君なら何を勧める?
いま、秋山澪が着けているヘッドホンは? ガチで『澪ホン2021』を(勝手に)考えた
■小野が考えた澪ホン2021
小野 澪ちゃんの律儀な性格を考えると・・・。『けいおん!』って、Astell&KernからコラボDAPが発売されていますよね。
成藤 2016年頃の製品ですね。
小野 あの時代にAstell&Kernから発売されていたヘッドホンといえば、beyerdynamicとのコラボモデルである「AK T1p」です。
押野 しかし、AK T1pの価格は約15万円。少々高額なのでは?
小野 仰る通りです。しかし、『提供』だとしたらどうでしょう?
工藤 提供・・・まさか!?
小野 そう、私が考えたのは「コラボの際、メーカーからサンプルの提供を受けているのではないか」ということです!
一同 !!
成藤 新しい澪ホンはすでに生まれていた……?
工藤 Astell&Kernのコラボモデルを、放課後ティータイムの実在性とリンクさせたわけですね?
小野 そういうことです。「ちょっと使ってみてくださいよ」と。そして、そこは律儀な澪ちゃんですから。いただいた以上はしっかり活用するというわけです。
成藤 正直、納得しかないですね……。
工藤 AKとのコラボDAP自体は頭にありましたが、そこから『提供』という発想には辿り着けませんでした。その接続の仕方はとても美しいですね。
小野 AK T1pは2015年発売の機種なので少し古い製品ではありますが、K701からの新調と考えると悪くないところではないでしょうか。
現実で発売されたコラボモデルとリンクするシチュエーションから製品を導き出した小野。高額なヘッドホンを購入するという理由付けに対して、一番現実的な可能性なのかもしれない。
■だいせんせいが考えた澪ホン2011
工藤 それでは、最後に僕が。僕は元専門店員というキャリアを生かし、「K701を使っていた女性に今ヘッドホンの買い替えをオススメするなら?」というアドバイザー視点でお届けしたいと思います。
小野 ここまで色んなアプローチで製品が出てきましたが、これを上回ることができるのか・・・。
工藤 まずは製品を紹介するに先あたって、「どんな流れで澪ちゃんにヘッドホンをオススメすることになったのか?」というところから説明していきますね。
押野 え?
工藤 澪ちゃんは大学進学後も軽音楽部で活動しているので、大学卒業後も音楽活動を続けているかはともかくとして、楽器には触れていくと思うんです。プロのアーティストにならずとも、趣味で演奏を続けているような。それこそ、SNS時代の昨今ですから、目立つのが苦手な性格ではあるものの、TwitterやYouTubeなどに顔を隠した演奏動画などを公開しているかもしれません。
押野 (そこのディテール要る?)
工藤 ネット上でも結構ファンがついた澪ちゃんは、ある日こんなツイートをします。「高校の頃から使ってたヘッドホンが壊れちゃった・・・。皆さん、ヘッドホンのオススメありますか?」。こうなると、だいたい誰かしらが僕に引用でリプを飛ばしてきます。「だいせんせい! 出番ですよ!」と。
成藤 いよいよ第三者のフォロワーの言動まで妄想し始めてしまった。
工藤 そうなると、僕も反応せざるを得ません。「スミマセン、なんか変な感じで登場してしまいましてw 僕でよろしければ、ぜひヘッドホン選びのお手伝いをさせていただければと!」。そこから澪ちゃんとDMでやり取りをしていくうちに、やはり実際に試聴して決めたいということで、2人で販売店に行ってお会いすることになります。
押野 草を生やすな。
小野 夢小説?
工藤 ズラリと並ぶヘッドホンを前にして何を勧めるか・・・というところまでが前置きで、実際に考えていきたいと思います。僕が注目したのは、K701のスペックです。
小野 スペックですか。オーディオマニアでもないのに、そんなに細かい性能を澪ちゃんが気にするでしょうか?
工藤 もちろん、スペック表を見ながらうんうん唸るようなことは無いでしょう。しかし、知識がなくとも実際の使い勝手に影響してくる部分。それは『インピーダンス』と『質量』……つまり、『音量の取りやすさ※』と『装着のしやすさ』です!
※厳密には音圧感度など、インピーダンス以外の要素によっても変化します。
成藤 なるほど、確かにそれは重要ですね・・・。
工藤 K701は約235gと意外と軽量。近年の高級ヘッドホンだと、意外とオーバーしてしまいがちです。例えばT3-01は約321gですし、AK T1pは約360gもあります。とりわけ重量級というわけではないですが、長年K701を使ってきたことを考えると、違和感や疲れを感じてしまうかもしれません。
押野 確かに、自宅で長時間着けることを考えると、その辺りも重要になってきますね・・・。
工藤 かといって、ガチガチのアーティストやエンジニアというわけでもない(設定)ですから、完全に業務用のモニターヘッドホンというのも少々味気ない感じがします。そこで僕が提案したいのは、オーディオテクニカの「ATH-WP900」です!
一同 おおっ・・・?
工藤 約8万円という(2009年当時の)K701に近い価格設定に、約243gの軽量設計。インピーダンスも約38Ωと鳴らしやすく、何より弦楽器由来のフレイムメイプルのハウジングは非常に美しく、サンバーストのデザインも澪ちゃんのジャズベースに似ています。本人にも気に入ってもらえるのではないでしょうか。
小野 K701とはかなり志向の違うヘッドホンですが、コンシェルジュ的な選択としては面白いですね。
工藤 オーバーイヤータイプで装着感に優れていながらも、密閉型のポータブルヘッドホンなので、より多くのシーンで活用していただけます。これを機に、澪ちゃんと相互フォローになりたいですね。
存在しないSNSアカウントへ思いを馳せた、だいせんせい。既存の使用機種に縛られることなく、使用シーンを想定してまったく新しい選択肢を提示してみせた。
■終わりに
以上が、工藤寛顕とPHILE WEB編集部による『澪ホン2021』を勝手に決める会議の内容だ。メンバーが選出した新たなる『澪ホン』は以下の通り。
押野 AKG K701-Y3
成藤 TAGO STUDIO T3-01
小野 Astell&Kern AK T1p
工藤 Audio-Technica ATH-WP900
あくまで真剣に検討することを前提に話し合った結果、談義は大盛りあがりとなった。自分のための製品選びはもちろんのことだが、条件を設定した上で製品を考えてみるというのもなかなか面白いものだ。オーディオショップなどに足を運んだ際には、ぜひこうして一風変わった目線で製品を見てみたり、友人との話に花を咲かせてみてほしい。
ちなみに『けいおん!』の各楽曲は、ハイレゾアルバムやサブスクリプションサービスでの配信も行われている。当時とはまた違った再生環境で思い入れのある楽曲に触れてみると、新たな発見や感動が待っているかもしれない。かつての『澪ホン』をきっかけにオーディオにハマった人もそうでない人も、改めて『けいおん!』の名曲達に触れてみては?
それでは僕も「Utauyo!!MIRACLE」を聴いて涙を流す作業に戻ります。お相手はだいせんせいこと工藤寛顕でした。