フォノイコ内蔵で高品位パーツを搭載
10万円以下で本格サウンド!スタンダードクラスのアナログプレーヤー厳選5モデルをレビュー
■ブランドならではの音質を上位機から受け継ぐ
5万円〜10万円以下のスタンダードクラスのプレーヤーは、各社のハイエンドモデルで感じられるそのブランドならではのサウンドを存分に楽しめることも特徴で、5万円以下の入門モデルよりもワンランク上の高音質を堪能できる存在である。
このクラスは、エントリークラス同様にフォノイコライザー搭載モデルが多く、搭載されていない場合でも、別途同メーカーからセットで購入しやすいフォノイコライザーがラインナップされていることも多い。入門機との違いとしては、このクラスからはあえてBluetoothやUSB録音機能を省いて、その分パーツなどに物量コストを投資し、より良質なサウンドを追求しているモデルが多いことも挙げられる。
そこで今回は、入門機からのアップグレードはもちろん、十分な音質で長く愛用できる初めてのアナログプレーヤーとしてもお薦めできるスタンダードクラスのプレーヤーをご紹介する。
■YAMAHA「TT-S303」
ヤマハのエントリープレーヤーで、MDF製の基材にグロス塗装の艶やかな仕上げを施した光沢ある美しいボディが印象的だ。モーターからの駆動力を、ゴムベルトを介してターンテーブルに伝えて回転させるベルトドライブ方式を採用し、MMカートリッジ対応フォノイコライザーアンプを内蔵する。
同社のフラグシッププレーヤー同様にストレートタイプのトーンアームが搭載され、本機では専用のヘッドシェルを使用してカートリッジを取り付ける方式が採用されている。33.3回転および45回転の再生に対応し、本体の天面には回転数切り替えスイッチとターンテーブルのスタート/ストップボタンのみが配されたシンプルなデザインとなっている。
各楽器の分離がよく適度な明瞭感も備える
サウンドも、ルックス同様に全体的にバランス良くまとめられた、オーソドックスな質感を楽しめるものとなっている。各楽器要素の分離がほどよく、落ち着きがありながらも適度に明瞭感のある音色バランスが印象的だ。ジャズピアノやクラシックピアノなどは旋律が明瞭に浮かび上がってくる。低域方向が適度に引き締められたあっさりとした量感表現であることも、その明瞭さを実現する要素と感じる。
ポップスやロック、エレクトロポップなどでも同様にボーカルやメロディの帯域がクリアに浮かび上がり、迫力あるサウンドを楽しませてくれた。カートリッジの交換でさらなるグレードアップにも応えてくれるだろう。
■REGA「Planar1 mk2」+「Fono Mini-MK2」
レガは定評ある老舗のアナログプレーヤーブランドで、軽量さを活かして高音質へと繋げる設計アプローチを採ることが何よりもの特徴である。同社エントリーモデルとなる本機もその思想を踏襲。ストレートタイプのヘッドシェル一体型アームも独自設計の軽量タイプで、軽快かつ開放的な動きを実現する。
ターンテーブルの回転数は、スピンドルへのゴムベルトの掛け替えで変更する仕様だ。プラッターは振動対策のためにメインとサブの2つに分かれている。フォノイコライザーは非搭載のため、同社の USB録音機能も搭載したフォノイコライザーアンプ「Fono Mini-MK2」を組み合わせて試聴した。
アナログレコードの持ち味である普遍的な音を鳴らす
静けさに富み、各楽器のディテールまでがしっかりと描写されるサウンドだ。オーケストラソースを聴くと、弦楽器の滑らかさや艶やかさが魅惑的。木管楽器もふわりとした柔らかい質感が絶品である。この滑らかな音質は、アナログレコードの音質に対して多くの方が抱く普遍的なイメージと言えるのではないだろうか。ピアノも金属弦の質感が明るくなりすぎず、楽器ボディ由来のウッディな質感もしっかりと引き出す。
ロックやポップス系ソースも、しっかりとフォーカスされた歌声が浮かび上がるとともに、バスドラムなどの強いアタックに対しても立ち上がりがブレず、余韻にも付帯感がなく軽やかで心地よい。ハイハットのリズミカルな刻みも詳細に伝わってきて音楽の楽しさを十全に描く。総じて、静けさの表現が秀逸で、音楽が明快に伝わってくるのである。プラッター構造やフォノイコが別筐体であることの恩恵も大きいだろう。