HOME > レビュー > DALIの音、その洗練の極み。価格以上の満足度を与えてくれる「RUBIKORE」の魅力

PR演奏の躍動感を伝える重要な情報も伝える

DALIの音、その洗練の極み。価格以上の満足度を与えてくれる「RUBIKORE」の魅力

公開日 2024/10/04 06:30 山之内 正
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
「良質でお求めやすい価格」をモットーに、40年以上もスピーカーの音質技術を磨いてきたデンマーク・DALI(ダリ)。今春発表された「RUBIKORE」は、まさに創業以来の理念が込められた中核シリーズである。フラグシップモデル「KORE」で切り拓いた新次元はどう進化したか、DALIのいまの到達点を聴いてみよう。

今年5月のミュンヘン・ハイエンドで発表された「RUBIKORE」が正式に国内展開決定!KORE、EPIKOREに続く新世代DALIの第三弾シリーズとなる

ミドルクラスに“KORE”の名を冠した注目作



ダリは2022年、同社の技術を究極まで突き詰めた新フラグシップ「KORE」を発売した。そこに投入した技術の大半は翌年発売の「EPIKORE 11」が継承し、今後のダリが目指す方向を明確に提示。KOREの開発で得た膨大な成果を複数のシリーズに展開するという重要なプロジェクトが具体的に動き始めたのだ。

EPIKORE 11の発売から僅か1年、今年はKOREの設計思想を受け継ぐ「RUBIKORE」が新たに登場する。ミドルクラスではKOREの名を冠した初の製品となるだけに注目度は高く、5月にミュンヘンで公開した際も話題を集めていた。国内発売が間近に迫ってきたので、ディーアンドエムホールディングスの試聴室で聴いた音の印象を紹介することにしよう。今回はブックシェルフ型の「RUBIKORE 2」、フロア型の「RUBIKORE 6」、「RUBIKORE 8」の3機種を試聴した、

澤田龍一さんがRUBIKOREの音質のポイントを解説する

技術の詳細はニュース記事で紹介している通りだが、あらためて要点だけ触れておこう。ウーファー/ミッドレンジドライバーは振動板形状を吟味した「クラリティコーン」とダブルマグネット型SMC磁気回路の採用が重要な意味を持つ。独自パターンのエンボスを表面に導入したクラリティコーンは、分割振動をコントロールして歪みを低減する効果が大きい。

振動板に「くぼみ」を設けることで均一な動作を狙っている。KOREとEPIKORE 11のミッドレンジに採用された

29mm口径のドームトゥイーターは従来用いていた冷却用の磁性流体を使用しない設計に変更し、これまで以上にトランジェントの良い高音を実現したという。ネットワーク回路にムンドルフ製のコンデンサーを導入し、フロア型の2機種はSMCコイルの採用が新しい。

RUBIKORE 6とRUBIKORE 8では、高域再生はソフトドームとリボンのハイブリッドトゥイーター

「コンティニュアスフレア」と呼ばれる新形状のバスレフポートも目新しい装備の一つだ。単純な円筒形ではなく、中央部がくびれた特殊な形状で、特定の周波数にピークが発生しにくくエアーノイズが少ないことが長所とされる。シンプルな手法だが、低音の質感を改善する効果が期待できるという。

出口が太く、中央に向かってすぼまる「コンティニュアスフレア」ポートも初採用

「コンティニュアスフレア」ポートのパーツ部分

RUBIKORE 2 -演奏の躍動感を伝える澄んだ音-



最初に「RUBIKORE 2」の再生音を確認した。混濁がなく澄んだ音という第一印象はヴォーカル、オーケストラ、室内楽などジャンルや編成を問わず共通の長所で、音場も奥行きが深くステージ後方まで見通しがきく。ヴォーカルの息遣い、ベースの弦が指板に当たる鋭い音など、楽音ではないが演奏の躍動感を伝える重要な情報まで鮮明に聴き取れる一方、子音がきつくなったり、ホーン楽器のアタックが刺激的な音にならないことに好感を持った。

2ウェイブックシェルフスピーカー「RUBIKORE 2」(264,000円・1台/税込)

