ONKYO「A-977」¥126,000(税込)[Phile-web製品データベースで調べる]

昨年秋に登場したオンキヨーのプリメインアンプ「A-977」は、デジタルアンプの現状に興味もあり、じっくり自宅で試用してみることにした。2003年にデジタルアンプの一号機を発売してから第三世代となる最新技術を搭載した、4機種目のピュアステレオ・アンプだ。ソニー、アキュフェーズの新製品からも明らかなように、デジタルアンプの新製品が増えている。オンキヨーは現実的な中級機を主体に導入してきた。低効率A級アンプの魅力が継続する中で、超高効率デジタルアンプは革命的な世界である。

デジタルアンプは瞬時電流供給能力から得られる高速応答性やダイナミックな立ち上がりという点で、アナログアンプにない優位性を持つ。これに注目したオンキヨーでは、5年前から開発に着手。主な2方式の中からアナログ量をパルスの幅に変換するPWM方式を選択した。可聴帯域外のノイズが少ない、多量の負帰還を必要としないことが理由だ。

さて、オンキヨーの独自のVL Digitalとは、スパイクノイズの混入による誤変換が発生しない区間積分型AD変換方式のことだ。この回路はディスクリート構成で設計され、「A-977」に搭載された最新のバージョンでは電源電圧の変動に対しより強く、リニアリティーを改善したものである。

電源重視の設計も特徴である。電圧変動がアナログアンプ以上に影響することから大型EI型2個のトランスを採用、瞬時電流供給能力は100Aで設計されている。アンプの重量17.6kgは100Wのアンプとしては確かに重い。電源はハルクロの製品のようにスイッチング電源による方法もあるが、現在のところアナログ電源を採用する高級デジタルアンプが多い。

背面端子部 側面 内部構造

ボリュームノブはアルミ削り出し
信号経路で音量を調整するボリュームも音質を左右するキーパーツだ。ここには小、中音量時にS/Nを約15dB改善することが可能となったオプティマム・ゲイン・ボリュームが特徴になっている。これは入力信号の大きさを生かしながら動作するように独自の工夫をしたボリュームと可変ゲインアンプの組み合わせによって構成されている。極めてピュアな音質が得られていることをみれば、この部分も大きく作用したことが想像できる。

フォノ入力を増幅するイコライザー回路も、このクラスの製品としてはCR型を採用しているのが珍しい。オーバーオールでフラットで少量の負帰還を組み合わせたMM型対応の仕様だが、出力0.5 のMC型でも十分なS/Nがありクオリティが高い。中低域が厚く低域がよく伸び、躍動力の大きな表現はアナログ再生も魅力を引き出す。

定格出力100W+100W(8Ω)。脚には真鍮削り出しインシュレーターを装着、アルミ削り出しボリュームノブを採用するなど音質にこだわった設計が随所にみられる。

【SPECIFICATIONS】
<アンプ部>
●定格出力:100W+100W(8Ω、1kHz、0.5%以下THD)
●全高調波歪率:0.08%(1kHz 1W出力時)
●ダンピングファクター:25(8Ω)
●周波数特性:10Hz〜60kHz(+1dB/-3dB、CD)
●トーンコントロール最大変化量:±10dB、100Hz(BASS)、±10dB、20kHz(TREBLE)
●SN比:100dB(CD IHF-A)、70dB(PHONO IHF-A)
●スピーカー適応インピーダンス:4Ω〜16Ω
<接続端子>
●入力端子:アナログ8(PHONO、TUNER、CD、TAPE、MD、HDD、LINE、MAIN IN)
●出力端子:アナログ2(TAPE、MD)
●スピーカー出力:2(A、B)
●ヘッドホン端子1
<総合>
●消費電力:260W(待機時 0.1W)
●最大外形寸法:435W×144H×431Dmm
●質量:17.6kg