前面に3枚の「アンク」を設置 − 両サイドとコーナーは特注仕様
さて今回訪問した渋谷邸ではどのようなオーダー品で構成されているか整理してみよう。前面は3枚の「アンク」。120cmの高さの物で、スタンドに乗せて持ち上げている。リスニングポジション後方の面には「AGS」を導入。その他コーナー用の「コーナー・アンク」、サイド用の「サイド・アンク」も使用している。
「サイド・アンク」は左右計4枚。スペースが限られている両サイドの壁面とスピーカーの間の空間にフィットして、かつ狭い奥行でも音響効果が高まるように、円柱の径を細くして、表面をカーブさせている。
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「サイド・アンク」はスペースが限られている両サイドの壁面とスピーカーの間の空間にフィットし、狭い奥行きでも音響効果が高まるように円柱の径を細くするとともに、表面を美しくカーブさせている |
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「コーナー・アンク」は上下2段重ねて設置。床から天井までちょうどいいサイズで設置されている |
渋谷さんはもちろん、これらの製品は一度に導入したわけではない。まずは正面に見える3枚のアンクからスタートし、次から次へと増殖。アッと言う間にご覧の有り様だ。これを進行性「アンク・シンドローム(症候群)」と呼ぶ。これも重症なのは間違いない。まさに森の中に住んでいるようだ。
サイド・アンクの効果は凄い! − リスニングルームが広くなった
早速“森の住人”渋谷さんに色々話を聞いた。まずは「アンク」を導入した時の第一印象を尋ねてみた。
「そうですね。最初に前方に3枚設置しただけでも音に奥行きが出ました。その後、後方にAGSを入れましたがこれで一段と音の前後感がハッキリとして、重なり合った楽器の配置も手に取る様に分かる様になりました」と渋谷さんはコメント。
その後はつい先日、念願の「サイド・アンク」を導入。左右に2セットずつセットされているが、この曲線が信じられないほど美しい。
「このサイド・アンクの効果は凄いですね。左右の音の広がりが見事で、リスニングルームが広くなったような感じです。以前はオリジナルノーチラスから低音が出なくて、苦労したのですが、日東紡音響さんのルームチューニングを導入していくことで、これでもか!というくらい低音が出てきました。使っているオーディオの機材は全く変わらないのに不思議ですよね」とも語ってくれた。
クラシックファンにこそ薦めたい! − ホールの空気感までも引き出す
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「アンク」や「シルヴァン」設置時には、希望があれば設置調整や音響測定もしてくれる。写真中央がオーナーの渋谷剛さん。写真左は日東紡音響エンジニアリングの佐古正人さん、右は山下晃一さん。バックに見えるのは、部屋の後面に設置されたAGS。壁全体を受注オーダーメイドでチューニングするシステム |
これこそが「コーナー・アンク」のなせる業か!部屋の定在波が消えて音がのびのびと鳴っている証しだ。渋谷さんはさらに続ける。
「僕はクラシックをよく聴くのですが、演奏しているホールの空間感までも引き出してくれたのはこの〈アンク〉の存在です。シルヴァンやアンクは今までの記事を見る限り、ジャズファンの方が利用しているケースが多いような気がしますが、クラシックファンにこそお薦めしたい製品なのです。特にオーケストラを再生する方には、マストアイテムとなるはずですよ。明らかにエポックメイキングな製品ですから」
そして渋谷さんはクラシック再生時の「アンク」の効果の魅力を、さらに詳しく語る。
「アンクを入れることで、もちろん音場、空気感も変わるのですが、楽器の音色の変化も大きな収穫でした。特に顕著なのが、楽器のボディが木でできているんだな、と思わせてくれる点で、ピアノのコクのある音色、弦楽器のただよう倍音はアンクを入れないとなかなか出ません。特にオーケストラのバイオリン群の倍音成分が柔らかくほぐれて空中にただよう様子は“生の演奏会ってこんな感じ”という気持ちにさせてくれます。また、打楽器系の皮を叩いている感じもアンクの効果ではっきり出るようになりました」
渋谷さんの熱弁はさらに続き、「オーディオファンには2つのタイプがいます。アンクやシルヴァンのある家とない家。吸音か?反射か?でルームチューニング材を選択する時代はもはや終わりました」とも語る。
さて、何だか凄い結論まで言って頂いたところで今後の夢を語ってもらった。「前面の壁の空いている空間を細くて薄いアンクで埋めたいですね。それから照明を使って視覚上の奥行き感も出したいと思っています」とのこと。
渋谷さんの飽くなき探求はまだまだ続くようだ。それにしても徹底的に対策された近未来の「PCオーディオ」と自然素材そのものの「アンク」との調和は音的にも視覚的にも見事というほかない。 |