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次々に進むKORE化

「EPICON」がついに「EPIKORE」へ。DALIの理想を結実させたハイエンド・スピーカーが登場

公開日 2025/03/24 07:10 角田郁雄
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2023年に創立40周年を迎えたデンマークを代表するスピーカーブランドのひとつであるDALI(ダリ)が、アニバーサリーに先駆けて2022年に発表した最高峰モデルKOREの誕生は、伝統を重んじるダリのイメージを一新させるような衝撃を与え、今年ついに最高峰シリーズとして君臨してきた「EPICON」がついに「EPIKORE」へと進化を遂げた。今回はKOREをかなり完全な形で投入したEPIKOREシリーズの徹底試聴を行った。

 

EPIKOREスピーカーシステム※写真右から4ウェイ・フロア型の「EPIKORE9」、3.5ウェイフロア型の「EPIKORE7」、3ウェイブックシェルフ型の「EPIKORE3」

 

透明感とスケール感に溢れた見事な音楽の抑揚を再現

ペンタトーン・レーベルのグスターボ・ヒメノ指揮、ルクセンブルク・フィルハーモニー管弦楽団によるドビュッシーの交響詩「海」を聴く。静寂感極まる広々としたステージ。そこに静かにハープが鳴り響き、地を這うかのように弦楽パートの響きが流れ込む。木管の豊潤な響きも奏でられる。デリカシーに富んだ深淵な旋律

暫くすると、荒れた海を表すかのような、力感に溢れたフォルテッシモの旋律が奏でられる。静から動への色彩鮮やかな楽曲の変化。この楽章の終わりにも現れる。その1枚も2枚もベールを剥いだような透明感のある音とスケール感に溢れた音楽の抑揚は実に見事だ。とりわけ、弱音から強音へ、または、その逆の旋律に音楽の深みを感じさせる。

これは1984年にデンマークで創業し、40周年歴史を越えたダリの最新スピーカー「EPIKORE9」が奏でたサウンドである。同社伝統の柔らかく濃厚な中低域の響きを備えながらも、さらに解像度が上がり、より静けさを引き出す再生力が備わった印象を受ける。実に深い感動を憶えてしまった。この作品の「3つの交響的スケッチ」という副題の意味をあらためて知らしめられた。

確かにさらなる高解像度ワイドレンジ特性を身につけたことは理解できる。しかしさらに注目すべきことは、音の立ち上がりが強調されず、楽器や声の響きが自然であることだ。

リファレンス盤として使用しているホフ・アンサンブルの『ポラリティ』。このヴォーカル曲ではその場で演奏されているような生々しさや実在感が実に鮮明で、部屋に奏者がやって来たような感覚を憶えた。同アルバムのピアノ・ジャズトリオも聴いた。残響豊かな教会の中でこのトリオが丁々発止する様子がリアルに伝わってくる。 

ここに紹介するEPIKOREはダリが長い歴史で培ってきた技術の集大成のようなものがはっきりと見えてくるシリーズである。最新のハイテク振動板などで音を引き立てるような部類の進化ではない。伝統の技術を静かに昇華させ、人の聴感に馴染む浸透力のある音を極限まで実現しているのだ。 

最高峰KOREの技術をほぼ完全な形で投入する

それではこのEPIKOREを紹介していこう。このシリーズはフラグシップのKOREとRUBIKOREシリーズの間を埋めるべく開発された。モデルラインとしては、3ウェイ・ブックシェルフ型の「EPIKORE3」、3.5ウェイ・フロア型の「EPIKORE7」、4ウェイ・フロア型の「EPIKORE9」がラインナップ。すでに2022年に発売された4.5ウェイ・フロア型の「EPIKORE11」を加える4モデルがラインナップとなる。

カラーは、ハイグロス仕上げのウォルナット、マルーン、ブラックの3色。誰もが感動するであろう光沢のある美しいデザインで、北欧の家具を思わせる丁重なハンドメイドによる創り込みの良さが漂っている。これはブックシェルフ型「EPIKORE3」の専用スタンドにも見てとれる。床とのアイソレートを実現する強固なアルミ製構造を備えながらも、トータルバランスの良いフォルムまでもデザインしているのだ。

このEPIKOREシリーズは、従来の上級シリーズであるEPICONをベースに、フラッグシップであるKOREの技術を投入している点が大きな特徴だ。しかも下位モデルのRUBIKOREよりもかなり完全な形で具現化。ハイエンド・スピーカーとしての完璧性を追求したより現実的なシリーズと言えるだろう。

