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PRミドルクラス「Signature Elite」で検証

評論家がPolk Audioのスピーカーを使って「自宅でマルチチャンネル」構築してみた

公開日 2023/12/01 06:40 逆木 一
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4.0ch→5.0ch→5.1chの順にステップアップ。その違いは?



サラウンドの試聴には、UHD BD『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』と、BD『セクレタリアト/奇跡のサラブレッド』を用いた。前者は最新タイトルならではの超絶技巧的音響表現のテスト、後者は「当時のアメリカの空気感」を期待して選出した。アメリカ史上最強馬の呼び声高いセクレタリアトのデビューとPolk Audioの創業は、奇しくも同じ1972年。これ以上の組み合わせはあるまい、という判断である。

今回はフロントにES50、センターにES30、サラウンドにES15、サブウーファーにMXT12、という5.1ch構成が可能だが、まずはセンターとサブウーファー無しの4.0chから始め、次にES30を加えた5.0ch、最後にMXT12を加えた5.1chで聴いた。

6畳のスペースに5.1chをセットアップ

4.0chでテスト(フロント:ES50/サラウンド:ES15)



『スパイダーマン』では、主人公がマルチバースのゲートに突入して最初に辿り着いた、ムンバッタンのチャプターを試聴。 “ムンバッタン” は、その名の通り “ムンバイ” と “マンハッタン” が融合したイメージの巨大都市であり、ゲートを越えると同時にエキゾチックな音楽が鳴り響く。そこに凄まじい密度の喧騒が重なり、その中を複数人のスパイダーマンが三次元的に駆け巡りながらダイアローグを繰り広げるという、目くるめく映像に負けない膨大な音の情報量が叩き付けられるシーンだ。

4.0chというのはマルチチャンネル・サラウンドの最小構成となるが、すでにこの時点で、一切の不満が出ないレベルの再生音である。映像の展開に応じて音が前後左右に動き回る「移動感」は、各スピーカー間に気になる隙間を生じず、6畳の空間いっぱいに音の軌跡が刻まれる。音楽と各種効果音の描き分け、ひとつひとつの音の存在感も申し分なく、センターレスでもダイアローグが聴き取りにくいということはない。

UHD BD『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』(左)、BD『セクレタリアト/奇跡のサラブレッド』(右)

『セクレタリアト』では三冠競走の一戦目、ケンタッキーダービーのチャプターを視聴。セクレタリアト自身のみならず、馬主のペニー・チェネリー女史をはじめ多くの人の運命がかかった中盤の山場であり、本作の競走描写の魅力が詰まったシーンだ。

スタートに向けてクローズアップされる馬の呼吸、一斉に飛び出した馬たちが力強く土を蹴る様の生々しさは素晴らしく、しかるべき音量を出せる環境なら、実際に馬群の中に飛び込んだ感覚を味わえる。本作のレースシーンは、カメラワーク(カメラと馬との位置関係)に応じて音の位置関係だけでなく音量も細かく各カットで変化するのだが、メインとなるES50はダイナミックレンジに余裕があり、その描き分けも明確に行えるため、臨場感の醸成に大きく寄与している。

また、2ch音楽ソースで聴いた際にも感じられた、心地よい中域のふくよかさは映像ソースにおいてはよりプラスに作用する。そのため、猛烈にレンジの広い最新映画音響を再生した場合でも、高音と低音に引っ張られて相対的に中音域が痩せるという感覚がない。音楽にしても映像にしても、神経質にならずに楽しめる再生音はPolk Audioの大きな美点と言えよう。

5.0chでテスト(フロント:ES50/センター:ES30/サラウンド:ES15)



センタースピーカーが加わることで、期待通りにダイアローグの明瞭さが著しくアップするとともに、全体的な情報量も増大する。これはキャラクター同士の軽妙な応酬が重要な役割を果たす『スパイダーマン』のシーンにおいて顕著で、音楽・効果音・ダイアローグの描き分けが明確化することでフロント側の奥行きが深まるという効果もある。

ES30

今回のテストを通して、ES50はたとえセンタースピーカーを用いない場合でも、音が中抜けしたりダイアローグが薄れたりといった、低レベルな再生音を聴かせたことは決してなかった。それでも、センタースピーカーを使う意味が「定位感」と情報量の両方で存分に感じられたことは確かである。

ちなみに、筆者のメインシステムは10年ほどずっとセンターレスである。「設置で妥協するくらいなら、いっそセンターレスでいい」というのが筆者の考え方だが、それは同時に、「妥協のない設置ができるなら、センタースピーカーを置いた方がいい」ということでもある。フロントスピーカーの間隔が大きく空く場合や、複数人での視聴を想定した環境ならば、なおさらだ。

今回は使用したES30の能力の高さはもちろん、センタースピーカーにとってかなり恵まれたセットアップが出来たことが良い結果に繋がったが、「サラウンドなら何が何でもセンタースピーカーが必要というわけではない」ということも覚えておいてほしい。

次ページ最後は5.1chをテスト。サウンドはどう変わった?

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