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PureAVシリーズのレポート第1回となる今回は、HDMIケーブル(長尺15m)とアダプター「RazorVision(レーザー・ビジョン)」を組み合わせた使いこなしを研究してみたい。
まずはHDMIケーブルのクオリティからご紹介しよう。導体はOFC(無酸素銅)に銀メッキ処理を施し、シールドは厳重な5層加工とする。24Kメッキの精密なコネクターも装着されている。同社ではHDMIケーブルの設計・製造工程に、TDR(タイムドメインリフレクトメーター)と呼ばれる高度の測定技術を用いるという。HDMIケーブルでは複数の導体が全ての信号をズレが生じないよう同じ時間で伝送することが求められる。この時間軸の遅延、歪みは特に長尺の伝送では大きな問題になるという。ケーブル専業メーカーでは、こうした時間軸の伝送歪みまで管理する高度な測定技術を有するメーカーは極めて少ないが、PCなどデジタル伝送の専門メーカーであるベルキン社ならではのノウハウが駆使されているようだ。長さについては1080P対応の1.2/2.4/9.1mに加えて15mのケーブルがラインアップされている点にも注目だ。
コネクタ部に24K金メッキ、グリップ部にノンスリップ・ラバーをそれぞれ採用し接続時の安定感が高められている。両端にはフェライトコアを搭載し、ノイズ対策を徹底。また導体の損傷を防ぐために採用した張力緩和機能により、ケーブル自体も柔らかなハンドリングが可能になっている
被覆部にはシリーズの特徴であるメッシュ素材を採用し強度を高めている。5層シールド構造により、外来ノイズが遮断され、サウンドの鮮明度を向上。高純度OFCに銀メッキ処理を施した導体や高性能ポリエチレン絶縁体により、純度の高い信号伝送を実現している
HDMIケーブルは長さ15mまでのラインナップが揃う予定となっている。いずれの長さでも1080p信号伝送のサポートしている点も、今後様々なシアター環境へのインストールを実現するポイントとして注目される
【TDR(time domain reflectometer)】
まず立ち上がり時間が短い高速パルス信号をケーブルに入力する。その後、印加したパルス信号が入力側に戻ってくる反射信号を観測する測定技術。ケーブルを伝搬する信号が、インピーダンスの突然の変化に出会うと、信号の一部(あるいは全部)が反射される。そのため、戻ってきた(反射)信号の大きさと、いつ戻ってきたかのタイミング(遅延)、およびその極性を測定する事により、問題箇所の分析等も行う事ができる。TDRとはこのような原理を利用し特性インピーダンスの測定などにも使用される。
一方「RazorVision」は、HDMIケーブルの信号伝達を高品位に保ちながら長さを延長できる高性能アダプターだ。内蔵のエンハンスメントチップは、アメリカで軍事用途や医療用途を目的として開発されたビデオプロセッサーテクノロジーを応用したもので、ハイビジョン映像をよりシャープな鮮明感をもって再現する。これはエッジ部だけの強調でクッキリさせるのとは違い、映像のエンハンスすべきポイントを、数百ピクセル×数百ピクセルの緻密さでスキャンして、被写体全体のコントラストを向上させるというものだ。これによりさらに立体感豊かな映像が得られる、魔法のボックスのような製品なのだ。処理はリアルイムプロセッサーによって時々刻々と行われる。
RazorVisionはHDMIケーブルによる長尺接続を環境を実現するだけでなく、画質向上効果ももたらす高性能アダプターだ
HD信号用にも最適化されているRazorVisionの「コントラスト・エンハンスメント」機能にはDigiVision社の最新ビデオLSI「DV1000」が採用されている
RazorVisionの画質向上効果を示すイメージ。左の元画像と比べて、右側のイメージではRazorVisionの効果により、画像全体のコントラスト感と立体感が一段と向上している(
>>画像を拡大する
)
製品本体について見てみよう。電源ジャック付きの1入力/1出力を備え、HDMIケーブルを同梱する。今回のレポートでは、プレーヤーからの出力を1.2mのHDMIケーブルでつなぎ、15mのHDMIケーブルでプロジェクターへと出力し、視聴を試みた。なお本機についてはは480iから最高1080iまでの映像解像度に対応している。
先立って15mの単品HDMIケーブルの画質をチェックしてみたが、実に正確な伝送を実現している印象を受けた。優秀なS/Nで画像が安定し、安心して見ていられるクオリティである。その安定度は「RazorVision」を介しても全く衰えを見せないから恐れ入る。それどころか、映像はより一層クリアで鮮明になっているようだ。信号を劣化させないだけでなく、そこから一歩進んで積極的なコントラスト・エンハンスメントによる画質向上を狙っている製品だからだろう。
HDMIケーブルを延長する機能のほかには、本体左側にあるステータスセレクターにより、エンハンスメントのON/OFFと画面左右のスプリット機能も装備する。エンハンスメント効果の程度は本体右側に配置されたレベルセレクターにて、ロー/ミッド/ハイの3段階に好みで調整できる。スプリット機能については、画面を2分割した状態で、左を元画像、右を改善後の画像として並べて表示することができる機能だ。
林氏の自宅視聴室にて取材を行った。HDMI出力を備えるパイオニアのユニバーサルプレーヤー「DV-AX5AVi」と、東芝のHD DVDプレーヤー「HD-XA1」をリファレンス機とした
HDMI入力を備えるオプトマのDLPプロジェクター「HD72i」にて映像を出力し画質のチェックを行った
視聴ソフトには最新のHD DVDからDVDまで幅広いタイトルをセレクト。HD、SDともに優れた効果を確認することができた
それにしてもエンハンスメント機能の効果は劇的だ。まず大幅に画面の明るさを獲得することができる。肌色の見栄えが良くなり、コントラストがくっきりとし、さらに黒もぎゅっと締まって見えるのだ。ディティールの出方が半端ではなく、解像感がグンと向上するうえ、色再現もビビッドで意欲的だ。それでいて、少しも違和感がないのは、エッジがきれいで加工感がないからだろう。HD、SDソースとも効果は高い。DVDをアップコンバートし、1080i出力した場合も同様だ。
効果の段階的な差もはっきりしており、通常はローで軽くかけるだけで良いかと感じた。ミッド、ハイについては、積極的な使いこなしも面白いだろう。伝送系の画質アップが本業だが、例えばプロジェクターのランプがへたり始めた際のカバーにも好適で、スクリーンの輝度不足解消にも効果的だろう。また遮光が十分にできない、明るめのリビングでの鑑賞時にもしっかりとしたコントラストが取れ、画質は鮮明だ。その活用方法はユーザー次第でいくらでも広がる、魅力的なアイテムである。
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