【特別企画】オーディオ銘機賞2022 銀賞受賞
第7世代に進化したモニターオーディオ「シルバー・シリーズ」。ユニットをリファインしさらなる完成度に到達
英国モニターオーディオは、2020年の「ブロンズ 6G シリーズ」に続き、昨年はシルバー・シリーズを刷新させた。同社はプラチナム・シリーズを筆頭に4つのシリーズでラインナップが構成されているが、シルバー・シリーズが7世代まで到達。「オーディオ銘機賞2022」において銀賞を受賞した。ここではシリーズを代表して、最も大型の「Silver 500-7G」と最も小型の「Silver 50-7G」を取り上げる。
■ブロンズ・シリーズに続き大きく進化したシルバー・シリーズ
モニターオーディオの標準ラインナップはプラチナム、ゴールド、シルバー、ブロンズの4つで構成されているが、このうち第7世代まで到達したのはシルバーだけである。最初の発売が1999年だから、平均3〜4年に一度の割合でリニューアルされてきた計算だ。同社の最も主力となるシリーズであることがわかる。
上位2シリーズがハイル・ドライバー系のMPDトゥイーターを使用しているのに対し、シルバーはC-CAMドームを貫いているのも特徴と言っていい。これにC-CAMコーンを組み合わせた構成は、モニターオーディオの原点とも言えるスタイルである。
ブロンズ・シリーズがリニューアルされたのを受けて、その技術も発展・継承しながらこのG7シリーズではさらにきめ細かなリファインが施されている。
まずトゥイーターは従来どおり、アルミ/マグネシウム合金をセラミック・コートしたC-CAMドーム。ブロンズ6Gで開発されたUDウェーブガイドをさらに進め、ドーム/エッジ間にコンプレッション・リングを装着することでクロオーバー付近での指向性をいっそう均一化している。ハニカム状のパンチングメタル・グリルは開口部を増やし、材質もステンレスに変更された。またエッジの裏には4箇所のベンチレーションを設け、不要な背圧を回避している。マグネットはプレート型のネオジウムからリング型となった。
ウーファーはC-CAMの表面にディンプルを設けて強化したRST IIドライバー。アルミ合金の種類を変更して引っ張り強度を高めている。またブロンズ6Gで開発されたDCMテクノロジーを採用してコーンとエッジの接合面を最適形状としたことで、ダンピング特性は大幅に改善された。また130mmタイプでは、ボイスコイルの径が拡大されている。
3ウェイ・モデルに搭載のミッドレンジにも同様のリファインが施されているが、それに加えてマグネットをフェライトからネオジウムに変更。ボイスコイルも大口径化し、THDを改善して滑らかなレスポンスを得ている。
クロスオーバーはトゥイーターが3次、ミッドレンジとウーファーでは2次と3次を組み合わせて使用している。ネットワークは空芯コイルとセラミック抵抗にポリプロピレンないしポリエステル・コンデンサーによる構成である。
このほか仕上げには、ナチュラル・ウォールナットとアッシュの2色が加わった。また新たにABS樹脂製のアウトトリガー・フィートを装着し、安定性と制振性を強化。設置環境に応じてスパイクの取り外しも可能となっている。
ラインナップはフロント用が5機種。他にセンター用とダイポール/バイポーラ型、さらにシリーズ初のイネーブルド・スピーカーも用意されている。ここではシリーズを代表して、最も大型の「Silver 500-7G」と最も小型の「Silver 50-7G」を取り上げて聴いてみたい。
■Silver 50-7Gはウーファーをさらに強化、低域の立ち上がりも良好
Silver 50-7Gは、130mmのウーファーを搭載した2ウェイ・ブックシェルフ型である。いかにも小口径という印象だが、しかし現代のスピーカーは、この口径でも十分な低域再生が可能である。ことに6畳や8畳といった小空間だと、かえってこれくらいの方が容積と釣り合うことも多い。ひと昔前の感覚でいると、意外に思うかもしれない。
