AQUOS DS6ラインは、これまでエコと豊富なラインナップ展開で注目を集めてきたAQUOSシリーズが、さらなる映像クオリティの進化を図った注目モデルだ。

DS6ラインの技術的に大きな進化点は、言うまでもなく「高画質マスターエンジン」の搭載にある。別項でも解説したように、「Wクリア倍速」「アクティブコンディショナー」「なめらか高画質」という3つのテクノロジーにより構成された高画質化技術だ。

では、この「高画質マスターエンジン」の実力はどの程度なのか。内覧会で視聴した最終試作機の映像をもとにしたインプレッションをお届けしたい。

今回は主に「映画リビング」モードで視聴したが、アルゴリズムの改善により、輝きあるハイライト部から沈む暗部まで、コントラスト豊かな映像表現が可能になったことをまず特筆したい。

新たに「明るさセンサー」と連動し、映像の輝度や色温度の自動調整機能を備えたこのモードは、「映画」と名前が付くものながら、映像をビデオソースと映画ソースに自動判別し、それに合わせた画質チューニングを自動で行ってくれる。映画を見るときだけでなく、ふだんから常用できるモードと言えるだろう。

 
本機の映像設定メニュー。左は通常設定、右がプロ設定。プロ設定ではマニアックな調整を手動で行うこともできる

 

では、実際にAQUOS DS6ラインを明るい部屋で視聴してみよう。明るい環境では、テレビ局の制作現場で使用されているスタジオモニターと同じ9,300Kの色温度に設定される。店頭デモ用映像を再生すると、赤の力強さ、透明感あるブルーと、明部の鮮烈な色再現が印象的だ。同時に暗部もしっかりと締まり、暗部階調が表現できていることにも注目したい。

搭載しているパネル自体はAQUOS EXラインと同等とのことだが、パネルのポテンシャルが引き出されると、画質がこれほど変貌するものかと驚きを禁じ得なかった。高速にパンする映像で動画解像度をチェックすると、「Wクリア倍速」の効果により撮影時のぼやけが効果的に除去されていることが実感でき、その映像のキレ味は特筆できる。残像感が目に見えて解消する効果は、他社の最新の倍速駆動に比べても高いレベルにある。

視聴時に使用したデモ映像でWクリア倍速の高い効果を確かめることができた

色味を鮮やかにしたチューニングはあくまでもリビング志向。しかし、明部は伸びやかに、さらに同時に暗部コントラストは従来以上に深く沈むために全体の遠近感がよりリアルに感じられる。

人物に注目すると、程良く輪郭を強調しながらも全体的にはナチュラルなタッチで、自然な映像という印象。ノングレアパネルによる映り込みの少なさもあり、リビングで見るために最適化した映像として完成している。

続いて「映画リビング」モードの設定を変えずに、明るい照明下でBD-ROMの映画『ダークナイト』を視聴。色温度は同じく9,300Kのままの設定なので、映画視聴用の映像としてはややクールなビデオライクなタッチとなった。作品の高精細さを鮮鋭感ある映像で引き出した。映像のノイズ感も上手く抑えたクリアなタッチが心地良い。変わらず鮮やかな赤色の表現にも思わずハッとさせられる。

新搭載した「高画質マスターエンジン」の「フィルム・デジャダー」機能は、各社類似の機能を搭載しているが、やはりシーンによっては違和感を覚える。これは好みに応じて使用するものなので、気になるようなら「切」の設定にしても良い。

画質の進化は、同じ設定で照明を落とした時のクオリティに如実に現れた。この時の色温度は6,500Kで、映画館をイメージした標準的な色温度に自動的に設定される。

『ダークナイト』のチャプター20を視聴すると、暗いシーンの漆黒を見事に描き出し、暗部階調の粘りも見せる。さらに、すぐ後に続く運転席のショットでは、細密な表現力で人物の顔のディテールを見事に再現する。

本機はバックライトの光量コントロールに加え、液晶パネルの開口量も同時に調整しているが、バックライトのコントロールのみでは追従しづらい瞬時の輝度変化にも難なく対応し、映画の再現では特に効果的だ。液晶テレビ特有の黒浮きもほぼ気にならないレベルにある。「熟成」という言葉が似合う、スタンダードクラスの実力派モデルである。

 
折原一也 Kazuya Orihara

埼玉県出身。コンピューター系出版社編集職を経た後、フリーライターとして雑誌・ムック等に寄稿し、現在はデジタル家電をはじめとするAVに活動フィールドを移す。PCテクノロジーをベースとしたデジタル機器に精通し、AV/PCを問わず実用性を追求しながら両者を使い分ける実践派。