PR異なる性格付けに注目
プロブランドのこだわりが表出したDAC。SPL「Director Mk2」「Diamond」、2モデルを徹底分析
■Director Mk2/切れ良く、優れたS/Nを提供するサウンドに圧巻
次にDirector Mk2を試聴。小音量でも非常な高S/Nに感心しきり。耳触りの良さ、滑らかなグラデーションを描くような表現の豊かさも抜群だ。特にS/Nの良さで引き出す情報量の多い高密度なサウンドは、上述の通り「120Vテクノロジー」による高電圧駆動の特長と合致する。SPLが支持される理由は、設計思想に裏打ちされたものだと確信できた。
Susan Wongの「How Deep is Your Love」は、音場が天井方向にも高く広がり、分離の良さが印象的。ボーカルは強調されることなく、空間にぽっと浮かぶように独立して明瞭な存在感を示す。音場感やフォーカスの良さはHiFiユーザーが共通して好む感覚で、Diamondよりも味わいを求めるリスニングを意識したチューニングのようだ。
グラデーションがシルクのようにきめ細やかで、柔らかく豊かなサウンドは上質そのもの。低域楽器がカチッと引き締まり空間がクリーンで、全ての音が輝いて躍動感が溢れる。コーラスの重なりもハーモニーが美しい。楽曲に込められたときめくような心情もより心に迫ってくる。有機的な美しさ、芸術的な表現が感じられるのだ。
Paul McCartneyの「I'm Gonna Sit Right Down And Write Myself A Letter」はベースの弾力感が心地よい。ミュートのキレが印象的で、静寂がコントラストを紡いで心に沁みる。歪感とは無縁でピアノが輝くようにトレモロも高揚感が増す。切れが良くS/Nの良いサウンドが感情を揺さぶるのだ。
Linda Ronstadtの「What's NEW」は音場が広く天井方向の解放感も格別。高域は高解像で伸びやかさが印象的。パワーが入っても音は素直かつリニアに伸び、軽快でブリリアントな音色を奏でる。明瞭に分離したクリアな音が混ざらず丁寧に積み重ねられ、そのハーモニーが軽やかに空に広がるように美しい。澄んだ晴れやかなサウンドは圧巻だ。
冒頭で述べた通り、入力系統やルックスの違いからDiamondとDirector Mk2には異なる性格が与えられ、ユーザーの想定用途によってある程度の見当が付くかもしれない。加えて今回の試聴では、ニュートラルで密度が高く、分析的に聴く場合に音の判別し易いのがDiamond、高S/Nで開放感やフォーカス感が高く、オーディオ的に映えるのがDirector Mk2という印象を受けた。このサウンド傾向は、機能を含む性格と符合し、それぞれの用途で頼もしいパートナーたり得る。
オーディオリスニングという観点では、システムの中で縁の下の力持ちとして加えるならシンプルなDiamond、主役に据えるならDirector Mk2という選択が最適だと確認できた。
Diamondは、自宅スタジオ的な環境も含め、質実剛健なDACとして活躍しそうだ。Director Mk2はソースのスイッチャーとしても使い出があり、優秀なプリアンプとしてパワーアンプとの組み合わせが面白そうだ。平凡なプリメインアンプに飽き足らないHiFiオーディオファンに、新たな楽しみをもたらしてくれるだろう。
(協力:A&Mグループ株式会社)