【特別企画】ティグロン15周年記念モデルの第2弾
世界初、“ルームチューニング”機能を兼ね備えたスピーカースタンド誕生!「スピーカーのポテンシャルをフルに引き出す」
ティグロン社の15周年記念モデルとして登場したスピーカースタンドの「RTSシリーズ」。エスカート社の協力のもと、スピーカースタンドとルームチューニングを融合させた世界初の“ルームチューニングスタンド”と銘打っている。その魅力を小原由夫氏がレポートする。
私も自宅試聴室で愛用するティグロンのスピーカースタンド。マグネシウムの振動吸収性能を活用した優れたスタンドと認識しているが、それでも、開発者であり同社代表の沖野氏によれば、まだ改善の余地があるのではないかといろいろ考えていたようだ。そうして数年の開発期間を経て、この度ついに発表されたのRTSシリーズ。そのコンセプトが実にユニークなのである。
同社のフラグシップ的スタンドは、支柱が2本のMGT-Wシリーズで、その分解能の高さとワイドレンジ感から私のリファレンスのスタンドである。ただし今回のRTSのベースとなったのは、2006年にデビューしたMGT-60S。つまり1本支柱のモデルである。沖野氏によれば、MGT-Sの方が空間表現力が高く、そのポテンシャルをさらに推し進めたいと考えたようだ。
開発コンセプトは「スピーカースタンドの存在感を消したい」というもの。あたかもスピーカーが単独で宙に浮いているような状態を作りたかったとのことだ。そこで模索し始めたのが、ルームチューニングの手法。様々な音響パネルやチューニング材を手掛けてきた「エスカート」に協力を仰ぎ、マグネシウム製支柱の内部にルームチューニング材を仕込んだのである。
具体的には、現行モデルでパンパンに詰めていた砂の量を聴感でコントロールしつつ、エスカートがパネル等に用いている「チューニング材」を組み込んだのだ。天板や底板は従来とまったく同じサイズと材料(鉄板とアルミ板の貼り合わせ、天板が6mm鉄と3mmアルミ、底板が9mm鉄と2mmアルミ)だが、支柱上部と天板の間が金属製のスペーサーで10mmほど浮いているのもミソである。全体の塗装や使用する全40本のネジ等も、一切の妥協を排して改めて吟味したものとなっている。
なお、本品はスピーカースタンドとルームチューニングアクセサリーを融合した世界初のルームチューニングスタンドとして現在特許申請中とのこと。
今回は従来のMGT-60Sとの新旧比較試聴が叶った。スピーカーはパラダイムのPERSONA Bを使用。まず聴いたのは、パトリシア・バーバーの『Higher』から「ハイ・サマー・シーズン」。RTS-60で聴くヴォーカルは、音像がポッと宙に浮かんでいる感覚だ。しかもそれが平べったくなく、フォルムとしての厚みを感じる。伴奏のアコースティックギターもすぐ脇に、やはり音像だけが浮かんでいる。微かに付加されたリヴァーブがきれいに響き、録音スタジオのアンビエントもイメージできる。
こうしてみると、スピーカースタンドの存在を消したいという設計者の狙いは確実に音に反映されている。それどころか、スピーカーの存在さえも消え、目の前にあるのは生演奏のリアルな音楽のみという印象が私には強かった。それに比べてMGT-60Sは、実体感の明瞭度という点でわずかに曖昧さを感じた。聴き比べてしまうと、声の定位感はいいが、音像の生々しさやフォルムのサイズ感が薄弱なのだ。爪弾くアルペジオの旋律も、生々しさという点でRTS-60が勝っている。
ボブ・ジェームス・トリオのスタジオライブ『フィール・ライク・メイキング・ライブ』から「マプート」を再生。ピアノを最前列に捉え、ベースとドラムがその少し後ろに定位しているのがよくわかる。ピアノのサイズは等身大に近く、ベースのピッチは明晰、ドラムのリムショットの抜けも抜群だ。MGT-60Sは音が中央に集まりがちで、ステレオイメージの広がり、見通しが浅く感じる。
ゲルギエフ指揮/マリインスキー劇場管弦楽団の「ストラヴィンスキー/春の祭典」の冒頭部、ファゴットやオーボエの響きは美しく、アンサンブルは奥行き感を伴った立体的な展開。RTS-60のステレオイメージの表現は実に素晴らしい。聴き比べてしまうと、やはりMGT-60Sの方がこじんまりと感じられる。
私の総合的な印象では、RTS-60はスピーカーのポテンシャルをフルに引き出しつつ、いわば黒子に撤したスピーカースタンドといえる。個人的にはこうしたコンセプトは大歓迎で、固有のキャラクターを持たない素直な音調のスピーカースタンドをお探しの方はチェックしておいて損はない。
