1,920×1,080ドットのフルHDパネルを搭載したホームシアタープロジェクターが、ハイエンドクラスだけでなくミドルレンジにまで広がってきた。ラインナップが増えたことで、自分が求める条件を満たす製品を選びやすくなったことを歓迎したい。
エプソン”dreamio”では、最上位機種にあたる「EH-TW4000」の弟分として「EH-TW3000」をラインナップ。高画質を追求した上位機種と筐体はほとんど変わらないが、リビングルームでの映画鑑賞という新しいテーマを掲げ、気軽に高画質を楽しめるよう作り込まれている。
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EH-TW3000のプロジェクターの心臓部とも言える光学部の設計は、液晶デバイスに3LCD方式のD7世代品を採用。上位モデルとは仕様が異なるものの、昨年の上位機種に搭載されていたパネルをこのクラスに持ち込んだ。
映像に適応して絞りを調節し、暗部を引き締めるオートアイリス技術には、映像の明るさを1/60秒単位で自動認識して従来の2倍速で動作する高速モードも新搭載。さらにアルゴリズムなどの最適化も図ることで、コントラスト比18,000対1*を達成している。新開発の”NEWエプソンシネマフィルタ”は上位機種と共通で、電子的に色補正を加えることで色再現範囲の広さをNTSC比で約115%と広げ、余裕ある再現力を得た。まさに上位機種の技術のエッセンスを取り込み、練り上げられたモデルなのである。 *ダイナミックモード、オートアイリス標準/高速時
EH-TW3000ならではの設計は、リビングルームでの映画鑑賞を目指した仕様に現れている。映像を投写するプロジェクターにとって明るいリビングは高画質を実現しづらい環境だが、EH-TW3000はランプに新開発のE-TORLランプを搭載し、明るさは1800ルーメンを達成。上位機種を凌駕する性能は、まさにリビング重視の作り込みと言って良い。 EH-TW3000の持つ高い設置性能も、リビング向けモデルとしての完成度を高めている。リビングにプロジェクターを設置してホームシアターを楽しむ際には、部屋の形や広さ、家具の配置など部屋ごとに異なる環境にあわせて、上手く設置できるかということに頭を悩まされる。 EH-TW3000の設置性能を見ると、2.1倍のズームレンズを搭載したことで、100型画面投写時で2.98m〜6.36mと非常に幅広い設置距離にプロジェクターを置くことができる。また、設置できる範囲を広げてくれる上下左右のレンズシフト機能は上96%、下85%、左右47%と広い。プロジェクター導入時に気になる騒音レベルも22dB(ランプ低輝度時)と、低いレベルに抑えていることも好印象だ。
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実際の映像を視聴してみよう。まずは、照明をほぼ完全に落とした暗室での視聴だ。
EH-TW3000には映像の視聴環境に応じて6つのモードがあるが、視聴では「シアターブラック1」の設定を利用し、フィルムライクな映像の再現を目指した。なお、オートアイリスはあえてオフとした方が全体のバランスは良いと感じた。 今回はブルーレイの3作品を選んで視聴したが、SFアクション『メン・イン・ブラック』は明るいシーンが多く、力強い描写でデフォルトの設定でも文句なし。 『ラスベガスをぶっつぶせ』は、チャプター7の冒頭で映されるラスベガスの空撮の夜景と、溢れるネオンの光のシーンが特に美しいが、EH-TW3000はその魅力を存分に描き出した。EH-TW3000の美点は映像の輝きにあり、『メン・イン・ブラック』は全体の屋外シーンの色味、『ラスベガスをぶっつぶせ』は暗闇に煌めく光の渦に圧倒された。フルHDの精細さを持ちながらも誇張感のない、自然な情報量を持った映像で、映画の再生で特に重要な階調表現も十分にこなす。 より映像にこだわるのであれば、エプソンのカラーマネージメント技術”Color Reality III”を活用して、カスタムガンマ、6軸のカラー調整、アドバンストシャープネスからなる画質調整で、作品ごとに追い込むのも楽しい。『ラスベガスをぶっつぶせ』では、カスタムガンマ機能で最暗部を若干持ち上げるとディティールがさらに浮かび上がってくる。
最後に視聴した『マイブルーベリーナイツ』は、赤、青といった原色が多用される、ある意味で映像機器にとっては扱いづらい作品だが、明るさを-5まで落とし、ガンマを2.4と全体に暗くして、色の濃さを下げ、さらに色合いを若干緑に寄せながら調整すると最適な映像を得られた。今回はEH-TW4000もレファレンスとして視聴したが、デフォルト設定での様々な作品への適応力では上位機種に譲る部分もあったものの、自分なりに設定を追い込むことで、思い通りの画質を作ることは十分に可能なポテンシャルを持っている。これもEH-TW3000の魅力の一つと言える。
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“リビングルームで高画質”というコンセプトを掲げるEH-TW3000。今回はリビングでの視聴環境を模して、照明を点けた状態での視聴も行った。EH-TW3000には明るい環境向けに「ダイナミック」「リビング」「ナチュラル」「シアター」の設定があるが、映像ソースごとの活用法を紹介しよう。
放送や録画したテレビ番組を楽しむ際には、圧倒的に明るい「ダイナミック」「リビング」の設定が基本。「ダイナミック」は特に光量の設定が必要なケース向けで、個人的には「リビング」の方が好ましく感じた。また「リビング」の設定は放送向けのチューニングなので、映画の視聴時には色の濃さを-3程度まで落とすと落ち着いた雰囲気が出る。部屋の照明を付けたままでも十分に色が乗り、コントラスト感が感じられる画作りで、非常に安心感がある映像だ。カーテンを閉めた薄暗い部屋であれば「シアター」設定で視聴しても良いだろう。 リビングで映画鑑賞、というコンセプトを聞くとエントリーモデルを想像してしまいがちだが、EH-TW3000はフルHDパネルを搭載していることからもわかるとおり、画質面で高いポテンシャルを秘めている。EH-TW4000の弟分というだけでなく、上位機種とは異なる方向性として、リビングという活躍の場を与えられたモデルとして評価すべきであろう。 |
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●方式:3LCD方式
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■エプソン dreamio 製品情報ページ | ||||||||||||||