前作のシリーズと大きく異なっているのは、802 Diamondと800 Diamondの間に製品のないこと。つまり大口径ウーファー1個で低音再生する801Dには後継機が用意されなかったのだ。

ボリシーのはっきりしたB&Wならではの理由があったと思うが、残念がる人もいるかもしれない。ともあれ、フラグシップ機の800 Diamondとその次位モデルである802 Diamondは、共に広大な表現幅を持つ大型システムである。

 

802 Diamondは広大なDレンジとfレンジを誇るシステムで、大オーケストラや大合唱団のスケール感豊かな豪快なサウンドにも対応できるオールマイティシステムである。歪み感のない美しいサウンドも魅力的だが、表現の根幹はあくまでもリアルなサウンドにおいている。

 
「802 Diamond」¥1,008,000(チェリー/ローズ)/¥1,050,000(ブラック)※いずれも1本

本機で再生するサン=サーンスとドボルザークの交響曲は、曲自体のスケールの大きさを余すところなく伝えてくれる。低音では押し出しの豊かさと切れ込みのよさが両立し、力感と量感も高い次元でバランスよく表出することができる。

802 Diamondのスピーカーターミナル部

パイプオルガンの響きはローエンドまでの伸びと充分な量感と押し出しの良さで聴くもの圧倒し、ドヴォルザーク『新世界より』ではコントラバスとティンパニー、大太鼓の力強い響きが爽快感に繋がっている。

細部の表現も申し分ない。チャイコフスキーでは弱音器付き、弱音器なしのヴァイオリンの音色差がくっきりと表出され、微妙な強弱の変化も克明に捉えることができる。

好ましいのは中・高域でも適度な肉付きが維持され、細身のサウンドとならないことだ。『エディタ・グルベローヴァ記念コンサート』のグルベローヴァの歌唱は透明で美しく、かつスリリングである。

 

今回の試聴では、価格の安いモデルから高い方へと順序よく聴いてきたが、最後に登場したこのモデルが鳴り出した瞬間、それ以前に聴いた音の記憶は頭から離れ、本機のサウンドにのめり込んでいった。

フラグシップ機である800 Diamondのサウンドは予測以上に絶品であった。

音のスケールは802 Diamondよりさらに大きく逞しくなった。最も大きく変わったのは音の芯の強さで、シフが弾く《テンペスト》の最強音が連なるフレーズではピアノの一音一音が耳と心に叩き込まれた。

サン=サーンス『オルガン』のパイプオルガンとオーケストラの協奏ではパイプオルガンのしっかりとした土台の上に、透明感あふれる弦楽器の響きが壮大な音のタペストリーを現出させている。

佐渡裕とドイツ交響楽団の《新世界より》では、パーカッションの強打が身体を揺すり、オーケストラの全奏では混濁の少ない分厚い音の壁が眼前に現出する。

 
「800 Diamond」¥1,785,000(チェリー/ローズ)/¥1,890,000(ブラック)※いずれも1本

 
250mmのウーファーを2基搭載   曲線を組み合わせた美しいデザインは継承されている

 
台座となる部分にスピーカーターミナルを備えている

 

上がったのは低音の力感や量感だけではない。『テンペスト』の、ハーンのソロヴァイオリンの透明感溢れる美しい響きには思わず陶然となった。またグルベローヴァのソペラノでは透明な声の技巧的、芸術的な歌唱には理屈抜きに手を叩いた。

評価する各項目全てで最高点が得られ、聴いたばかりの音が私の中でたちまち新しいリファレンスと化した。

このスピーカーは完成度の高い逸品だ。802 Diamondも素晴らしいサウンドだったが、800 Diamondのそれは格が違った。

本機が全世界で入荷待ちの状況にあるという説明を聞きながら、私は当然だと呟いていた。

 

 
805/804 Diamondのレビュー