PRMEMS/ダイナミックドライバーのハイブリッド構成
“世界初” バイアンプ駆動完全ワイヤレスの実力や如何に。NUARL新フラグシップイヤホン「Inovator」レビュー
■のびやかで迫力たっぷりなサウンド。音響補正で「とても聴きやすく」なるのも魅力
今回の取材ではほぼ製品版の試作サンプルを借用することができたので、こちらを使っていろいろな部分をチェックさせてもらった。
音質の前に、まずはデザインから。試聴機は200台限定「White Porcelain」というカラーバリエーションだったが、いやはや、これがなんとも美しい。特にフェースプレート部は大理石、または何か天然石のような見映えで、なかなかに上質。落ち着きのある金色に彩られたノズル部と合わせ、まるでジュエリーのよう。購入を検討している人にはこちら、White Porcelainをオススメしたい(数量限定なのであくまでも間に合えばの話だが)。
装着感はとても良好だ。筆者は左右で耳の形が違っていて、製品によっては(カナル型であっても)耳からこぼれ落ちることがあるのだが、そういった不安のないしっかりした装着性を確保されており、かつ、どこかが強く当たって痛くなることもなかった。
さて、肝心のサウンドについて、まずは「Audiodo Personal Sound」補正なしの状態でチェックした。
総じて、のびやかで清々しい、それでいて迫力たっぷりな音。歌声は男性も女性もややクリア志向に感じられ、たとえば宇多田ヒカルの歌声はちょっとだけハスキーだが、実体感があってとても印象的。ピアノやギターはヌケのよい、広がり感のあるサウンドを聴かせてくれる。
いっぽう低域は、たっぷりとした量感をもちながらもリズミカル。なかなかにノリのよいキャラクターに感じられた。そこでCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」を聴いてみると、思惑通りグルーブ感が良好なサウンドが楽しめた。R指定の七変化なヴォーカルが存分に楽しめるのもいい。
ただし、普段はもう少しローエンドが伸びている曲の印象だったので、ここで「Audiodo Personal Sound」による補正を行ってみた。
ちなみに、補正はテスト音が聞こえるか聞こえないかをユーザーがチェックして、手動でボタンを押す方式。とてもシンプルで分かりやすい方式だが、思っている以上に効果的だった。Creepy Nutsを聴き直してみると、まずは低域のローエンドがよく聴こえるようになったうえ、キックがしっかりセンターへ定位するようになった。また、中高域もフォーカスが向上、定位感や音の広がり感が顕著に向上した。
そして、これが一番大切な部分だと思ったが、「とても聴きやすくなっている」のだ。というのも人間、音を聴くときには脳内でイコライジング、最適化を行うようで、それが長時間視聴の際の疲労に繋がることがある。
「Audiodo Personal Sound」はそれを補ってくれるため、脳が一生懸命働き続けることなく “自然な音” を得ることができるのだろう、普段よりも聴き疲れしにくい。Inovatorの「Audiodo Personal Sound」はそんな、全ての人に最適なサウンドを提供してくれる。音楽好きにとってはとても嬉しい、素晴らしく、そして貴重な機能だ。
なお、「Audiodo Personal Sound」で作り上げた音は最初聴いたときに多少の違和感があるが(脳内でもイコライジングしてしまうためだろう)、2 - 3分もすると慣れてしまい、リラックスして音楽が楽しめるようになる。ただ、開発者によるとボタンを押すタイミングも結果に関係してくるそうなので、ベストな音響を実現するためには、静かな部屋で丁寧に細やかにチェックする必要があるだろう。調整の際は静かな室内で、何度か試してみて欲しい。
最後にクラシック、オーケストラの演奏を再生してみた。各楽器が自然な音色を奏でてくれ、弦楽器は強弱が丁寧、金管、木管楽器ともにピュアで伸びやかな演奏を聴かせてくれた。特に音場表現は、ホールの雰囲気ばかりかミックス工程の介在・調整すら想像できてしまうくらいディテールが表現が細やかに伝わってくる。これはこれで音楽好きにはたまらないし、ワンポイント録音の音源ならではの魅力も十二分に発揮される。
このようにNUARL「Inovator」は、音質面で大いに魅力ある製品に仕上がっている。充実した機能性も含め、とっておきの1台として検討したい優秀機だ。
(協力:エム・ティ・アイ株式会社)