B&WのCM1が登場する前と後では小型スピーカーの価値基準が変わった。もちろん高い方にシフトしたという意味だ。CM1登場後、ライバルメーカーはCM1をベンチマークにコンパクトスピーカーの開発を進めているが、サイズを超えた豊かな低音や立体的な空間再現など、CM1の雄弁な表現力を超えるのはきわめて難易度が高い。
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そのCMシリーズを超えうるのは新しいCMシリーズしかないと思っていたら、この秋、その期待がついに現実になった(ニュース記事)。CM1やCM7への支持が世界規模で想像以上に盛り上がったことを受け、B&WはCMシリーズのさらなる強化を決断。CM5、CM9、CMC2の3機種が新たに同シリーズに加わり、ラインナップが拡大することになったのである。
今回の新機種投入は既存のCM1、CM7を置き換えるものではなく、ラインナップの強化が目的である。実際に、新たに登場する3機種は現行3機種それぞれに対してひと回り大きく、サイズと価格の両面で現行3機種の隙間を埋める役割を果たす。CMシリーズのラインナップが完成することで、B&Wの他のスピーカー群との関係はどうなるのだろうか。開発時期や搭載されている技術を中心に考えると、CMシリーズは800シリーズの技術を盛り込みながら600シリーズの上位に位置付けられる製品群と見るべきで、既存の700シリーズと近い存在といえそうだ。 |
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まずコンパクト2ウェイのCM5だが、ウーファーはCM1の13cmから165mmに格上げされて805Sと同等にまで拡大、キャビネットも余裕のあるサイズを採用している。トゥイーターは800シリーズ同様にノーチラスチューブローディングタイプだが、磁気回路に含まれるショートリングの素材を銀から銅に変更することで、能率が1dB下がってウーファーと同一になっているという。従来はその能率の差をネットワーク回路のレベル調整抵抗で調整していたが、CM5ではその抵抗が不要になり、音質への影響が激減することになった。これは805Sにはなかった利点であり、大きな効果が期待できる。ネットワークは6dB/octのシンプルな回路構成で、独ムンドルフ社の高音質コンデンサー「サプリーム」(B&Wカスタム仕様)など、パーツの吟味にも妥協はない。
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CM9はシリーズ最上位にふさわしいスケール感を引き出すために165mmウーファーをダブル使用した3ウェイスピーカーで、ミッドレンジは800シリーズや603でおなじみのFSTを160mmに拡大して新規に開発。ウーファーも新規開発ユニットで、カーブ形状の深さや磁気回路の規模がCM7との主な違いである。3ウェイなのでネットワークは当然CM5よりも複雑になるが、パーツ素材の選択にはじっくり時間をかけたという。内部配線材はいずれもVan
den Hul製ケーブルを使用している。
CM5、CM9の発売を機にCMシリーズ全機種に新しい仕上げが導入されたことも大きなニュースである。「プレミアム・フィニッシュ」と呼ばれるピアノフィニッシュがそれで、外見だけでなく、音質へのいい意味での波及効果も期待できる。 |
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