ディフィニションシリーズはタンノイの最新テクノロジーの結晶である。と同時に、同シリーズには過去から現在に至るタンノイの伝統も集約されている。
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Definitionシリーズ |
その最たるものがデュアルコンセントリックのドライバーユニットであるわけだが、同社が初代モデルの「オートグラフ」で示した巨大モデルのコンパクト化や、「IIIL Z」で見せた小型スピーカー作りの巧みさや、「キングダム」で標榜したワイドレンジ化への取り組みといった、タンノイの歴史の全てが、このシリーズには込められているのである。
このシリーズのもつ先鋭性と歴史性を確かめるために、新旧の演奏を聴いてみた。前者はエソテリックが復刻とSACD化をおこなったイシュトヴァン・ケルテス指揮・ウィーン・フィルによるドボルザークの「新世界」。後者はドイツグラモフォンが次世代の巨匠として抜擢したダニエル・ハーディングが同じくウィーン・フィルを振ったマーラーの交響曲第10番である。
ディフィニションシリーズで聴く「新世界」は非常に解像度が高い。1960年代の初頭にこれだけの録音がなされていたのか、と改めて感心させられる。また、エソテリック/ティアックの復刻技術の高さと、ソフトにかける思いの強さにも胸が熱くなる。表現そのものはプレステージシリーズと大きく異なるが、古いソフトとの親和性の高さは昔と変わらない。
一方、マーラーの10番はウィーン・フィルの基本的音色が60年以上たっても変わらないことと、現代の秀才指揮者の分析力の高さが浮き彫りになった。この表現は、リジッドなエンクロージャーとワイドレンジなユニットを組み合わせたディフィニションシリーズならではのものだろう。
高性能機が目白押しの現代にあって、ディフィニションシリーズは過去の伝統を忘れない貴重な存在である。と同時に、現代最先端の表現を身につけた先鋭的なモデルでもある。幅広いジャンルの音楽を掘り下げて聴く方には、ぜひともお薦めしたい。 |