PR8K、HDR10+など最新の映像フォーマットにも対応
B&Wを鳴らす圧倒的パワー。デノン「AVR-X580BT」は“音質全振り”の男前エントリーAVアンプだ
■B&Wをしっかり鳴らす地力の強さ。ステレオも5.1chも大迫力
実は今回、試聴室に入ったとたん驚いた。なぜなら、AVR-X580BTにB&Wのスピーカー「802D3」が接続されていたからだ。いやいやいや、いくらなんでも802D3は無理でしょう、価格的にも全く釣り合わないし。そう心のなかで思いつつ、まずはステレオ音源から試聴させてもらった。
すると、驚くべきことに、十全に802D3が鳴らされていたのだ。もちろん、高級ピュアオーディオアンプに比べればベストとはいえないかもしれないが、それでも十分に納得できるクオリティを持ち合わせていた。
まず、ヴォーカルの存在感がしっかりとしている。女性ヴォーカルは揺るぎのない定位感を持つ、厚みのある歌声を目の前で披露してくれた。音のキレがとても良いためが、滑舌がしっかりしている。スピーカーの特徴もあってか、声色はややハスキーだ。ピアノの音もピュアで聴き心地が良い。基本が強め、倍音の伸びはやや弱めに感じるが、その分厚みのある、存在感の強い演奏を楽しませてくれた。
スマートフォンをBluetooth接続して音楽再生を試みてみたが、こちらも充分に良好だった。本機の特徴だろう、ヴォーカルは滑舌よく、溌剌とした歌声を聴かせてくれる。
正直、ステレオ音声については同価格帯のステレオアンプに遜色のないクオリティを持つ合わせている。5万円クラスのステレオアンプは選択肢がほとんどなくなってしまっているため、その代わりにAVR-X580BTをチョイスするというのもひとつの手段かもしれない。
続いてBDビデオを視聴。5.1chサラウンド設定のため、Dolby Atmosなどのイマーシブ音声と比べれば上下の広がりは弱くなっているものの、正面から真後ろまで繋がりがスムーズな、安定した音場表現をしてくれ、素直にコンテンツに没入できる。
また、音のキレがとても良く収束も早いため、効果音に滲みがなく、迫力のよいサウンドを楽しむことができる。「007ノー・タイム・トゥ・ダイ」の冒頭、墓が爆発するシーンでは、分かってはいても思いっきり驚かされてしまった。音色傾向的にもレンジ幅はそれなりに確保しつつ中域を重視したキャラクターのためか、全く違和感を感じなかった。
このように「AVR-X580BT」は、コンセプトのしっかりした機能構成と音質面での細やかな作り込みによって、充分に魅力的な製品に仕上がっている。組み合わせるプレーヤーやテレビが多機能なのでWi-Fi機能などは不要、部屋のサイズからも3Dサラウンドまではいらない、という人にはもってこいの製品となってくれるだろう。Bluetoothに加えてHDMI接続も可能、手軽に、それでいて良質なステレオ再生も楽しめる、とても気の利いた製品といえるだろう。
(協力:D&Mホールディングス)