AV8003とMM8003は、既存のマランツのAVアンプとはいろいろな意味で異なるアスペクトを示した新世代のコンポーネントである。初めてセパレート型構成を採用したこともそうだし、別項で紹介したようにネットワーク関連機能を大幅に充実させたことも注目に値する。

さらにもう一つ重要な進化はデザインを一新させたこと。そのおかげで、ひと目で見てこれまでのラインナップとは違う世代のアンプであることが判断できる。ピュアオーディオ、AVのジャンルを問わず、これまでマランツが手がけてきたコンポーネントはほぼ10年を大きな単位として大きなモデルチェンジを行ってきた。特にAVの世界では新しい機能を追加しただけで製品の世代交代を行う例も少なくないが、マランツはそうした流れとは一線を画し、あくまで10年単位の長いスパンで製品の中身を確実に練り上げていく。その着実な姿勢を維持してきたことは高く評価していいだろう。

その一方で、世代を一新することをいったん決断したときには、意匠面も含めて、かなり思い切った変更をするというのがマランツの流儀でもある。10年間といえば技術的な蓄積も相当な規模に達するうえ、デザインの潮流や消費者の嗜好も大きく変化する。それらを考慮したビッグ・モデルチェンジが、まさに今回のセパレートアンプを契機に導入されることになったのである。

AV8003(左)とMM8003(右)。コードネーム「M-1」というプロジェクトネームのもとに仕上げられた、同社のハイエンドオーディオ機器で採用されている「ニュープレミアムデザイン」を彷彿とさせる、存在感のあるデザインを採用している

マランツが社内向け開発コードで「M-1」と名付けた今回のリニューアルは、そうした背景をベースに行われる一大プロジェクト全体をさす呼び名である。新世紀を代表するデザインを目指すというのが名称の由来と想像するが、いずれにしても今回の新デザイン導入は当然ながら今回のAV8003とMM8003だけで終わるものではない。底流にはピュアオーディオの製品で好評を博しているニュープレミアムデザインがあり、その流れを受け継ぎながら、マランツブランドとしての統一したイメージを作り出していくことを狙っている。