【特別企画】尖った機能性と堅実さを併せ持つ
攻めたギミック、納得の完成度!Astell&Kernのモジュール式DAP「A&futura SE180」レビュー
■モジュール交換でサウンドが激変。高S/Nでスムースな音色か、硬質かつクリアな表現力か
それではSE180のサウンドの印象を紹介しよう。試聴では、バランスケーブルも付属するAstell&Kernのダイナミック型イヤホン「AK T9iE」との組み合わせを中心にテストした。
ESS製DACチップを搭載する付属モジュール「SEM1」では、圧倒的なS/N感、ひいてはそれを背景とすることで映える、音色のスムースさに驚かされる。「TERATON」オーディオモジュールを採用していた前述のCT10にも共通する特徴だが、ハイエンドらしい上質な描写という領域に達している。
エコーやリバーブの成分がミスティに広がる宇多田ヒカルの「One Last Kiss」を聴くと、細かな音が柔らかく溶け合いつつも明瞭に描き出され、かつ立体的に配置される様子が素晴らしく美しい。“溶け合いつつも明瞭” と説明したように、相反する要素を両立させるのもハイエンドならではの表現力だ。
AKM製DACチップをデュアル搭載する別売モジュール「SEM2」の個性は見事に対照的で、SEM1の特徴を表す一言が“ミスティ”ならこちらは“クリスタル”。カッチリと硬質な美しさをもって描写される。
例えばロバート・グラスパー「Better Than I Imagined」を聴くと、SEM1はジェントリーでソウルフル、メロウな印象を強めるのに対して、SEM2はエレクトリックサウンドのクリアさを際立たせる印象。また各楽器のアタックが明確になることでリズムも立ち、モニター的な精度感も強まる。AK T9iEから、より硬質なサウンドが特徴のイヤホンに替えてみると、さらにビシッとした感触が得られ、カッチリした描写力をより体感することができた。
SE180は、付属モジュールのSEM1の音質と世代を重ねて磨かれた本体の使い勝手だけでも、十分に魅力的だ。加えてSEM2と交換することで、モジュールごとに1台で別物に近い音を楽しむことができるのも、他にない大きな利点である。メーカーによれば、将来的には2種類以上のモジュールも登場予定というから、この先も新たな魅力を発揮し続けるモデルといえる。
Astell&Kernの冒険心炸裂な “スーパーギミック” は、堅実な土台にあってこそ成立している。SE180もまた、尖った驚きと納得の完成度を兼ね備えた、Astell&Kernらしい魅力的な1台といえる。
(協力:株式会社アユート)