【特別企画】絶縁体に新素材XLPEを投入
価格は据え置き、音質は向上。“Xシリーズ”に進化したコード・カンパニー中核アナログケーブル4モデルを新旧比較試聴!
あくまでも音楽を大切にしたケーブル開発で、世界中の幅広い層のオーディオファンから愛され続ける英国CHORD COMPANY(コード・カンパニー)。同社の中核ライン4モデルのアナログケーブルが、“Xシリーズ”に進化した。絶縁体に新開発のXLPEを投入し、大幅な音質の底上げを果たしているという。その効果を、従来モデルと比較しながら探ってみた。
英国コード・カンパニーのケーブルには現在7つのシリーズがあるが、その上位2つ「Chord Music」と「Sarum T」にはTaylon(R)(タイロン)という軍用衛星技術を応用した絶縁材が使われている。
それ以外のスピーカーケーブルについては「XLPE」という新しい絶縁材が順次採用され、ほとんどのものがこれに置き換わっているが、今回はアナログインターコネクトケーブル用に最適化した上で「Signature Tuned ARAY」「Epic」「Shawline」「Clearway」という4つにもXLPEが採用されることになった。
そこでこれらすべて「Signature Tuned ARAY」から「Clearway」までの4シリーズの新・旧を通して聴くことによって、新絶縁材XLPEとXバージョンの根本的な特質を探ることにしたい。
絶縁材としてはPTFE(テフロン)が最も優れたものとして、ハイエンド・ケーブルにも使われることが多い。確かに比誘電率だけ見れば最も空気に近いものではあるが、温度に対する位相の変化が意外に大きいことも事実である。この点を解消したのがTaylonなのだが、XLPEもまた同様の対温度安定性を備えてTaylonに迫る特性を備えているという。なお、特性上デジタルケーブル等にはマッチしないとのことで現在のところ導入予定はないとのこと。
そこでその特性が各モデルにどう反映されているのか?試聴によって確認してみようというのが本稿の目的である。このためXバージョンだけでなく、それぞれの旧バージョンとも比較しながら聴いてみることにした。まずベーシックなClearway Xである。
コード・カンパニーのような専門メーカーになるとグレードによって音調や再現性が変わるということはなく、ただ情報量や空間的な精度に違いが出てくるだけであることが多い。このClearwayも鳴り方は上級モデルと変わりはなく、緻密で抜けのいい繊細な再現性が特徴だ。だから旧モデルでもそれだけなら特に不満は感じないが、Xバージョンに換えると鮮度とスピードが目に見えて向上する。切れがぐんとよく、解像度も上がっているのが明らかである。
バロックはヴァイオリンの活きのよさ、チェンバロや低音弦の分離が確かに違う。高低両端でのエネルギーが大きいのだ。切れがいいのはその反映である。ピアノは低音部の厚みがよく乗り、芯が太い。腰が落ちて骨格が強いため、弱音部でも音が痩せず音楽に重みがある。
コーラスは声の肉質感が増し、ハーモニーもいっそう豊かだ。響きに包まれているだけでなく、実体感がはっきりしている。
オーケストラはやはり鮮度が高く、エッジの切れが冴える。瞬発力が強く、メリハリに富んで起伏が大きい。徹底してにじみが消えたのが根本的な違いだ。
Shawline Xはひとつ上位のモデルで、音の細かさと空間性にClearway Xとの違いを感じる。
バロックは張りがあってエッジがきれいに切れ、楽器どうしの分離がいい。旧モデルと比較すると、よりきめ細かく瑞々しさを加えているのがわかる。ヴァイオリンは歯切れがよく、シャキシャキとリズムが刻まれている感触だ。立ち上がりが明快になっているのが音調全体に変化を与えている。
ピアノは骨格の強さに透明感が加わり、ピントが絞られてステージがリアルにできてくる。遠近が出てくるし、立ち上がりの強靭さも増している。
