フロアースタンディングのスピーカーとしては小柄な方だが、低域の限界が38Hzになった分だけバランスの整ったサウンドの魅力が味わえる。805 Diamondとの差は僅か4Hzだが、ウーハーが床に近い分、それ以上に充実した低音感が得られている。大型システムのような押し出しのいい低音ではないが、バイプオルガンを除けば特に不足感はない。
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「804 Diamond」¥546,000(チェリー/ローズ)/¥577,500(ブラック)※いずれも1本 |
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ヒラリー・ハーンのチャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲第2楽章では、弱音器を付けたヴァイオリンの響きがリアルな感触で聴ける。美しくソフトな響きだが、叙情に溺れ切ることなくクールな演奏の姿勢は崩していないと感じた。
シフの「テンペスト」は、ホールの響きの良さがリアルに伝わるが、豪快にたたき付けるような演奏のスケールは少し小振りになる。
サン=サーンスの交響曲ではパイプオルガンの響きはローエンドで少し小振りになる印象で、低音の延びに関してはかなり満足できる。ただし厚みは出るが押し出しは充分とは言えない。
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「高音と低音の好ましいバランスをリアルに感じたいのなら804 Diamond」と貝山氏 |
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ドボルザークの《新世界より》では、本機の整ったバランスが活きてくる。もともと低音が豊かに収録されているソフトなので、不足感は全く感じない。歪みの少なさは805 Diamondと同等で、クリアネスは申し分ない。またグルベローヴァの歌唱では聡明な歌声の美しさと歌唱の技巧の高さが如実に判る。
この2機種はどちらも価値あるスピーカーだが、室内楽など小編成の魅力を味わうなら805 Diamond、高音と低音の好ましいバランスをリアルに感じたいのなら804 Diamondというのが私の選択だ。 |