本機ではそういった一般事情に加えて、ウーファーの強化という個別事情がある。先にも触れたようにウーファーのボイスコイルが25mmから28.5mmに拡大されているため、振動板に対する駆動と制御が強まり動作に無駄がなくなっているのだ。これが音調にもストレートに反映されていて、低域の立ち上がりがきりっとしている。
デフィニションと言うが解像度とメリハリを合わせたようなニュアンスで、これが非常に良好だ。例えばピアノの低音部が、最低音域の強音でもがっしりした芯と明瞭な輪郭を崩さない。このため低域限界が一回り下がったようにさえ感じられるが、上の帯域に不要な被り方をしないため音程がよりはっきり感じ取れるのである。
もうひとつ帯域間のつながりが非常に滑らかになっているのも特徴と言っていい。これはトゥイーターのUEウェーブガイドを始めとする改良によるところが大きいと思われるが、クロスオーバーが平坦になったことも利いている。高域の端の方まで引っかかりなく伸びてピアノのタッチにも余韻にも濁りがない。こういう感触が下から上まで全帯域に行き渡っているため、室内楽でも声楽でもオーケストラやジャズでも、鳴り方が楽々として活きがいい。本シリーズの大きな収穫のひとつである。
■Silver 500-7Gではさらにレンジが広がり、エネルギー豊かで表情が深い
Silver 500-7Gは20cmのダブルウーファーに76mmのミッドレンジを加えたフロア型である。最小モデルの50-7Gが以上のような具合だったのだから、本機がいいのは当たり前と言わなければならない。実際その通りで、先に述べたことをそのまま拡大して当てはめればそのままである。
特に感じるのはレンジの広さだ。と言っても現代のスピーカーで測定上レンジが変わるわけではない。レンジが広がったように感じるのは低域の解像度と立ち上がりが向上したのと高域の情報量が増したことで、上下両端での音数が増えたからである。ピアノや室内楽がことに広々としているし、オーケストラはレスポンス全体が平坦だ。そしてどこも凹凸の幅が大きく、エネルギーが豊かで表情が深い。これは既に上級機のゴールドを越えてしまったかと思わせるような凄まじいほどの完成度である。
(提供:ナスペック)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.183』からの転載です。
■ブロンズ・シリーズに続き大きく進化したシルバー・シリーズ
モニターオーディオの標準ラインナップはプラチナム、ゴールド、シルバー、ブロンズの4つで構成されているが、このうち第7世代まで到達したのはシルバーだけである。最初の発売が1999年だから、平均3〜4年に一度の割合でリニューアルされてきた計算だ。同社の最も主力となるシリーズであることがわかる。
上位2シリーズがハイル・ドライバー系のMPDトゥイーターを使用しているのに対し、シルバーはC-CAMドームを貫いているのも特徴と言っていい。これにC-CAMコーンを組み合わせた構成は、モニターオーディオの原点とも言えるスタイルである。
ブロンズ・シリーズがリニューアルされたのを受けて、その技術も発展・継承しながらこのG7シリーズではさらにきめ細かなリファインが施されている。
まずトゥイーターは従来どおり、アルミ/マグネシウム合金をセラミック・コートしたC-CAMドーム。ブロンズ6Gで開発されたUDウェーブガイドをさらに進め、ドーム/エッジ間にコンプレッション・リングを装着することでクロオーバー付近での指向性をいっそう均一化している。ハニカム状のパンチングメタル・グリルは開口部を増やし、材質もステンレスに変更された。またエッジの裏には4箇所のベンチレーションを設け、不要な背圧を回避している。マグネットはプレート型のネオジウムからリング型となった。
ウーファーはC-CAMの表面にディンプルを設けて強化したRST IIドライバー。アルミ合金の種類を変更して引っ張り強度を高めている。またブロンズ6Gで開発されたDCMテクノロジーを採用してコーンとエッジの接合面を最適形状としたことで、ダンピング特性は大幅に改善された。また130mmタイプでは、ボイスコイルの径が拡大されている。