コーラスは響きが整理されてそれ自体の出方は変わらないが、起伏が増して表現が大きくハーモニーも分離がいい。従来よりも各パートの線がくっきりしているのが違いである。
オーケストラは切れのよさが利いて、明瞭そのものの鳴り方をする。色彩が澄んできれいなのも混濁がないからで、ていねいに磨いたような輝きがある。鮮度と純度が高いのだ。立ち上がりの速さが解像度に利いている。
Epic Xから上はいかにもハイエンドの出方である。遠近や音調がそれまでとは一線を画し、音数も増えて彫りが深い。
それがXバージョンになるとさらに緻密な冴えを見せる。バロックの鮮度が圧倒的でピントもずっと鮮明だ。ディテールの音数が多いのと、音どうしの関係が精密なのである。
ピアノも音像が明快で、ホールの響きにも実体感がある。全てが明瞭で鮮やかだ。またコーラスは非常に綺麗な鳴り方で、細部まで神経が行き届いている。汚れがなさを特に強く感じる。
オーケストラは隅々まで潤いが行き渡り、どの音も生き生きとして弾みがいい。緻密という言葉がぴったりの再現力である。
Signature Tuned ARAY Xはもうハイエンドそのもので、一音一音が精密にきめ細かく描かれる。バロックはエッジが全て明確になるため、リアリティが全く違う。ピアノも生きているようなリアリティ。コーラスは目の前が大きく開け、オーケストラは空間の実在感が強烈だ。
本来情報量が豊富で繊細であったものが、一音一音までていねいに磨かれてパリッとした強さと活きのよさが加わった。XLPEの特性が最もよく表れている。
エネルギーが隅々まで満ちてごく細かなところまで力強い。また立ち上がりが速く瞬発力が高い。どのモデルにも共通するこの違いが、つまりXLPEの特質と言ってよさそうだ。
どれも1ランクかそれ以上に向上している印象だが、意外にも価格は据え置きだそうだ。粋な計らいである。
(提供:アンダンテラルゴ)
本記事は『季刊・analog vol.82』からの転載です
新たな絶縁材XLPEを中核アナログケーブルに一挙に投入。進化具合を新旧比較でレビュー
英国コード・カンパニーのケーブルには現在7つのシリーズがあるが、その上位2つ「Chord Music」と「Sarum T」にはTaylon(R)(タイロン)という軍用衛星技術を応用した絶縁材が使われている。
それ以外のスピーカーケーブルについては「XLPE」という新しい絶縁材が順次採用され、ほとんどのものがこれに置き換わっているが、今回はアナログインターコネクトケーブル用に最適化した上で「Signature Tuned ARAY」「Epic」「Shawline」「Clearway」という4つにもXLPEが採用されることになった。
そこでこれらすべて「Signature Tuned ARAY」から「Clearway」までの4シリーズの新・旧を通して聴くことによって、新絶縁材XLPEとXバージョンの根本的な特質を探ることにしたい。
絶縁材としてはPTFE(テフロン)が最も優れたものとして、ハイエンド・ケーブルにも使われることが多い。確かに比誘電率だけ見れば最も空気に近いものではあるが、温度に対する位相の変化が意外に大きいことも事実である。この点を解消したのがTaylonなのだが、XLPEもまた同様の対温度安定性を備えてTaylonに迫る特性を備えているという。なお、特性上デジタルケーブル等にはマッチしないとのことで現在のところ導入予定はないとのこと。
Clearway X -鮮度、スピード、切れ、解像度も明らかに向上-
そこでその特性が各モデルにどう反映されているのか?試聴によって確認してみようというのが本稿の目的である。このためXバージョンだけでなく、それぞれの旧バージョンとも比較しながら聴いてみることにした。まずベーシックなClearway Xである。
