PR先進的な回路技術とスイッチング電源でストレートなサウンドを実現
土方久明のCHORD「Ultima 3」導入記。現代アンプに求める条件を完璧に満たす最高の相棒
イギリス・CHORDのパワーアンプ「Ultima 3」を自宅に導入!
ある日の朝、自宅で目覚めたばかりの僕は眠い目をこすりながら家の廊下をフラフラと歩き、試聴室のドアをあけた。目の前には、まだ見慣れぬ2台のパワーアンプが、クワドラスパイアのオーディオラックの上に鎮座している。設置したばかりのオーディオ機器の存在を、朝イチで確認して満足したい。最近の僕はずっとそんな風に起き抜けの時間を過ごしている。
オーディオファンの皆さんならこの気持ちをわかってくれると思う。
2023年初夏、僕は新しい伴侶となるイギリスCHORD Electronicsのモノラルパワーアンプ「Ultima 3」を導入したのだ。
アンプとペアを組むスピーカーは、昨年導入したカナダ・パラダイムの「Persona B」。180万円のスピーカーに対し、アンプは640万円と、コストの比重はかなりアンプ側に寄っている。それでもこの組み合わせは、スピーカー購入後1年ほど考え抜いた結果だ。そして僕にとって将来への布石でもある。
Ultima 3は、高〜低音域まで全帯域でスピーカーを支配下に置く圧倒的な駆動力がある。ウーファーはおろかトゥイーターの制動さえ感じるし、小レベルの音の粒子が消失しないからアコースティック楽器の表現が超絶生々しく、サウンドステージの表現力は底なしだ。Ultima 3は我が家の試聴室における高音質再生のための最後のピースだった。ということでここでは、僕がUltima 3を導入した顛末を皆さんにお伝えしたい。
土方氏が現代アンプに求めるものとは?
話は2022年にさかのぼる。スピーカーを購入した僕は、次のステップであるアンプ選びを開始した。新しい製品の購入を考えている時のワクワク感は、オーディオ趣味のもたらす快楽の1つ。
2014年からオーディオ評論の世界に入ったおかげで、僕は雑誌取材などを通じて沢山のアンプを聴いてきた。オーディオ評論は決して楽な仕事ではないが、こんな時はそのアドバンテージが嬉しい。
僕がアンプに求める要素はスピーカーによって違うのだが、例えば、高性能なマテリアルをふんだんに使うハイテクタイプの現代的なスピーカーでは、音のリアリティとサウンドステージ表現を実現する超絶な分解能を求めたい。帯域バランスはフラット方向、小レベルの音が消えないことも必須。トゥイーター、スコーカー、ウーファーまで全領域での駆動力を求める。
もう少し具体的に書くなら、サウンドステージ表現については、位相感を崩さない正確な表現、センター定位する音像に実体感があること、ソースに含まれるステージの広さを誇張も収縮もしないこと。そして求める音楽性としては、音楽を生々しくアーティストの凄みをストレートに聴かせたい。
さらにシャーシデザインが洗練されていることも必須。自分で言うのもなんだが、要求項目はかなり多いのだ。
CHORDの強みはデジタルだけではない!アンプに込められた高い技術
正直にいうと、当初はCHORDのアンプは選択肢には入っていなかった。それはそうだ、CHORDといえば、今でも高性能DAコンバーターとして知られる「DAVE」や「HUGO」「Mojo」など “デジタル機器に強い” イメージが支配的で、国内におけるアンプの知名度は決して高くない。
しかし海外では事情が違う。僕は海外のオーディオ媒体のレビューを見るのが日課なのだけど、そこではCHORDのアンプが他のアンプを差し置いて高く評価されているのをよく見た。具体的には、「とにかくスピーカーの駆動力が高く、大型のフロアスピーカーをブックシェルフスピーカーのように鳴らす」「驚異的なノイズフロアの低さ」「鮮烈な音がする」などのレビューが目立った。
