取材・執筆/ 市川二朗

レファレンスプレーヤーとして絶対的な性能・風格を備えるエソテリックのユニバーサルプレーヤー。ここでは実際に視聴したタイトルごとにその印象をレポートする。視聴に使用したソフトはDTS社が制作したデモディスクの最新版。映像、音声ともに高い再生能力を誇る「UX-1」で、各タイトルの魅力をフルに引き出した。

英雄〜HERO〜
スピード感が見事にそろえられたサウンド
地鳴りを伴う超低域から耳をつんざくような高域まで、スピード感が見事にそろっている。矢を射る音の鋭い切れ込みや、刺さる瞬間の衝撃音は痛いくらいだ。放たれた数千の矢が降り注ぐシーンは、思わず身をよけてしまいそうになる。超低域の効果音の力感と自然なセリフの質感もいい。セリフのレベルに合わせて音量を調整するのがベストだが、そうするとスピーカーやアンプが危ない。画質も優秀。高解像度で透明感がある。

MASTER AND COMMANDER:THE FAR SIDE OF THE WORLD
海の上の激しい砲撃戦の迫力をしっかりと伝える
激しい海上の砲撃戦の迫力が如実に伝わってくる。冒頭の穏やかな海上の波音と鐘の音が印象的。その後の砲撃戦は冒頭の静寂との対比がすごい。ズドンという大砲の発射音は芯のある低音の瞬発力が秀逸で、サブウーファーが鈍重だと追従できない。阿鼻叫喚の叫び声や破壊音の鮮明な切れが恐怖をかき立てる。画質はやや霞んだような印象だが、海上の湿り気を含んだ重たい空気の質感がいい。


※画像は同曲収録のアルバムジャケット
BLUE MAN GROUP/SING ALONG
重低音の厚みとパーカッションのサラウンド感に着目
前衛的なパフォーマンスで有名なBLUE MAN GROUPのビデオクリップである。ボーカルが胴間声でやや歪みもあるが、重低音の厚みとパーカッションのサラウンド感はなかなかのものである。彼らが創作したオリジナル楽器のユニークなサウンドがいい。映像も独創的で、モノトーンをバックに青とオレンジの大胆な対比がおもしろい。音だけでも非凡なものがあるトラックだが、やはり映像付きで鑑賞したい。


SEWDISH RADIO/THE RUN
UX-1が持つ切れのよさがはっきりとわかる
走り、そして逃げる様子を効果音だけで描写する。冒頭の車の衝突音の激しさは滅多に聴けるものではない。全体に鮮明で音場感、移動感に優れ、映像なしでも奇妙な情景(聴けばおかしさが分かるはず)がまぶたに浮かんでくる。できれば画面をオフにして目を閉じて鑑賞したい。リアリティが増す。3分ちょっとの短い作品だが、ちゃんとしたオチも用意されていてなかなかおもしろい。UX-1の切れのよさが生きるトラックだ。


<視聴ソフト>dts DEMONSTRATION DVD SURROUND.9
米国DTS社(デジタル・シアター・システムズ社)が年1回制作するDTSサラウンド音声のデモのためのDVDソフト。メインメニューに映画8作品9シーンと、音楽ビデオ2作品。サブメニューに音楽4作品(音声のみ)と、スウェーデンラジオで放送されたDTS音声のラジオドラマを収録。フォーマットは、dts-ES、dts96/24なども収録し、サラウンド体験を存分に楽しめる。