【特別企画】ミッドナイトブルー・メタリックとカリフォルニアパール・ブラックの2色展開
Bowers & Wilkinsの最新スピーカー技術を結集。 “D4 Signature”の進化ポイントは?
2021年にD4へと劇的な進化を遂げたBowers&Wilkins(以下B&W)の800シリーズ。その2年後の今年、“Signatureモデル”が満を持して登場した。ラインアップはシリーズの象徴であるトップモデル「801 D4」と、人気のブックシェルフ型「805 D4」の2モデル。土方久明氏による詳細なレポートをお届けしよう。
“それ”は何の前触れもなく発表された。高性能スピーカーブランドとして知られるイギリスのBowers&Wilkinsから最高峰ライン800 D4シリーズのフロアスタンド型スピーカー「801 D4 Signature」とブックシェルフ型スピーカー「805 D4 Signature」が登場したのだ。 2021年に発売された同シリーズから数えて2年、突如の発表に筆者の心は高鳴る。
変更された要素は、2色の新色のキャビネットカラーが採用されたこと。そして音質に関わる内部構成パーツが改良されたことだ。ミッドナイトブルー・メタリックは、「オリジナル・ノーチラス」をオマージュしたカラーで、深みのある光沢を表現。カリフォルニアパール・ブラックは、高級家具などで使用されるイタリアALPI社の突板による、たいへん美しい木目が魅力だ。
「805 D4 Signature」の基本構成はスタンダードモデルとなる805 D4と一緒で、カタログスペック上のサイズや質量、周波数特性、感度等は変わらない。25mmのダイヤモンド・ドーム・トゥイーターと165mmコンティニュアム・コーン・バス/ミッドレンジも同一だ。
変更部は4点ある。1点目はトゥイーター部のメッシュグリルが新デザインのものに変更されたこと。FEA(有限要素解析)構造解析によって形状が最適化され、メッシュの角度や開口率と剛性のバランスも解析され、高音域における拡散性をアップさせた。
2点目は、キャビネット上部に設置されたトッププレートの固定箇所が増やされ、不要共振を低減させたこと。3点目はウーファー部の改良で、振動板を動かす磁気回路に備わる空気抜き用の穴の直径を5.5mmから8mmへと拡大し、中〜低音域の歪み低減と聴感上の低域の伸びを改善した。
4点目はパッシブネットワーク回路部のアップグレードで、バイパスコンデンサーのグレードアップと使用個数増加を図っている。
「801 D4 Signature」についてもカタログ上のスペックは801 D4と同一。25mmのダイヤモンド・ドーム・トゥイーターと150mmのコンティニュアム・コーンFSTミッドレンジ、250mm(10インチ) エアロフォイル・ コーン・バスユニットを2基搭載する。
「801 D4 Signature」の変更点はより多岐にわたる。1点目は上述した新型メッシュグリルの採用。2点目は追加のホール加工により共振周波数をコントロールしたうえ、テックサウンド製のダンピング材が装着された、新型のアルミニウム・トッププレートの採用。3点目は底部のバスレフポートに使用されるパーツが鋳造アルミニウムに変更された。
4点目はウーファーの磁気回路に備わる磁気回路のミドルプレートとトッププレートの鋼材の改良による電流歪みを低減。5点目はネットワークに使用されるバイパスコンデンサーのアップグレードと使用個数の変更だ。
と、上述した変更点を見る限り、両モデルはともにユニットを根本的に変えるというようなモデルチェンジ的な仕様変更ではなく、各部をファインチューニングして音質の仕上げをさらに磨き上げようとする意図が見える。しかし、驚かされたのは両機の音の変化量が予想を超えていたことだ。
「805 D4 Signature」の音質を確認。高音質レーベル2×HDから発売されるハイレゾファイル、ダイアナ・パントン『Blue』を聴いた。同時比較ではないが、ベースモデルとなる805 D4が備えていた分解能とトランジェントの高さは踏襲している。と、ここまでは同一なのだが……、「805 D4 Signature」はとにかく高音域の音色的なクセがなく音が伸びている。
