PR余裕の駆動力に高音質、その完成度に驚嘆!
Astell&Kern新DAP「KANN MAX」レビュー。“超高出力&低ノイズ”を追求するシリーズ集大成、その実力に迫る
やはり一聴して感じるのは、高出力による音像の安定感とブレのなさ。力強い響きでありながらも、いたずらにパワフルなだけでなく、地に足ついたしっかり感がある。細かい音も雑に鳴らしておらず、描写の精密さも併せ持つ。
音色の特徴としては、低域から中低域にかけてのふくよかさ、柔らかく広がる響き方が印象的だ。金物系の音像などはキリッとシャープでありつつ、全体的に見ればそこまでソリッドでなく、厚めで丸みがある。それでいて眠たい感じにはならず、クリアで高解像なバランス感はAstell&Kernらしい仕上がりになっている。
ゲイン調整も試してみよう。イヤホンをソニーの「IER-Z1R」に変更してみると、ゲインは「Low」に設定しても十分に音量が取れるが、「Mid」や「High」に設定してみると、サウンドに一層のエネルギー感が生まれた。鳴らしにくい機種を使っている人は、この辺りをじっくり聴き比べてみても面白いだろう。
続いてゼンハイザー「HD 700」に変更し、さらにiFi-Audioのアッテネーター「Ear-Buddy」を噛ませてかなり鳴らしにくくしてみたが、ゲインを「Super」に設定するとボリューム80 - 90程度でも十分に音量を取ることができた。CA1000と同レベルの出力というだけあり、よほどパワーが必要なヘッドホンでも楽々鳴らすことができそうだ。
逆に、Campfire Audio「ANDROMEDA」のような高感度な機種でも、ゲインをLowに設定すれば(なんならHighやSuperであっても)ノイズは殆ど感じられなかった。どのような組み合わせでも極めて高いS/Nを維持しており、まさに、KANNシリーズが目指してきたサウンドコンセプトのひとつの到達点と言ってもよい完成度だ。
同じ線材を用いたケーブルを使って、バランス接続による音色の違いもチェックしてみた。まずは2.5mm4極プラグにリケーブルしてみると、シングルエンドでの再生時よりさらに明瞭感が増した。前後方向のメリハリが顕著になった感じで、ボーカルはよりダイレクトに、背景のサウンドは各々の距離感がシビアに定位されている。
4.4mm5極プラグにリケーブルすると、同様に明瞭な感じはありつつも、クラップの粒立ちやキックの厚みなど、中低域の要素にフォーカスが合いやすくなった印象。ややハイ上がりな2.5mmとはわずかに違いが感じられた。イヤホンやケーブルのサウンド傾向に合わせて、最適な端子を選ぶ楽しみもありそうだ。
同ブランドの他機種とは全く異質な製品コンセプトでありつつ、多くの評価を集め、今なお進化を続けるKANNシリーズの最新作「KANN MAX」。イヤホン・ヘッドホンの高性能化が進む昨今において、どのような機種でも余裕で鳴らすパワー、そして作り込まれたサウンドクオリティは、あらゆるオーディオシーンにマッチするはずだ。
(協力:アユート)