<連載>角田郁雄のオーディオSUPREME
テクノロジーで音質をイノベートする。DEVIALETのプリメイン「Expert 220 Pro」の本質を徹底追求
■CD、レコード、ハイレゾを再生。空間描写性が秀逸で、アナログ的な音質を体感できる
さて、その音質です。スピーカーはB&W 802D3で、PC-tripleC導体のスピーカーケーブルでバイワイヤリング接続します。最初にライン入力で、アキュフェーズのSACDプレーヤー「DP-750」を使用し再生してみました。音質的に変化したことは、DP-750の高解像度特性とダイナミックレンジの広さは維持されながらも、きめ細かで柔らかみのあるアナログ的な音に変化したことです。SAMの効果により、音の立ち上がりが俊敏で、中低域に厚みのあるピラミッド型バランスの音が体験できます。フォルテッシモでは、驚くほどの高い音圧も体験できました。
レコード再生ではDENON DL-103を使用しましたが、96kHz/24bitでA/D、D/Aのプロセスをまったく感じさせないほどの、倍音濃厚な音質が聴けました。特に中域が色濃く聴こえ、ヴォーカルやストリングスは魅力的に思えましたし、空間描写性も高く奥行き感もよく再現されました。
これらはSAMとADHの効果ですが、電気的なデジタル処理という感じがまったく無く、制動力の高い大型ハイパワーアンプを使用したイメージになります。この薄型の筐体からは想像すらできなかった高音質化かつワイドレンジな音質が体験できます。
次にメルコシンクレッツのオーディオサーバー「N1Z」を使用し、ハイレゾ再生を行いました。iPad用再生アプリは、Mconnect Player HDです。最初に、暮れにダウンロードしたピンク・フロイドの『The Darkside Of The Moon』を再生しましたが、まず驚いたことは、曲初めの胸の鼓動を思わせるバスドラムの響きです。明らかに重心が下がり、重低音化した感覚になります。しかも低音にコモリを感じません。シンバルやギターの響きも実に鮮やかで、「Time」の時計の響きはレコードに迫り、リアルに響き渡ります。ドラムスでも高い音圧を体験できました。
次にベルナルド・ハイティンク指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団によるマーラーの交響曲全集を再生しました。第2番が好きですね。鮮烈極まるシンバルとティンパニの響きと鮮やかなブラスが聴け、弦楽も高密度です。ソリストの歌唱もリアルで、合唱もステージ奥から前面に広がり、美しく再現されます。SAMの効果による空間描写性にも好印象を感じました。そして何よりも、このアナログ的な音質が気に入りました。まさにクラスAとクラスDをコンビネーションさせたADHの効果と言えるでしょう。
最後にRoon再生も行いました。本機とMac Book、サーバーをLANケーブルを使用しスイッチングハブに接続します。その音質ですが、本機の特徴は維持されながらも、全体域にまろやかさが加わり、ナチュラルな音になったことです。もう少し解像度を上げたいと思い、Mac Bookの汎用のLANケーブルを、シールド性の高い高品位LANケーブルに変えてみました。すると、解像度とレンジ感が明らかに向上しました。これは、Roon再生では、最終的にRoon CoreをインストールしたMac Bookが再生音に反映されるからと思われます。使用するLANケーブルにも敏感に反応します。
それにしてもRoonでは、アーティストや関連したアルバムなどの情報が見れて実に楽しいです。サンプリングレートコンバーター処理された音質も、結構良いですね。これからも楽しみたいと思います。
このようにデビアレExpert 220 Proは、豊富な入力と独自の技術を搭載していることが特徴です。ぜひ一度、このデザイン、操作感、音質を専門店で体験してみて下さい。取り組み甲斐のあるモデルであることも理解できることでしょう。
■注目の高音質ハイレゾ音源を紹介!
最後に、暮れに好印象を受けたハイレゾを紹介します。
一つ目は、ピンク・フロイドの『PULSE』です。『The Darkside Of The Moon』も良かったですが、『PULSE』はライブならではの臨場感があり、サウンドもスタジオ録音とは別物で素晴らしいです。
2つ目は、ベルナルド・ハイティンク指揮、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団によるマーラーの交響曲全集です。1962年から1971年まで9年をかけてアナログ録音された全集で、私は待ち望んでいました。どの作品も甲乙付け難いですが、第2番、第3番、第6番は、特に心に響く浸透力を感じます。ブルックナーの交響曲全集も気になるところです。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。