気になった僕は、昨年末にCHORDの輸入元であるタイムロードの代表、平野氏に自宅での試聴を申し出た。1週間ほどして平野氏が2タイプのアンプを持って我が家に来訪。1つはステレオタイプのパワーアンプ「Ultima 5」、そしてもう1台がモノラルパワーアンプ「Ultima 3」だったのである。
ここでは、最終的に購入したUltima 3の基本ディメンションをお伝えしたい。本アンプは、日本に輸入されているCHORDのパワーアンプの中では最上位のモデルだ。
シャーシサイズは480W×150H×360Dmmで、ハイエンドのパワーアンプとしてはコンパクトに抑えられている。重量は22.4kg。出力はAB級を採用しており、8Ωでなんと480W! 周波数特性は46kHz〜200kHzと、高音域の伸びも期待できる。
この比較的コンパクトなサイズに収まった大きな理由が、CHORDはアンプの電源にスイッチング電源を使用していることが挙げられる。トロイダルトランスなどの電源トランスを使ったアナログ式の電源部に対し、スイッチング電源は、電源の連続的な供給能力と応答力に優れ、回路の効率に優れているので、コンパクトかつ発熱も少ないというメリットがある。一般的な電源トランス方式の電源部では、電圧波形充電周期が1秒間に120回だが、CHORDのアンプが搭載する「高周波スイッチモード電源」は、1秒間の充電周期が80,000Hzと666倍。さらにオーディオ信号に対して電源インピーダンスが全域に対して低く、バッテリーに近い特性を持つ。
スイッチング電源のアンプ登場時にまことしやかに言われていたノイズの問題もクリアしており、搭載された電源入力フィルタで、家庭内の電源ラインからのノイズを低減しつつ、アンプからのノイズも完全に抑制。世界で最も厳しいとされる欧州の電磁放射基準をクリアしている。
実は、同社の創設者兼チーフデザイナーであるジョン・フランクス氏は航空宇宙用電源の開発に長期間携わってきた方だ。創業当時から、低雑音、高効率、高出力で安定な電源供給能力を持つスイッチング電源はオーディオアンプに最適との認識があり、1989年には10年かけて開発したというステレオパワーアンプ「SPM900」を発売している。先日の来日時には直接インタビューを行い、CHORDのデジタル技術、そしてアンプへのこだわりをたくさん教えてもらったのも僕にとっては大事件だった。
ただ、電源部がアナログなのかスイッチングなのか、ということが僕の選択にとって重要だったわけではない。アナログタイプで音の良いアンプも沢山ある。しかしそれ以上に僕が興味を持ったのは、DAVEでもわかる通り、CHORDは先進的な回路技術に長けた会社であったということだ。
今回のアンプ回路もオリジナリティが高い。最も重要なのは「ULTIMA テクノロジー」と呼称される、パワー段のマイナーループNFB技術によるデュアルフィードフォワード誤り訂正の回路だ。 これはパワー出力段のみに対して歪発生を低減させることを可能としている。さらに、出力素子にイギリスの宇宙航空分野に携わる半導体メーカーがCHORD専用に開発したMOS-FETを搭載するなど、スペシャルなマテリアルが投入されていることも特徴だ。
これらの技術を知り、本アンプはかなり強力な電源部を用いたハイパワーと徹底した歪みの抑制、つまり、現代に用いられる技術を使ってひたすらストレートな音を出そうとする思想が垣間見えたのだ。
未来的なデザインもクール。音が前に出て存在感が抜群!