(提供:ティグロン)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.189』からの転載です
エスカートとの共同研究で、理想のスタンド像を具現化
私も自宅試聴室で愛用するティグロンのスピーカースタンド。マグネシウムの振動吸収性能を活用した優れたスタンドと認識しているが、それでも、開発者であり同社代表の沖野氏によれば、まだ改善の余地があるのではないかといろいろ考えていたようだ。そうして数年の開発期間を経て、この度ついに発表されたのRTSシリーズ。そのコンセプトが実にユニークなのである。
同社のフラグシップ的スタンドは、支柱が2本のMGT-Wシリーズで、その分解能の高さとワイドレンジ感から私のリファレンスのスタンドである。ただし今回のRTSのベースとなったのは、2006年にデビューしたMGT-60S。つまり1本支柱のモデルである。沖野氏によれば、MGT-Sの方が空間表現力が高く、そのポテンシャルをさらに推し進めたいと考えたようだ。
開発コンセプトは「スピーカースタンドの存在感を消したい」というもの。あたかもスピーカーが単独で宙に浮いているような状態を作りたかったとのことだ。そこで模索し始めたのが、ルームチューニングの手法。様々な音響パネルやチューニング材を手掛けてきた「エスカート」に協力を仰ぎ、マグネシウム製支柱の内部にルームチューニング材を仕込んだのである。
具体的には、現行モデルでパンパンに詰めていた砂の量を聴感でコントロールしつつ、エスカートがパネル等に用いている「チューニング材」を組み込んだのだ。天板や底板は従来とまったく同じサイズと材料(鉄板とアルミ板の貼り合わせ、天板が6mm鉄と3mmアルミ、底板が9mm鉄と2mmアルミ)だが、支柱上部と天板の間が金属製のスペーサーで10mmほど浮いているのもミソである。全体の塗装や使用する全40本のネジ等も、一切の妥協を排して改めて吟味したものとなっている。
なお、本品はスピーカースタンドとルームチューニングアクセサリーを融合した世界初のルームチューニングスタンドとして現在特許申請中とのこと。
スピーカーの存在も消え、生のリアルな音楽がある
今回は従来のMGT-60Sとの新旧比較試聴が叶った。スピーカーはパラダイムのPERSONA Bを使用。まず聴いたのは、パトリシア・バーバーの『Higher』から「ハイ・サマー・シーズン」。RTS-60で聴くヴォーカルは、音像がポッと宙に浮かんでいる感覚だ。しかもそれが平べったくなく、フォルムとしての厚みを感じる。伴奏のアコースティックギターもすぐ脇に、やはり音像だけが浮かんでいる。微かに付加されたリヴァーブがきれいに響き、録音スタジオのアンビエントもイメージできる。
こうしてみると、スピーカースタンドの存在を消したいという設計者の狙いは確実に音に反映されている。それどころか、スピーカーの存在さえも消え、目の前にあるのは生演奏のリアルな音楽のみという印象が私には強かった。それに比べてMGT-60Sは、実体感の明瞭度という点でわずかに曖昧さを感じた。聴き比べてしまうと、声の定位感はいいが、音像の生々しさやフォルムのサイズ感が薄弱なのだ。爪弾くアルペジオの旋律も、生々しさという点でRTS-60が勝っている。
ボブ・ジェームス・トリオのスタジオライブ『フィール・ライク・メイキング・ライブ』から「マプート」を再生。ピアノを最前列に捉え、ベースとドラムがその少し後ろに定位しているのがよくわかる。ピアノのサイズは等身大に近く、ベースのピッチは明晰、ドラムのリムショットの抜けも抜群だ。MGT-60Sは音が中央に集まりがちで、ステレオイメージの広がり、見通しが浅く感じる。
ゲルギエフ指揮/マリインスキー劇場管弦楽団の「ストラヴィンスキー/春の祭典」の冒頭部、ファゴットやオーボエの響きは美しく、アンサンブルは奥行き感を伴った立体的な展開。RTS-60のステレオイメージの表現は実に素晴らしい。聴き比べてしまうと、やはりMGT-60Sの方がこじんまりと感じられる。
私の総合的な印象では、RTS-60はスピーカーのポテンシャルをフルに引き出しつつ、いわば黒子に撤したスピーカースタンドといえる。個人的にはこうしたコンセプトは大歓迎で、固有のキャラクターを持たない素直な音調のスピーカースタンドをお探しの方はチェックしておいて損はない。
(提供:ティグロン)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.189』からの転載です