取材・執筆/ 市川二朗



ティアック、エソテリックが独自に開発したメカニズム「VRDS」は、歴史が古く、初めて世に出たのは1987年である。CDとともに進化したVRDSは、1997年、P-0という頂点を築き2001年のP-70で最終形に到達したのちに、大きなターニングポイントを迎える。それは同じ12cmディスクでありながら、回転数がCDの約4.5倍に達するDVD、SACDへの対応が必要となったからだ。「VRDS」はディスクと同じ径の上面ターンテーブルを持つメカニズムで、DVD、SACDの高速回転に対応するために全面設計変更を迫られたのだ。開発は容易ではなかったが同社はその難関を突破し、それは「VRDS-NEO」として世に出たのである。そして「VRDS-NEO」を初めて搭載したユニバーサルプレーヤーがUX-1なのである。

その画質は微細な分解能と端正で繊細な色使い、晴れ渡る空のような透明感が秀逸である。暗部の階調表現も特に優秀で、映画ソフトの暗いシーンの再生に威力を発揮する。クセのなさ、素直さも特徴で画質評価のレファレンスには最高なのである。

音は強靱無比な筐体と、正確、精巧なメカニズムがものをいって、鍛え上げた鋼のようにバネの利いたスピード感と、時に暴力的でさえある低音の力感が素晴らしい。また、ピアニシモの繊細微妙な雰囲気や、ささやくようなボーカルの質感などの表現も得意としている。さらに音像の締まりのよさ、広大な音場感も併せ持っていて、正に鬼に金棒。僕は視聴してすぐに導入を決めた。UX-1は現在、うちのレファレンスとしてラックの一番いいポジションに納まっている。
UX-1 DETAIL】
フロント2chの出力端子はRCAとXLRの2系統を装備している
ディスク読み取り精度を極限まで追求したアルミ削り出しピックアップベース
品位とソリッド感を醸し出す、UX-1のアルミ削り出しトレイ
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UX-3 DETAIL】
コンポーネントはBNCで出力。マルチオーディオはi.LINKを採用
高速回転メディアに最大限の配慮を尽くしたVRDS-NEOメカニズム
ディスク乗せ部に特殊コーティングを施したUX-3のトレイ
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2005年に新登場したUX-3はUX-1の弟分という位置づけである。価格はUX-1の半分強に過ぎないが、内容も半分ということはなく、随所に改良点も見られるハイC/Pモデルだ。UX-1との主な違いは、マグネシウムだったターンテーブルがジュラルミンになったこと、ピックアップ基台がアルミ削りだしからアルミダイキャストに変更されたこと、アナログ音声出力が5.1チャンネルから2チャンネルのみになったこと、ボンネットがアルミ材から鉄板プレスに変更されたこと、などである。また、レーザー光線の反射を防ぐためにターンテーブルに黒色塗装を施したことや、オーディオデジタル出力にi.LINKが加えられたことはUX-3独自のアドバンテージだといえる。

UX-3の映像回路にはUX-1と同じビデオDACが用いられていて、画質はUX-1に非常に近い傾向がある。解像度の高さや色彩表現力の豊かさはほぼ共通であり、原色の力強い彩り、特に赤の彩度の高さに違いが感じ取れる。

音質もUX-1と同じ血統が感じられる。ただ、わずかに優しさや豊かさといった要素が多めで、UX-1のような厳しさは後退する。それでも普通のプレーヤーよりも、ずっとハードで切れのあるサウンドである。

音や映像の送り出し元となる「プレーヤー」という存在は、本来AVの要となるパーツなのだが、最近はどうも軽んじられているような気がしてならない。ホームシアターの標準機として、「これが我が家のレファレンスプレーヤーです!」と自慢できるようなモデルが非常に少なくなっているのだ。そんな昨今、UX-1とUX-3は音質、画質のよさはもとより、存在感、風格を兼ね備えた逸品として、デジタルディスクプレーヤーの最後の砦を守る大切な存在なのである。


UX-1 SPECIFICATION】
●再生可能ディスク:DVDビデオ、DVDオーディオ、SACD、CD、CD-R、CD-RW、ビデオCD、DVD-R、DVD-RW ●映像出力:DVI×1、S×1、コンポジット(RCA)×1、コンポーネント(BNC)×1、D2×1 ●音声出力:フロント L/R(RCA)×1、フロントL/R(XLR)×1、センター(RCA)×1、サブウーファー(RCA)×1、サラウンドL/R(RCA)×1、光デジタル×1、同軸デジタル(RCA)×1 ●電源:100V AC 50-60Hz ●消費電力:36W ●最大外形寸法:442W×153H×353Dmm(突起部含む) ●質量:25.0kg
UX-3 SPECIFICATION】
●再生可能ディスク:DVDビデオ、DVDオーディオ、SACD、CD、CD-R、CD-RW、ビデオCD、DVD-R、DVD-RW ●映像出力:DVI×1、S×1、コンポジット(RCA)×1、コンポーネント(BNC)×1、D2×1 ●音声出力:フロント L/R(RCA)×1、フロントL/R(XLR)×1、i.LINK×1、光デジタル×1、同軸デジタル(RCA)×1 ●電源:100V AC 50-60Hz ●消費電力:36W ●最大外形寸法:442Wmm×153Hmm×353Dmm(突起部含む) ●質量:23.5kg
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