ダリを象徴するプレーナー(リボン)型振動板とドーム型振動板をハイブリッドしたトゥイーターは最上位のKOREと全く同じ仕様のEVO-Kハイブリッド・トゥイーターへと進化。10mm×55mmのプレーナー型と大型35mmのドーム型がハイブリッドされた。フレームは強固なアルミ・ダイキャスト製である。

EVO-Kハイブリッド・トゥイーターは55×10mmプレーナー型トゥイーターと35mmソフトドーム型トゥイーターで構成。最上位モデルKOREにも搭載されたユニットと同等のものを採用する

 

プレーナー型ユニットには強力なネオジウム・鉄・ボロン磁石モーターシステムを搭載。最新の導波管形状(放射スリット)を備え、7-8dBの感度の向上を実現し、より低い歪み率とより少ないダイナミック・コンプレッションを達成した。ドーム型ユニットは25mm径の2倍の放射面積を持つ強力なネオジウム磁石を採用。機械的損失を低減するために磁性流体は使わず、ボイスコイルに流れる交流電流による抵抗となるインダクタンス特性の直線化(平坦化)と冷却能力の向上のため、銅キャップも採用。

さらに振動板背後の風圧を低減し、冷却機能を向上するためのアルミダイキャスト・チャンバー(カバー)も2カ所に搭載。極めて空気抵抗を低減する通気性の良い磁気回路ユニットを実現している。これにより微細音を逃さず、強音でも歪み皆無の極めて高い感度を実現したのだ。再生帯域も区分した完全2ウェイ構成となっている。 

第2世代のSMCを採用する世界有数のミッド/ウーファー

同社のCEO、ラース・ウォーレは「最高のスピーカーを作ろうとするなら、ミッドレンジを優先すべきです。中音域を広くすればするほど、良いスピーカーになります」と常々語っている。

まさにそれを具現化したのが上記のEVO-Kハイブリッド・トゥイーターとともに新規開発された18cmのバス/ミッドレンジである。KOREの象徴ともいえるクラリティコーンテクノロジーを採用したペーパー及びウッドファイバー・コーン振動板を採用しているが、磁気回路にはSMCの第二世代にあたるSMC Gen2を投入。この新世代SMCは従来と比べて絶縁性能を2.5倍に向上させているという。

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18cmのミッドレンジと20cmウーファーにはいずれも新規開発で独自の第2世代SMCウッドファイバーコーンを採用

なお磁気回路はマグネットサイズがダリ史上最大という134mm、高さ24mmを誇る。これは後述する20cmウーファーと同様のサイズである。音を阻害する要素をくまなくピックアップしそれらを徹底的に排除。特に超低歪みを実現する磁気回路において、SMC Gen2の効果は実に大きいと思う。

さらに38mmのチタン・ボイスコイルはダリ初の1層構造。これはバス/ミッドレンジの広域の部分を伸ばすのに有利にはたらくという。さらにはアルミと銅のふたつを活用したリニア・インダクタンス・リングを3基搭載さらにこの磁気回路はウーファーの背圧を避けるため、キャビネット内部の密閉室に設置されている。これにより低い歪みやより少ないダイナミック・コンプレッションを実現。おそらく世界で最も優れたミッド/バス・ドライバーのひとつであることは間違いない。

4ウェイ・フロア型の「EPIKORE9」に搭載されている20cmウーファーは構成パーツや時期回路に関しては上記のバス/ミッドレンジと共通である。

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ミッドレンジに採用されているKOREの象徴とも言えるクラリティコーン。 振動板に「くぼみ」を設けることで均一な動作を実現
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ミッドとウーファーのマグネット。トッププレートの内側とポールピース(オレンジの部分)に第2世代のSMC素材を投入
EPIKORE11と同じ16.5cmミッドレンジを搭載。直径100mmの大型マグネットやチタンボイスコイルボビン、アルミ2本のショートリングを採用

 

 

美しく重厚なエンクロージャー、独自のポート技術もポイント

エンクロージャーの底部に隔離配置されたネットワークにはプレミアムグレードのパーツが投入されており、フロア型に関してはSMCコアのチョークコイルを採用している。

音を阻害する要素を徹底して、ピックアップし、それらを徹底的に排除している。超低歪みを実現する磁気回路におけるSMC-Gen2テクノロジーの効果は、実に大きい。また、振動特性を重視したキャビネット構造を備え、床反射を低減するFRCテクノロジーを搭載。SMC KOREクロスオーバーを採用したネットワーク回路も搭載した。