さらに高〜低音域までがシームレスにつながり、低域の立体感がわずかだが確実に向上している。センター定位するヴォーカル表現や音場の立体感も秀逸だ。アナログで再生したジョン・ウィリアムズ 『ライヴ・イン・ウィーン』は音色と音場の両面でよりソースに忠実な表現を聴かせてくれた。
「801 D4 Signature」は、川崎にあるディーアンドエムホールディングス(D&M)の試聴室で801 D4と比較する形で実施した。こちらも各帯域の音色、音調、ステージングの全てでソースに対してより忠実になり、特に低域のフォーカスとリアリティ向上は目を見張るものがる。
801 D4の再生能力は高い、しかし、「801 D4 Signature」を聴くと、今までD&Mの試聴室で感じていた部屋やアンプのわずかなクセだと思っていた部分は、実は801 D4側だったのだということに気が付かされる。
今回のシグネチャー・モデルは単なるバリエーションの追加ではない。Bowers&Wilkinsの開発陣は「800 D4」シリーズの発表後、新たに見つけた技術やプロセスをこのシグネチャー・モデルに投入することで、カラレーションと音場表現の両面で801/805 D4をアップデートしてきたのだ。この点は注目に値する。
Bowers&Wilkinsをよく知る、D&Mのシニアマネージャー澤田龍一氏はこう語る。「801 D4 Signatureを例にすると、メッシュグリルの刷新により、18kHzから30kHzの間でプラス2dBほどレスポンスが上がり、50Hzから150Hzの3次高調波歪みが3dB下がった」
もちろんスタンダードモデルも並行して販売される。しかし、どちらかを選べと言われたら、僕は無理をしてでもシグネチャー・モデルを導入するだろう。ソース機器やアンプ、ケーブル類の音質評価にこれほどの最適なスピーカーは少ないからだ。そして個々のアーティストが持つヴォーカルや演奏力の凄み、わずかなマスタリングのクセさえ脚色せず表現する。個人的には801/805のD4.5と呼びたいほどの進化を遂げている。
(提供:株式会社ディーアンドエムホールディングス)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.190』からの転載です
トゥイーターグリルなど細部をファインチューニング
“それ”は何の前触れもなく発表された。高性能スピーカーブランドとして知られるイギリスのBowers&Wilkinsから最高峰ライン800 D4シリーズのフロアスタンド型スピーカー「801 D4 Signature」とブックシェルフ型スピーカー「805 D4 Signature」が登場したのだ。 2021年に発売された同シリーズから数えて2年、突如の発表に筆者の心は高鳴る。
変更された要素は、2色の新色のキャビネットカラーが採用されたこと。そして音質に関わる内部構成パーツが改良されたことだ。ミッドナイトブルー・メタリックは、「オリジナル・ノーチラス」をオマージュしたカラーで、深みのある光沢を表現。カリフォルニアパール・ブラックは、高級家具などで使用されるイタリアALPI社の突板による、たいへん美しい木目が魅力だ。
「805 D4 Signature」の基本構成はスタンダードモデルとなる805 D4と一緒で、カタログスペック上のサイズや質量、周波数特性、感度等は変わらない。25mmのダイヤモンド・ドーム・トゥイーターと165mmコンティニュアム・コーン・バス/ミッドレンジも同一だ。
変更部は4点ある。1点目はトゥイーター部のメッシュグリルが新デザインのものに変更されたこと。FEA(有限要素解析)構造解析によって形状が最適化され、メッシュの角度や開口率と剛性のバランスも解析され、高音域における拡散性をアップさせた。
2点目は、キャビネット上部に設置されたトッププレートの固定箇所が増やされ、不要共振を低減させたこと。3点目はウーファー部の改良で、振動板を動かす磁気回路に備わる空気抜き用の穴の直径を5.5mmから8mmへと拡大し、中〜低音域の歪み低減と聴感上の低域の伸びを改善した。
4点目はパッシブネットワーク回路部のアップグレードで、バイパスコンデンサーのグレードアップと使用個数増加を図っている。
