PRどのモデルも間違いない満足度
B&Wの人気シリーズ、トゥイーター・オン・トップ式ブックシェルフ3機種の魅力を探る
日本でも人気のスピーカーブランドのひとつであるBowers & Wilkins(以下、B&W)。中でも特に人気の高いシリーズのひとつがトゥイーター・オン・トップ式のブックシェルフスピーカー。805 D4 Signatureを頂点として805 D4、705 S3 Signature、705 S3の4モデルがラインアップされている。今回はそのなかから上位3モデルをセレクトして一斉比較。土方久明氏がそれぞれのモデルの本質的な魅力と可能性を探る。
オーディオ機器を購入し音質を探求する時、音の指標となるスピーカーの選択は重要だ。音への忠実度=リファレンス性が高いモデルをと考えた時、多くの方がイギリスB&Wを思い浮かべるのではないだろうか。
現在のB&Wは30年ほど前に発売された「ノーチラス」が象徴的存在として今も光を放ち、さらに800、800 Signature、700、700 Signature、600シリーズなど、幅広い価格レンジでシリーズを展開。評価したいのは、それぞれのモデルが “各価格帯でのベンチマークとなる性能を持つ” ことだ。その中で改めてリファレンスとなるスピーカーを選択するとなると、もう1つキャビネットの大きさも気になってくる。最低域のレンジなどは大型スピーカーに1つの利があるが、実際のところ、大型のスピーカーが設置できない環境の方も多いはず。
では、そんな読者はリファレンス性に長けた試聴環境は作れないのか?いや、決してそんなことはない。そんな時に頼りになるのは、ブックシェルフスピーカーという選択肢だ。絶対的な低音域のレンジはフロア型に譲るにせよ、スピーカーの周りに物理的な空間が確保できることで、一般的な広さの家ならサウンドステージの奥行き、音像表現は逆に有利になるくらいだ。
そこで、今回はB&Wの2ウェイ・ブックシェルフスピーカーの中から上位シリーズに属す3モデルを複数のジャンルの楽曲を使用し音質比較する。組み合わせる機材で注意したポイントは1点、良質で駆動/制動力に長けたアンプと組み合わせたこと。DENONの新型プリメインアンプ「PMA-3000NE」を選んだ。
同社ラインアップの中ではミドルクラスに当たる「705 S3 Signature」は、今年3月に発売されたばかりの700 S3 Signatureシリーズに属す1台。既存モデル700 S3シリーズをベースに新しいカラーを追加し内部をチューニングしたモデルだ。
キャビネットの高さは413mm、幅は192mm、重量は10.4kg。B&Wの特徴であるトゥイーター・オン・トップ構造を継承し、ユニットには「800 D4 Signature」で採用された新型のトゥイーター保護用メッシュを組み合わせた25mmドーム型と、800シリーズから継承した「コンティニュアム・コーン」による165mmウーファーを搭載する。
本モデルの音質は、一言で書くならオーディオ的再生能力と音楽的な表現力のバランスが秀逸なサウンド。テイラー・スイフトのような現代ポップスとも相性が良く、音色の良さや透明感と色彩感を両立したヴォーカルが眼前に降臨する。ジャズのユリシーズ・オーフェンス・ジュニアは、音が前へしっかり飛び出してくるハードバップジャズに求められる要素を的確に表現する。クラシックはアナログでハンス・ジマーのオーケストラ楽曲『ザ・クラシックス』を聴いたが、オーケストラを構成する楽器の分解能が高く、少し色艶の良い音色なのでヴァイオリンやトランペットの色彩感も良い。
2021年に発売された800 D4シリーズで人気のブックシェルフ型、「805 D4」。キャビネットの高さは440mm、幅は240mmとごく僅か大きく、重量は15.5kgとグッと重くなる。ユニットはダイヤモンド・ドーム振動板による25mmトゥイーターとコンティニュアム・コーンによる165mmウーファーを搭載。