3ウェイ・モデルに搭載のミッドレンジにも同様のリファインが施されているが、それに加えてマグネットをフェライトからネオジウムに変更。ボイスコイルも大口径化し、THDを改善して滑らかなレスポンスを得ている。
クロスオーバーはトゥイーターが3次、ミッドレンジとウーファーでは2次と3次を組み合わせて使用している。ネットワークは空芯コイルとセラミック抵抗にポリプロピレンないしポリエステル・コンデンサーによる構成である。
このほか仕上げには、ナチュラル・ウォールナットとアッシュの2色が加わった。また新たにABS樹脂製のアウトトリガー・フィートを装着し、安定性と制振性を強化。設置環境に応じてスパイクの取り外しも可能となっている。
ラインナップはフロント用が5機種。他にセンター用とダイポール/バイポーラ型、さらにシリーズ初のイネーブルド・スピーカーも用意されている。ここではシリーズを代表して、最も大型の「Silver 500-7G」と最も小型の「Silver 50-7G」を取り上げて聴いてみたい。
■Silver 50-7Gはウーファーをさらに強化、低域の立ち上がりも良好
Silver 50-7Gは、130mmのウーファーを搭載した2ウェイ・ブックシェルフ型である。いかにも小口径という印象だが、しかし現代のスピーカーは、この口径でも十分な低域再生が可能である。ことに6畳や8畳といった小空間だと、かえってこれくらいの方が容積と釣り合うことも多い。ひと昔前の感覚でいると、意外に思うかもしれない。
本機ではそういった一般事情に加えて、ウーファーの強化という個別事情がある。先にも触れたようにウーファーのボイスコイルが25mmから28.5mmに拡大されているため、振動板に対する駆動と制御が強まり動作に無駄がなくなっているのだ。これが音調にもストレートに反映されていて、低域の立ち上がりがきりっとしている。
デフィニションと言うが解像度とメリハリを合わせたようなニュアンスで、これが非常に良好だ。例えばピアノの低音部が、最低音域の強音でもがっしりした芯と明瞭な輪郭を崩さない。このため低域限界が一回り下がったようにさえ感じられるが、上の帯域に不要な被り方をしないため音程がよりはっきり感じ取れるのである。
もうひとつ帯域間のつながりが非常に滑らかになっているのも特徴と言っていい。これはトゥイーターのUEウェーブガイドを始めとする改良によるところが大きいと思われるが、クロスオーバーが平坦になったことも利いている。高域の端の方まで引っかかりなく伸びてピアノのタッチにも余韻にも濁りがない。こういう感触が下から上まで全帯域に行き渡っているため、室内楽でも声楽でもオーケストラやジャズでも、鳴り方が楽々として活きがいい。本シリーズの大きな収穫のひとつである。
■Silver 500-7Gではさらにレンジが広がり、エネルギー豊かで表情が深い
Silver 500-7Gは20cmのダブルウーファーに76mmのミッドレンジを加えたフロア型である。最小モデルの50-7Gが以上のような具合だったのだから、本機がいいのは当たり前と言わなければならない。実際その通りで、先に述べたことをそのまま拡大して当てはめればそのままである。
特に感じるのはレンジの広さだ。と言っても現代のスピーカーで測定上レンジが変わるわけではない。レンジが広がったように感じるのは低域の解像度と立ち上がりが向上したのと高域の情報量が増したことで、上下両端での音数が増えたからである。ピアノや室内楽がことに広々としているし、オーケストラはレスポンス全体が平坦だ。そしてどこも凹凸の幅が大きく、エネルギーが豊かで表情が深い。これは既に上級機のゴールドを越えてしまったかと思わせるような凄まじいほどの完成度である。
(提供:ナスペック)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.183』からの転載です。