●回路型式:A級シングル●使用真空管:300B×2、12AT7×2、12AU7×1●バイアス方式:固定バイアス●定格出力:8W+8W(8Ω)●周波数特性:19Hz-50kHz(±3dB)●S/N:86dB●入力端子:LINE1系統●入力感度/インピーダンス:LINE 300mV/100kΩ●入力ゲイン切り換え:0、-3dB、-6dB、-12dB●NFB(ネガティブフィードバック):スイッチによる切り換えでON/OFF対応●スピーカー出力端子:1系統(4-8Ω)●消費電力:91W●外径寸法:340W×210H×320Dmm●質量:17.5kg●付属品:真空管ボンネット、電源ケーブル●備考:別売サイドウッド(¥5,000/税抜)●取り扱い:(株)トライオード
本記事は季刊analog vol.69 AUTUMNからの転載です。本誌の詳細および購入はこちらから