美しい鏡面仕上げのエンクロージャーはMDFでバッフル面の厚さが何と40mmもあるという。曲面MDF加工されたボディの厚みは18mmとなっている。また独自のコンティニュアス・フレアポート・テクノロジーを採用したダクト部にも注目したい。中央が狭く両端が広い構造になっており、空気が狭い部分で圧縮されてから解放されるため、渦の発生を抑え気流ノイズを低減する効果がある。このダクトは背面に設置されているが直線上ではなく斜めに配置されていることで、後ろの壁に風圧を一切感じさせることがない。

 

背面に設置されたコンティニュアス・フレアポート・テクノロジーを採用したダクト部は直線上ではなく斜めに配置されていることで、後ろの壁への風圧を軽減させる
 

 

コンソールモニターにも通用するサイズを超越したブックシェルフ

DALI「EPIKORE3」¥1,100,000(1本/税込)ペア販売品 ※カラーは右からハイグロス・ブラック、ハイグロス・マルーン、ハイグロス・ウォールナットがラインアップ

 それでは3モデルの試聴レポートをお届けしよう。まずは最も注目がであろうブックシェルフ型の「EPIKORE3」から聴いてみる。従来のシリーズではEPICON2にあたるモデルなのだが、トゥイーターはドーム型しか搭載されていなかったため、新たにプレナー型振動版が追加された3ウェイ構成の本機は外観の違いが明らかである。内振りに設置すると左右一点から音が放射され、このサイズとは思えない広い立体空間が描写される。

解像度もスタジオのコンソールモニターとしても通用するほどの再生力があり、バスレフポートによる特定周波数の強調もなく、リニアに伸びている。高域もかなり伸びているが、刺激感は一切皆無。ナチュラルな伸びの良さがある。今回はバイワイヤー接続、バイアンプ駆動で試聴したが、こういったグレードアップにも俊敏に対応してくれる非常に優れたスピーカーである。

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EPIKORE 3 STAND(¥264,000/1本・税込)。天板と底板は成形アルミニウム製で、支柱部は押し出しアルミニウム製の非常に強固な仕上げ。スピーカーケーブルを通すことができる構造で、支柱内部には音響調整用の砂も入れることができる
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独自のコンティニュアス・フレアポート・テクノロジーを採用したダクトは直線上ではなく上向きに放出される

柔らかさと濃厚さを継承極上の自然さと浸透力

DALI EPIKORE7 ¥1,760,000(1本/税込)ペア販売品 ※カラーは右からハイグロス・ブラック、ハイグロス・マルーン、ハイグロス・ウォールナットがラインアップ 

フロア型の「EPIKORE7」は3.5ウェイで、2基のダブルミッド/ウーファーはスタガー接続されている。本機は冒頭でレポートした「EPIKORE9」さながらのスケール感を継承し、中低域に厚みのあるピラミッド・バランスの音が魅力。特にヴォーカルなど中音域の解像度が高く、音源に内包する倍音を豊かに再生する良さがある。また、何と言っても非常にナチュラルで浸透力のある響きが魅力的。聴感上のバランスの良さがあり、フラット・レスポンスな音抜けの良さがある。解像度と空間描写性の高さも魅力だ

DALI EPIKORE9 ¥2,750,000(1本/税込)ペア販売品 ※カラーは右からハイグロス・ブラック、ハイグロス・マルーン、ハイグロス・ウォールナットがラインアップ

 

「EPIKORE9」は上下のウーファーの間にトゥイーターとミッドをはさんだ4ウェイ構成。音質は冒頭のとおりである。壮大なスケール感があり、超立体空間でリアルに演奏が迫ってくる。まさに高解像ワイドレンジなスタジオモニターと同様の特性を身につけ、その音は伝統の柔らかさや濃厚なテイストを失ってはいない。

EPIKOREシリーズはダリが理想とする音楽性と、リアルさとの極めて巧みな融合を感じさせてくれる。ハイエンド・スピーカーの本命のひとつと言っていいシリーズの誕生である。


(提供:株式会社ディーアンドエムホールディングス)
本記事はオーディオアクセサリー196号からの転載です

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