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DS-MA1 |
1960〜70年代、未だ若者であった我々オーディオ好きが憧れたブランドの一つであった「ダイヤトーン」の名が、1999年ホームオーディオ市場から消えた。しかし一昨年の秋、その名が復活。と同時にダイヤトーンの名を冠した新製品が登場、それが今回徹底試聴することになったDS-MA1だ。
発表会で姿を見せたDS-MA1は、従来の同ブランドの技術や素材を正統に継承している部分はあるが、従来機では見たことのない手法を採用していることが一目で分かった。中型フロアタイプエンクロージャーに搭載された中域ユニットは、ホーン状のフロントロードダイレクトラジエーター(FLDR)方式を採用していた。またリング状ダイヤフラムを搭載したトゥイーターも砲金削り出しのフロントロード、イコライザーなどを備えている点が休眠前の同ブランド製品には見られなかった特徴だ。
この2基のユニットのダイヤフラム素材は、同社が80年代から採用し成果を上げてきたピュアボロン(B4C)。同素材は軽量で高い剛性を確保し、かつ内部損失も高く固有音が存在しない理想の振動板素材のひとつとして知られる。以前と同様、20ミクロンという極微細なボロン粉を12,000度以上でプラズマ溶射し製造されている。75mm口径の振動板は僅か1g、手の平に載せると羽のように軽く、指先で軽く叩くと一般的なメタル系ダイヤフラムのような共振がまったく感じられない。この中域ユニットのフロントロード部は、1.5mm厚のカエデ材を積層したブロックから1基ずつクラフトマンの手でNC旋盤により最適形状に削り出されるのだという。
このフロントロードを装着したことで、響きの良さと音離れの良さを実現すると同時に、小音量時のリニアリティを高め、ダイナミックかつ実在感あふれるサウンドを実現したという。またスロート部にはリング状のフェルトを装着し、エッジからの歪み成分を排除している。従来機にはなかった新たな手法を採り入れながら、こうした高音質対策を施すことができるのは同社の豊富な経験と確かな技術力ならではだ。
そして30mm口径トゥイーターは、同ブランドとしては初となるリングラジエータータイプを採用。リング状振動板の内側と外側で曲率を変化させる非対称形として共振を分散させ、5kHz〜80kHzという広帯域を1ユニットでカバーしていた。さらに振動板前面にフロントロードを装備、中央にイコライザーを設けることで、中域ユニットとの自然な繋がりを実現している。このフロントロード及びイコライザーは十分な比重を持つ砲金製だ。中高域のハイスピードかつナチュラルなサウンドに持つに負けない反応の良い低音再生を目指した30cm口径ユニットは、アラミッドクロスコーンを採用。アラミッド繊維も同社にとってはすでに使い慣れた素材、十分な強度を確保しながら、振動系質量をわずか70gに抑え、反応が良く、しかも固有音を感じさせることのないナチュラルな質感を実現しているのだ。
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トゥイーターとミッドレンジにB4Cピュアボロン振動板を採用。トゥイーターユニットはDIATONE初の30mm口径リングラジエーター型。ミッドレンジユニットは新開発のフロントロード・ダイレクトラジエーター方式。ウーファーは二層構造のアラミッドクロスを採用。各ユニットが受け持つ音域のつながりや、ユニット同士の応答性を合わせるなど、細かいところまで工夫が凝らされている |
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B4ピュアボロンは12000°Cを超えるプラズマの炎のなかでパウダー状B4C素材を型に吹き付け容射する。したがって無人室での作業となる。これを使って成形されたミッドレンジ用の振動板はわずか1g、驚くべき軽さである |
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エンクロージャーにはピアノ響板として用いられるスプルース材を採用。優れた振動減衰特性と振動電波速度を持つスプルースは音の立ち上がりや消えゆく余韻を美しく再現。バッフルに施した大胆なダイナミックサーフェイスカットは音場感の向上に貢献 |
エンクロージャーはシトカ・スプルースランバーコアを3層構造のフロントバッフルを採用しているが、3枚のランバーコア材は90度ずつ向きを変え強度を確保すると同時に共振モードをコントロールしている。そしてリアバッフルは2層構造、サーフェイスはアメリカンチェリーの突板にウレタン着色仕上げを施し高級感を醸し出す。スプルースランバーコア材はピアノに使われているもので美しい響きを得るための選択。その供給はカワイ楽器から受けているという。
セッティングの重要性はいまさらいうまでもないことだが、73kgという本機を支えるため砲金製の専用インシュレーターを付属させ、極端に悪条件な設置場所でない限り所期の性能を発揮できるよう配慮されている。 |