「801 D4 Signature」についてもカタログ上のスペックは801 D4と同一。25mmのダイヤモンド・ドーム・トゥイーターと150mmのコンティニュアム・コーンFSTミッドレンジ、250mm(10インチ) エアロフォイル・ コーン・バスユニットを2基搭載する。
「801 D4 Signature」の変更点はより多岐にわたる。1点目は上述した新型メッシュグリルの採用。2点目は追加のホール加工により共振周波数をコントロールしたうえ、テックサウンド製のダンピング材が装着された、新型のアルミニウム・トッププレートの採用。3点目は底部のバスレフポートに使用されるパーツが鋳造アルミニウムに変更された。
4点目はウーファーの磁気回路に備わる磁気回路のミドルプレートとトッププレートの鋼材の改良による電流歪みを低減。5点目はネットワークに使用されるバイパスコンデンサーのアップグレードと使用個数の変更だ。
と、上述した変更点を見る限り、両モデルはともにユニットを根本的に変えるというようなモデルチェンジ的な仕様変更ではなく、各部をファインチューニングして音質の仕上げをさらに磨き上げようとする意図が見える。しかし、驚かされたのは両機の音の変化量が予想を超えていたことだ。
805 D4 Signature -高〜低音域までがシームレスで低域の立体感も向上
「805 D4 Signature」の音質を確認。高音質レーベル2×HDから発売されるハイレゾファイル、ダイアナ・パントン『Blue』を聴いた。同時比較ではないが、ベースモデルとなる805 D4が備えていた分解能とトランジェントの高さは踏襲している。と、ここまでは同一なのだが……、「805 D4 Signature」はとにかく高音域の音色的なクセがなく音が伸びている。
さらに高〜低音域までがシームレスにつながり、低域の立体感がわずかだが確実に向上している。センター定位するヴォーカル表現や音場の立体感も秀逸だ。アナログで再生したジョン・ウィリアムズ 『ライヴ・イン・ウィーン』は音色と音場の両面でよりソースに忠実な表現を聴かせてくれた。
801 D4 Signature -ソースに対してより忠実に、リアリティも向上
「801 D4 Signature」は、川崎にあるディーアンドエムホールディングス(D&M)の試聴室で801 D4と比較する形で実施した。こちらも各帯域の音色、音調、ステージングの全てでソースに対してより忠実になり、特に低域のフォーカスとリアリティ向上は目を見張るものがる。
801 D4の再生能力は高い、しかし、「801 D4 Signature」を聴くと、今までD&Mの試聴室で感じていた部屋やアンプのわずかなクセだと思っていた部分は、実は801 D4側だったのだということに気が付かされる。
今回のシグネチャー・モデルは単なるバリエーションの追加ではない。Bowers&Wilkinsの開発陣は「800 D4」シリーズの発表後、新たに見つけた技術やプロセスをこのシグネチャー・モデルに投入することで、カラレーションと音場表現の両面で801/805 D4をアップデートしてきたのだ。この点は注目に値する。
Bowers&Wilkinsをよく知る、D&Mのシニアマネージャー澤田龍一氏はこう語る。「801 D4 Signatureを例にすると、メッシュグリルの刷新により、18kHzから30kHzの間でプラス2dBほどレスポンスが上がり、50Hzから150Hzの3次高調波歪みが3dB下がった」
もちろんスタンダードモデルも並行して販売される。しかし、どちらかを選べと言われたら、僕は無理をしてでもシグネチャー・モデルを導入するだろう。ソース機器やアンプ、ケーブル類の音質評価にこれほどの最適なスピーカーは少ないからだ。そして個々のアーティストが持つヴォーカルや演奏力の凄み、わずかなマスタリングのクセさえ脚色せず表現する。個人的には801/805のD4.5と呼びたいほどの進化を遂げている。
(提供:株式会社ディーアンドエムホールディングス)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.190』からの転載です