コード・カンパニーのような専門メーカーになるとグレードによって音調や再現性が変わるということはなく、ただ情報量や空間的な精度に違いが出てくるだけであることが多い。このClearwayも鳴り方は上級モデルと変わりはなく、緻密で抜けのいい繊細な再現性が特徴だ。だから旧モデルでもそれだけなら特に不満は感じないが、Xバージョンに換えると鮮度とスピードが目に見えて向上する。切れがぐんとよく、解像度も上がっているのが明らかである。
バロックはヴァイオリンの活きのよさ、チェンバロや低音弦の分離が確かに違う。高低両端でのエネルギーが大きいのだ。切れがいいのはその反映である。ピアノは低音部の厚みがよく乗り、芯が太い。腰が落ちて骨格が強いため、弱音部でも音が痩せず音楽に重みがある。
コーラスは声の肉質感が増し、ハーモニーもいっそう豊かだ。響きに包まれているだけでなく、実体感がはっきりしている。
オーケストラはやはり鮮度が高く、エッジの切れが冴える。瞬発力が強く、メリハリに富んで起伏が大きい。徹底してにじみが消えたのが根本的な違いだ。
Shawline X -音の細かさと空間性がきめ細かく進化-
Shawline Xはひとつ上位のモデルで、音の細かさと空間性にClearway Xとの違いを感じる。
バロックは張りがあってエッジがきれいに切れ、楽器どうしの分離がいい。旧モデルと比較すると、よりきめ細かく瑞々しさを加えているのがわかる。ヴァイオリンは歯切れがよく、シャキシャキとリズムが刻まれている感触だ。立ち上がりが明快になっているのが音調全体に変化を与えている。
ピアノは骨格の強さに透明感が加わり、ピントが絞られてステージがリアルにできてくる。遠近が出てくるし、立ち上がりの強靭さも増している。
コーラスは響きが整理されてそれ自体の出方は変わらないが、起伏が増して表現が大きくハーモニーも分離がいい。従来よりも各パートの線がくっきりしているのが違いである。
オーケストラは切れのよさが利いて、明瞭そのものの鳴り方をする。色彩が澄んできれいなのも混濁がないからで、ていねいに磨いたような輝きがある。鮮度と純度が高いのだ。立ち上がりの速さが解像度に利いている。
Epic X -緻密な冴えを見せ、圧倒的な鮮度でピントも鮮明-
Epic Xから上はいかにもハイエンドの出方である。遠近や音調がそれまでとは一線を画し、音数も増えて彫りが深い。
それがXバージョンになるとさらに緻密な冴えを見せる。バロックの鮮度が圧倒的でピントもずっと鮮明だ。ディテールの音数が多いのと、音どうしの関係が精密なのである。
ピアノも音像が明快で、ホールの響きにも実体感がある。全てが明瞭で鮮やかだ。またコーラスは非常に綺麗な鳴り方で、細部まで神経が行き届いている。汚れがなさを特に強く感じる。
オーケストラは隅々まで潤いが行き渡り、どの音も生き生きとして弾みがいい。緻密という言葉がぴったりの再現力である。
Signature Tuned ARAY X -一音一音をより精密に描く-
Signature Tuned ARAY Xはもうハイエンドそのもので、一音一音が精密にきめ細かく描かれる。バロックはエッジが全て明確になるため、リアリティが全く違う。ピアノも生きているようなリアリティ。コーラスは目の前が大きく開け、オーケストラは空間の実在感が強烈だ。
本来情報量が豊富で繊細であったものが、一音一音までていねいに磨かれてパリッとした強さと活きのよさが加わった。XLPEの特性が最もよく表れている。
エネルギーが隅々まで満ちてごく細かなところまで力強い。また立ち上がりが速く瞬発力が高い。どのモデルにも共通するこの違いが、つまりXLPEの特質と言ってよさそうだ。
どれも1ランクかそれ以上に向上している印象だが、意外にも価格は据え置きだそうだ。粋な計らいである。
(提供:アンダンテラルゴ)
本記事は『季刊・analog vol.82』からの転載です