705 Signatureと比べて高分解能という共通点があるものの、質感表現の豊かさや、ディテールも明瞭になり、空間表現の立体感も余裕がある。テイラー・スイフトではヴォーカルの細かいニュアンスやバックミュージックの楽器の強弱がはっきりわかる。勢いや鳴りっぷりの良さは705にも魅力を感じるが、制動が取れた音で、ユリシーズ・オーフェンス・ジュニアは楽器が同時に音を出した際のダイナミクスの描き分けに長けているし、聴感上のFレンジも広く、低音域の表現で、ハンス・ジマーではより壮大なオーケストラとして楽しめる。
最後は、昨年登場した「805 D4 Signature」を聴く。キャビネット構造やユニットなど基本的な仕様は805 D4を踏襲、スペック的には大きな違い大きな違いを見出すことは難しいが、ウーファーは磁気回路にある空気抜き用の穴を5.5mmから8mmへと拡大し、トゥイーターのグリルも新デザインに変更されている。
その音質は一聴して違いがある。どの楽曲でもソースに忠実な音色、質感で、サウンドステージの広さや立体感も向上している。B&Wの開発陣は800 D4シリーズの発売後、新たに見つけた技術やプロセスをこのSignatureモデルに投入することで、カラレーションと音場表現の両面で805 D4のわずかな欠点を修正してきた。ハンス・ジマーではノーマルの805よりもデプスや各楽器の位置関係がより明瞭に提示される。
いかがだったろうか。分解能やサウンドステージ表現など基本性能の高さは共通していたが、705 S3 Signatureの躍動的な音は1つの魅力で、800 Signatureシリーズに少し手が届きづらいと考える方にとって、嬉しい1台だと思う。805 D4はSignatureシリーズが発売された後でも魅力は全く褪せておらず、高性能な2ウェイ・ブックシェルフスピーカーのベンチマークとして使用できる(800 Signatureシリーズよりも少し価格が安いのも嬉しい)。
そして805 D4 Signatureは2年の歳月を経てより完成度が上がっており、音楽をさらに正しい解釈で表現するので、ある意味音楽性も大きく上がって聴こえた。冷静に聴けば価格によるグレードの違いはある、しかしどのモデルを選んでも購入後の満足感は間違いなく高い。
(提供:ディーアンドエムホールディングス)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.194』からの転載です
一般的なリスニング環境ならブックシェルフはむしろ有利
オーディオ機器を購入し音質を探求する時、音の指標となるスピーカーの選択は重要だ。音への忠実度=リファレンス性が高いモデルをと考えた時、多くの方がイギリスB&Wを思い浮かべるのではないだろうか。
現在のB&Wは30年ほど前に発売された「ノーチラス」が象徴的存在として今も光を放ち、さらに800、800 Signature、700、700 Signature、600シリーズなど、幅広い価格レンジでシリーズを展開。評価したいのは、それぞれのモデルが “各価格帯でのベンチマークとなる性能を持つ” ことだ。その中で改めてリファレンスとなるスピーカーを選択するとなると、もう1つキャビネットの大きさも気になってくる。最低域のレンジなどは大型スピーカーに1つの利があるが、実際のところ、大型のスピーカーが設置できない環境の方も多いはず。
では、そんな読者はリファレンス性に長けた試聴環境は作れないのか?いや、決してそんなことはない。そんな時に頼りになるのは、ブックシェルフスピーカーという選択肢だ。絶対的な低音域のレンジはフロア型に譲るにせよ、スピーカーの周りに物理的な空間が確保できることで、一般的な広さの家ならサウンドステージの奥行き、音像表現は逆に有利になるくらいだ。
そこで、今回はB&Wの2ウェイ・ブックシェルフスピーカーの中から上位シリーズに属す3モデルを複数のジャンルの楽曲を使用し音質比較する。組み合わせる機材で注意したポイントは1点、良質で駆動/制動力に長けたアンプと組み合わせたこと。DENONの新型プリメインアンプ「PMA-3000NE」を選んだ。
「705 S3 Signature」オーディオ的再生能力と秀逸な音楽性のバランス
同社ラインアップの中ではミドルクラスに当たる「705 S3 Signature」は、今年3月に発売されたばかりの700 S3 Signatureシリーズに属す1台。既存モデル700 S3シリーズをベースに新しいカラーを追加し内部をチューニングしたモデルだ。