平野氏によって、自宅の試聴室に設置されたUltima 3。いつも見慣れているオーディオルームの風景に見慣れぬ機材が置かれると新鮮だ。精密なCNC加工の前面パネルは航空機グレードのアルミニウムで作られており、厚さ28mmもある、中央部にある本体部を4本の柱で支える独特のデザイン。フロントパネルにはポリカーボネード素材の大きな電源スイッチがそなわり、電源を入れるとスッと天板のエメラルドグリーンのLEDが光る。
CHORDのオーディオ製品の外観はちょっとやり過ぎなくらい未来的でもあるのだが、実際に自宅の環境に入れると本当にカッコ良い。SNSで本機の写真を掲載したら「カッコ良い!」とかなり周囲から評判も良かった。
試聴楽曲はネットワーク再生を利用する。ネットワーク再生はルーミンのネットワークプレーヤー「X1」を使い、X1の1機能である音質劣化が最小限な「Leedh Processing Volume Control」ボリュームを使い、Ultima 3と直結する(つまりプリアンプレス)。CHORDからはアナログドメインでの情報欠落を抑えるだけ抑え、ハイレゾファイルの持つ優れた情報を全てアンプに投入するのが狙いだ。
まずは女性ボーカル、アデルのアルバム『30』より「To Be Loved」を再生した。音が出た瞬間、目の前の景色が一変する。超絶な透明感を感じる抜群のノイズフロアの低さ。スピーカー後方に展開されるサウンドステージは無限大のような奥行きがあり、次の瞬間、聴こえてくる彼女のボーカルは口元の動きが素晴らしくリアルで、彫刻刀で削り出したかのようにバックミュージックから鋭く浮かび上がる。今まで聴いたことがないようなリアルな音だ。
そして圧巻だったのは、次に聴いた洋楽ポップス、エド・シーランのアルバム『=(イコールズ)』から「Bad Habits」だった。高〜低音音域の全帯域で圧倒的なスピード感がある上、速度が揃っている。ウーファーからは立体的かつレンジの低いエレクトリックバスドラム、トゥイーターからは滲みのないエレクトリックシンセサイザー、全ての領域のスピードが揃う圧倒的な音だ。トゥイーターさえ制動して聴こえる。
Persona Bのカタログスペックは能率93dbと低くないが、“普通のアンプ” を使うと、音がサラッと無難に鳴ってしまう時がある。Ultima 3で駆動されるPersona Bの音は、前に出てきて存在感が抜群だ!
クラシックはTime For Threeのアルバム『Letters for the Future』から「Puts: Contact - II. Codes. Scherzo」をチョイスした。本楽曲の聴きどころは2つ。僕が現代アンプに求めたい要素、(1)アコースティック楽器ならではのリアルな質感の表現に優れること、(2)抑揚表現への追従と楽器の存在感が希薄にならないこと。個人的な印象だが、上述した2つの要素は、現代のアンプで時々物足りなかった要素なのだ。僕は綺麗な音が聴きたいのではなく、すべての音の情報をスピーカーに送り込んでほしい。Ultima 3は、まさにそれを実現するアンプだった。
3曲を聴いて判明したのは、僕が上述したアンプに求める要素をほぼ完璧に実現しているということ。ノイズフロアが低く歪み感が極小だから、小レベルの音がアンプの中で消失しない。ボーカル・楽器の質感表現およびサウンドステージの表現が素晴らしい。
そして底なしの駆動力で高〜低音域すべての領域でスピーカーを支配下に置くという、本来、難しい能力を高度に両立していた。平たくいえばシンプルな回路構成の良質なアナログアンプと、大艦巨砲主義のような弩級アンプの良いとこどりの音がする。まさに僕がリファレンスアンプに求めていた音がここにあった。
JBLのスピーカーでも、スピード感と立体感が圧倒的
スピーカー購入後、1年以上アンプ選びに悩んでいた。決して安価ではない金額については本当に悩んだが、現状でこれ以上、現代のハイテクタイプのスピーカーとマッチングのよいアンプはないかもしれない。
ちなみに、試しにもう1台のリファレンススピーカーJBL「L100 Classic 75」と組み合わせたが、全領域の音のスピードと立体感が揃い、びっくりしてしまった。Ultima 3は、使用中のスピーカーの封印を解く可能性を秘めたアンプだ。音の個性をありのまま伝えるストレートなサウンド。将来スピーカーを大型にステップアップしてもそのまま使えると自分に言い聞かせて、僕は平野氏に購入の意思を伝えた。
余談を2つ話したい。カラーはブラックにした。CHORDの未来的(すぎる)デザインが少しシックかつ無骨になる(嬉しい)。また、ステレオタイプのUltima 5は、Ultima 3はよりサウンドステージが広く、音楽的なグルーブに長けている。コストパフォーマンスがかなり高いモデルといえよう。
アンプが届いた日から、我が家の試聴室を開けると、ブラックで未来的な存在感あるシャーシが僕を出迎えてくれる。まるで「電源を早く入れて一緒に音楽を聴こうぜ」と囁いているよう。ちなみに、22kg台という重量に助けられ、Ultima 3を自宅1Fの試聴室から2Fの試聴室へ移動させて、普段のオーディオ取材の試聴にも使うことができている。毎日、Ultima 3と共に音楽の海へ飛び込み、そして製品テストを繰り返す日々だ。
(提供:タイムロード)