映画作品の中には、厳しく画質が問われる表現がある。その端的な例は70mm映画の代表作『アラビアのロレンス』の1シーン<シェリフ・アリの登場>だ。

ビクター「DLA-HD750」

英軍の将校、ロレンスはアラビアの王子、ファイサルと会うために砂漠の旅に出る。砂漠の中の井戸で喉を潤した彼は、眼前に広がる砂漠の空間に直面している。やがて、地平線のかなたで蠢くものが見える。最初、蜃気楼のように現れたその影は、やがてラクダに乗った人影であることが分かる。それは、アラブの一部族の長、アリであった。彼が地平線からロレンスの前までやってくるこの映像は映画史上最も長い、人物の登場シーンとして有名だ。

このシーンで真っ先に問われるのは空間の広さの表現で、遠近感の表現に卓越した高解像度の機器のみがそれを成就しうる。この場面を観るのに適したプロジェクターはと問われれば、私は迷わずに、ビクターDLA-HD750を挙げる。このモデルでこの映画を観ると、自然に喉の渇きが襲ってくる。強い映像は自然に生理的欲求を生むという一言が、この製品に冠した私の賛辞である。

 
評論家プロフィール

貝山知弘 Tomohiro Kaiyama

早稲田大学卒業後、東宝に入社。東宝とプロデュース契約を結び、13本の劇映画をプロデュースした。代表作は『狙撃』(1968)、『赤頭巾ちゃん気をつけて』(1970)、『はつ恋』(1975)など。独立後、フジテレビ/学研製作の『南極物語』(1983)のチーフプロデューサー。映画製作の経験を活かしたビデオの論評は、家庭における映画鑑賞の独自の視点を確立した。