新製品批評
Phile-web >> 製品批評 >> EPSON dreamio EMP-TW200を徹底検証



標準設定のままでも表現力が高く、階調もきちんと描き分ける

本機はグレースケールやクロスハッチの出画機能も備えており、色かぶりの有無などを確認できる
最後に本機の画質についてじっくり検証してみよう。DVDで用意した「めぐりあう時間たち」と「サハラに舞う羽根」は、英国とアフリカを舞台にした深みのあるドラマで、映像の美しさも際立っている。

まず、標準設定のままで、カラーモードによる色調やコントラストの違いを確認しよう。明るさ優先のダイナミックモードからシアターモードに切り替えると、肌の色と緑色の発色が自然な方向に向かい、映像に温かみと深みが出てくることに気付く。人物のクローズアップで肌の色になめらかさと柔らかさが出てくるし、さまざまな花が自然に咲き乱れる英国らしい庭の雰囲気は、いかにもそれらしく素直に再現している。「サハラに舞う羽根」に登場する砂漠のシーンも、乾いた空気と独特の赤茶けた色調が生々しい。細かい変更を加えず、標準設定のままで見ているのだが、それでも表現力の幅の広さは十分に伝わってきた。従来見慣れてきた液晶プロジェクターの映像に比べると、階調の微妙な描き分けで立体感を再現する能力が一段と向上していることがわかる。


画質調整を駆使して画を追い込むとさらに深みのある映像が現れた
画質調整で画はこんなに変わった
[ダイナミックモード]ダイナミックモードでまったく調整を加えないデフォルトの映像。はっきりした迫力のある映像だが、映画を見るには少しコントラストが高く、色温度も高めだ
[シアターモード]映画を観るのに最適なシアターモードのデフォルト映像。色温度が下がり、暗部の階調もしっかりと描出している
[山之内 正氏が追い込んだ映像] シアターモードの画をさらに追い込んでみた。色の情報量を保ちつつ、さらにしっとりとフィルムライクな映像が実現できた
さて、ここからさらに一歩踏み込んで、積極的な画作りと微調整に挑戦してみよう。本体のカラーマネジメント機能と、パソコン上の「エプソン シネマカラーエディタ」を併用し、じっくり追い込んでみる。

まず最初は、シャープネスの設定値を数ステップ下げて、DVDの映像に多かれ少なかれ存在する微小なノイズ感を和らげる。ディテールやフィルムの粒状感を残しながら、ノイズが目立たなくなるポイントを探る。組み合わせるDVDプレーヤー側で補正してもいいが、プロジェクター側でもかなりノイズ低減効果を発揮することがあるのだ。

次に、明るさと白レベル/黒レベルの調整機能を使って暗部階調と全体のコントラスト感を調整する。本機の場合はこの設定を大きく変更する必要はないはずだ。そのあと、いよいよ色調のきめ細かい補正に入る。「肌の色調整」は、文字通り肌の色の大まかな補正に便利な機能だ。シアターモードまたはナチュラルモードからスタートし、肌の赤みを若干抑える方向に1ステップ前後補正すると、人物の肌の温度感など、より自然な雰囲気に近付いてきた。

また、各色のオフセット、ゲイン、ガンマの調整機能を活用し、好みの色調を狙ってみる。こうした細かい補正を行うときは、人物などわかりやすい被写体が映っているシーンを静止画で再生し、肌の色調、単色の白っぽい壁、髪の色合いなど、1〜3箇所前後のターゲットを見ながら、色調の変化を確認していくとスムーズな調整ができる。ゲインやガンマを調整するのは一度に2色程度にとどめて、緑や赤への偏りを補正したり、特定の色のノイズ成分を抑えるなど、根気良く調整を重ねていこう。パソコンをつないでいる場合は、途中段階でも構わないからいくつかの設定値を保存し、それらを切り換えて好ましい設定を追い込んでいくといいだろう。

そうして追い込んだ画像は、平面状のスクリーンに投写していることを忘れさせるほど、立体感と奥行き感に富み、色数の豊かさに驚かされる。ランプパワーを落としたモードでは本体の動作音がほとんど気にならないこともあって、濃密で緻密な映像の世界にじっくり浸ることができた。普及価格帯の液晶プロジェクターでここまで深みのある映像が出てくるとは、正直なところ1年前には予想できなかった。進化の速さを見せ付けられた次第である。

山之内氏の設定値
 
基本的な色調整の設定値   パソコンと接続し、RGBCMYの調整も行った