では具体的に、タイムドメイン理論にはどのような条件が必要になるのかというと、できる限り小口径のユニットで点音源に近いこと、なおかつ瞬時に反応するスピードとタフさ(駆動力)をもち、スピーカー自体が固有の音を出さない、などが挙げられる。2ウェイ、3ウェイなどのマルチウェイスピーカーは、これらの条件を満たさないことに気づくだろう。ウーファーだけがあとからノソっと出たり、トゥイーターの共振音が音の濁りとなり、本来の原音再生を妨げるのである。
TDシリーズでは、あえて小口径のシングルユニットにこだわり、応答の良さを追求している。エンクロージャーにユニークな卵殻構造(エッグシェル・コンストラクション)を採用したのは、この構造が非常に丈夫であることと、内部定在波や気流の乱れを生じないための工夫だ。しかもユニットをエンクロージャーに直づけとせず、ディフュージョンステー(拡散支柱)と呼ぶ支柱で受けるフローティング構造としているのだ。ただ浮かせるだけでは駆動のための足場がないため、マグネットの後部にグランドアンカー(巨大錘)を設けてもいる。素晴らしいアイデアではないか。これによってスピーカーの正確なピストンモーションが、まるで水面にきれいな波面をつくるような音の広がりを生む。比類のない空間再現力は、耳からウロコ。スピーカーの存在が消えて音楽だけが現れる感じである。
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TDシリーズの内部構造 |
ECLIPSE TDシリーズが世代とともに進化を遂げてきたのは周知の通りだ。バリエーションも広がった。よりコンパクトなシリーズとして、5.1チャンネルの“Lulet”「307TH」も登場。「TD712z」は初のスタンド一体型で、砂入りの強靱なスタンドに唖然とした。ユニットの強化はもちろんだが、3本のスパイクをもつソリッドベースに、ディフュージョンステーはアルミの3倍の重量をもつ亜鉛ダイキャストを新たに採用するなど、まさにTDハイエンドにふさわしい仕上がりである。 |