キャビネットの高さは413mm、幅は192mm、重量は10.4kg。B&Wの特徴であるトゥイーター・オン・トップ構造を継承し、ユニットには「800 D4 Signature」で採用された新型のトゥイーター保護用メッシュを組み合わせた25mmドーム型と、800シリーズから継承した「コンティニュアム・コーン」による165mmウーファーを搭載する。
本モデルの音質は、一言で書くならオーディオ的再生能力と音楽的な表現力のバランスが秀逸なサウンド。テイラー・スイフトのような現代ポップスとも相性が良く、音色の良さや透明感と色彩感を両立したヴォーカルが眼前に降臨する。ジャズのユリシーズ・オーフェンス・ジュニアは、音が前へしっかり飛び出してくるハードバップジャズに求められる要素を的確に表現する。クラシックはアナログでハンス・ジマーのオーケストラ楽曲『ザ・クラシックス』を聴いたが、オーケストラを構成する楽器の分解能が高く、少し色艶の良い音色なのでヴァイオリンやトランペットの色彩感も良い。
「805 D4」質感やディテールがさらに明瞭聴感上のFレンジも広大になる
2021年に発売された800 D4シリーズで人気のブックシェルフ型、「805 D4」。キャビネットの高さは440mm、幅は240mmとごく僅か大きく、重量は15.5kgとグッと重くなる。ユニットはダイヤモンド・ドーム振動板による25mmトゥイーターとコンティニュアム・コーンによる165mmウーファーを搭載。
705 Signatureと比べて高分解能という共通点があるものの、質感表現の豊かさや、ディテールも明瞭になり、空間表現の立体感も余裕がある。テイラー・スイフトではヴォーカルの細かいニュアンスやバックミュージックの楽器の強弱がはっきりわかる。勢いや鳴りっぷりの良さは705にも魅力を感じるが、制動が取れた音で、ユリシーズ・オーフェンス・ジュニアは楽器が同時に音を出した際のダイナミクスの描き分けに長けているし、聴感上のFレンジも広く、低音域の表現で、ハンス・ジマーではより壮大なオーケストラとして楽しめる。
「805 D4 Signature」ソースに忠実な音色、質感。ステージの広さや立体感も向上
最後は、昨年登場した「805 D4 Signature」を聴く。キャビネット構造やユニットなど基本的な仕様は805 D4を踏襲、スペック的には大きな違い大きな違いを見出すことは難しいが、ウーファーは磁気回路にある空気抜き用の穴を5.5mmから8mmへと拡大し、トゥイーターのグリルも新デザインに変更されている。
その音質は一聴して違いがある。どの楽曲でもソースに忠実な音色、質感で、サウンドステージの広さや立体感も向上している。B&Wの開発陣は800 D4シリーズの発売後、新たに見つけた技術やプロセスをこのSignatureモデルに投入することで、カラレーションと音場表現の両面で805 D4のわずかな欠点を修正してきた。ハンス・ジマーではノーマルの805よりもデプスや各楽器の位置関係がより明瞭に提示される。
いかがだったろうか。分解能やサウンドステージ表現など基本性能の高さは共通していたが、705 S3 Signatureの躍動的な音は1つの魅力で、800 Signatureシリーズに少し手が届きづらいと考える方にとって、嬉しい1台だと思う。805 D4はSignatureシリーズが発売された後でも魅力は全く褪せておらず、高性能な2ウェイ・ブックシェルフスピーカーのベンチマークとして使用できる(800 Signatureシリーズよりも少し価格が安いのも嬉しい)。
そして805 D4 Signatureは2年の歳月を経てより完成度が上がっており、音楽をさらに正しい解釈で表現するので、ある意味音楽性も大きく上がって聴こえた。冷静に聴けば価格によるグレードの違いはある、しかしどのモデルを選んでも購入後の満足感は間違いなく高い。
(提供:ディーアンドエムホールディングス)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.194』からの転載です