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ECLIPSE TD「512」。同社の家庭用スピーカーの歴史はここからはじまった
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およそ8年前、私の試聴室《ボワ・ノワール》には、似た顔があった。同社の512のブラックモデルを5本長期間借用し、SACDによるピュアマルチチャネルの再生と、映画のサラウンドサウンドを楽しんでいたのだ。512は低いスタンド付きだったが、これを直に乗せるためのスタンドが用意されていた。スタンドの上部には付属スタンドに合わせた円形の板が固定され、512をそのまま乗せることが出来た。
いまにして思えば、512のサラウンド再生システムは実に多くのことを体験させてくれた。中でも忘れられないのは、再生音場というものの実態であり、そこに生成される音像というもののアスペクトだった。教えられたことも多かった。巧みに造られたシングルコーンのスピーカーシステムの再生音が、ごく自然な音楽表現と整合するということも学んだし、回折効果の影響がなく、定存波が発生せぬキャビネットがいかに重要かということも体験した。これだけ優れた素性のスピーカーが何故定住しなかったのか?それには、はっきりとした理由がある。
それは私がオーディオ再生で重視していた低音域の量感、力感が不足していたからだ。サブウーファーで補えればいいのだが、この時点では、後述するTD725swのような、このシステムに適合するスピード感あるサブウーファーは皆無だった。最終的には、512のシステムはそのまま返却することとなった。
その後、2003年には、小型化を実現した307シリーズとサブウーファー316SWが発売された。そして翌年、512を大幅に進化させたハイエンドモデルとしてTD712zが発売され、自宅の試聴室でテストを行った。進化の成果は絶大で、音場はより透明度を増し、音像はよりくっきりと空間に浮かび上がった。歪みも減少し、細部の表現がより緻密にできるようになった。スタンドも大幅に改良された。足の付いたスピーカーを、天台の上に乗せるのではなく、足のないスピーカーをスタンドにネックを使って取り付ける方式に変わった。これは単にデザイン上の問題ではなくより正確な音波の伝播を実現するためである。
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2003年に発売された小型モデル「307」。デスクトップスピーカーとしても人気を集めた |
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2004年に登場したハイエンドモデル「TD712z」。現在は生産を完了し、今回紹介する「TD712zMK2」に引き継がれた |
翌2005年には、ECLIPSE TDシリーズのスタンダードモデル、TD510、TD508IIシリーズが発売される。前者は512を正統的に進化させたモデル、後者は、AVシステムとのコンビ、机上での使用を考慮したモデルだ。
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2005年にはTD510とTD508IIが発売された。写真は高い評価を集めたTD510 |
2006年は、AVファンにとって画期的な年となった。待ちに待ったハイエンドのサブウーファーTD725swが発売されたのだ。このモデルでは、2基の25cmドライバーユニットを使用し、パワーと正確性が両立する「R2RTWINDRIVER」を新たに開発し搭載した。また、ハイスピードサウンドを得るうるためのテクノロジーを随所に採用し、切れのある正確な低音再生を実現している。私は、発売と同時に本機を自宅のシステムに導入した。スピード感において、他の追従を許さぬ本機は、すでに手放せぬ製品となっている。
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2006年に登場したハイエンドサブウーファー「TD725sw」。パワーと正確性を両立したモデルとして今なお高い人気を誇る |
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小型ハイエンドモデル「TD307II」シリーズ。アンプとの組み合わせモデルなども用意している |
2007年には、307のマーク2モデルTD307IIシリーズが発売された。ECLIPSEでは、これを「小型ハイエンド」のモテルと位置づけている。
そして今年、TD712zをさらに進化させたTD712zMK2が登場した。 |