TD712zMK2は、同社のフラグシップ機で、5年前に登場したTD712zのマーク2モデルである。712zからの主な改良点は、エッグシェル型エンクロージャーの容積を拡大し、低域再生範囲の拡大を図ったこと。高さは25mm高くなり、有効容積は4リットル増し11.9リットルとなった。低域再生周波数(−10dB)が40Hzから35Hzとなり、高域限界は20KHzから26KHzに伸びている。能率(出力音圧レベル)も83.5dB(デシベル)から84dBと0.5dBアップしている。
ユニットは、12cmのフルレンジ・ドライバー1個のみ。振動板には712zと同じくグラスファイバーが使われているが、素材そのものは改良している。磁気回路は全面的に見直しそのため磁束密度が約10%向上している。エッジはコルゲーションエッジ化され、ダンパーの形状も改良されている。
TD712zからTD712zMK2への進化のうち、外見ではっきり判るのは、鶏卵形のエッグシェル・エンクロージャーが一回り大型になっていること、端子部分の切削が変わっていること、保護用金属ネットが、エンクロージャーの曲線から前に出なくなったことなどである。
外観上、もっとも変わったのはスタンドとスピーカーの結合部で、TD712zであった〈ネック部〉を取り外し、本体とスタンドを直に接合することができるようになった。TD712zではスピーカーの首振り角度を変える時、4個のネジ調整でおこなっていたが、MK2ではそれが1カ所で行えるようになった。この使い勝手の差はかなり大きい。レギュラースタンドを付けたTD712zMK2(全高989mm)、(2ショートスタンド付きのTD712zMK2-S(全高601mm)が用意されている。
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ECLIPSE TDシリーズのスピーカーシステムの特徴は、まず、独特の「エッグシェルコンストラクション」にある。対向する平面がないこの形態のエンクロージャーでは、再生音の特性を乱す定在波が発生がなく、全面に角がないので回折効果による固有音が発生しない。 ECLIPSE TDシリーズが目指すのは、クラリティが高く、空間の再現能力に長け、スピード感あふれるサウンドである。具体的に言えば次のようになる。 真の「クラリティ」とは、スピーカー自身が発する固有音を徹底的に排除したことから生まれる繊細な表現である。従来のスピーカーでは,その固有音が繊細な表現をマスクしていた。繊細な表現とはデリケートな音色差、強弱差などで、録音現場の空気感、演奏者の運指音などもそれに入る。「空間の再現力」とは、音像定位や音場表現の正確さと思っていい。スピーカーの自身が発する固有音がなくなると、音像は録音されたとおりの位置にはっきりと定位し鳴りはじめる。音はスピーカーからではなく、空間から聞こえてくる印象だ。 スピーカー自身の固有音を無くすための方策は随所で見られる。ユニットの振動板に素材の固有音が少ないグラスファイバーを採用したのもそうだし、スピーカーユニットを〈ディフュージョン・ステー〉でエンクロージャーからフローティングし、エンクロージャーの鳴きをなくした構造もその一環だ。 「スピード感」とは、音の立ち上がり、立ち下がりの再生に係わる重要なポイントである。リズムの躍動感を表現するためには、正確に空気の動きを再現する必要がある。そのためには、スピーカーユニットが素早く空気を押し、また瞬時に止まることが必要だ。ECLIPSE TDシリーズのスピーカーでは、空気を押す際に発生する反作用の力を独自のテクノロジーで制御している。具体的には〈グランドアンカー〉と呼ばれる円錐形の錨をユニットの後部に接続し、振動系の前後運動が素早く動いて素早く止まるよう工夫している。 |
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