サヴァールが振った「エロイカ」はピリオド楽器ならではの立ち上がりの速さが軽快な動きを際立たせつつ、余韻が柔らかいので細く神経質な音にはならず、楽器同士が溶け合う空気感が心地良い。ピアニシモのなかでの微妙な強弱の変化までもらさず聴き取れるのは、ウーファー/ミッドレンジドライバーがリニアリティの高い動作を実現しているからだろう。

ディーアンドエムホールディングスの試聴室にて「RUBIKORE」3モデルを順番に試聴

小さめの音量で聴いてもヴォーカルに実在感があり、ベースやパーカッションが刻むリズムが埋もれない良さもある。夜間などボリュームを上げにくい環境でも躍動感のある演奏を楽しみたいなら有力な候補に上がるスピーカーだ。

RUBIKORE 6 -空間表現が大きくなり深みのある落ち着いた音調-



フロア型の「RUBIKORE 6」は2つのウーファー/ミッドレンジをスタガードで駆動し、トゥイーターもドーム型とリボン型のハイブリッド構成で鳴らすため、大きくとらえれば2ウェイなのだが、ダリは2+1/2+1/2ウェイと呼んでいる。クロスオーバーは800Hz、2.6kHz、14kHzに設定しているので、4つのドライバーユニットが受け持つ帯域は一部が重なるとはいえ、すべて異なるのだ。

フロアスタンディング型スピーカー「RUBIKORE 6」(価格:528,000円・1台/税込)

深みのある落ち着いた音調を好む人にはこのRUBIKORE 6が最適だろう。もちろん独奏ヴァイオリンなど明るく華やかな音色も忠実に再現しているのだが、光沢感が過剰にならず、しっとりとした感触が好印象につながる。弦楽器ではヴィオラの深みのある中低音を正確に描き出し、ヴォーカルも浮ついたとこがなく豊かな潤いを感じさせる。

RUBIKORE 6の背面端子。バイワイヤリング方式になっている

エネルギーバランスはRUBIKORE 2よりも半オクターブほど低めの音域に重心があり、ラフマニノフの交響曲は低弦とティンパニの支えが厚く、オーケストラの安定感は格別だ。ステージ上の楽器の位置関係を立体的に再現することに加えて、前後左右それぞれ距離の振れ幅が大きく感じられ、空間表現がひと回り大きくなってスケールの大きさを強く印象付ける。

RUBIKORE 8 -低音楽器のさらなる深みと重量感-



シリーズ最上位のRUBIKORE 8はウーファー/ミッドレンジを3個に増やしているが、口径はいずれも6.5インチで他の2モデルと変わらない。キャビネットは大柄に見えるが幅は比較的スリムで重さも30kgにとどまり、扱いにくいサイズ、重さではない。

フロアスタンディング型スピーカー「RUBIKORE 8」(価格:704,000円・1台/税込)

RUBIKORE 6で好印象だった落ち着きのある音調に加えて低音楽器はさらに深みと重量感が増し、ピアノの左手のインパクトは強力だ。ヴォーカルを支えるベースや男性バックコーラスにも説得力があるが、声や旋律にかぶるような余分な重さを感じさせないことに感心する。3つのウーファーが重なる音域でもリズムの動きに曖昧さがないのは、キャビネット内部を仕切ってウーファー間の干渉を抑える対策が功を奏しているのだろう。

足元はスパイクとなっている

オーケストラは音数が増えて音量が上がっても響きが混濁しにくく、各セクションのやり取りや旋律とリズムの関係が鮮明に浮かび上がる。空間解像度の高さはフラッグシップのKOREやEPIKOREのクリアな表現を連想させ、従来のRUBICONに比べて確実な進化を遂げていることがわかる。外観の質感が向上していることもあり、ミドルからアッパーミドルへの格上げを果たしたと言えるのではないか。

ダリがKOREの開発で得た技術革新は多岐にわたり、RUBIKOREに導入したものは一部にとどまる。とはいえ着実な音質改善の成果を聴き取ることができた。ダリの次世代を担う中核シリーズとして、重要なポジションに到達したのだ。

まさにDALIの中核を担う重要なポジションを獲得している

(提供:ディーアンドエムホールディングス)

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE