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I-03の試聴レポート
クラシックでは極上のアナログ再生に極めて近いサウンドで迫力もすごい

エソテリックの上級アンプ群「マスターサウンドワークス」は、「生録によるオリジナルマスタの感動を甦らせる」ことを目指して構想された。エソテリックの母体であるティアックは、かつて世界一のオープンリール・テープデッキ・メーカーであった。「マスターサウンドワークス」シリーズには、マスターテープ領域の音作りが脈々と受け継がれている。

新しいI-03とA-02が加わりESOTERICのアンプは、確実にラインナップが充実した
新しいI-03とA-02が加わりESOTERICのアンプは、確実にラインナップが充実した。多くのオーディオファイルの様々な志向や用途などに対応できるシリーズとなったといえるだろう

現在、エソテリックはどちらかというとディスクプレーヤーやトランスポートやDAコンバーターなどといった「音の入り口」で有名だ。この事実は同社の出自を物語っているようで興味深い。

しかしながら同社の遺伝子には高度なアンプ技術が先験的に組み込まれていた。テープデッキのサウンドには、テープを走行させるメカニズムもさることながら、磁気ヘッドの書き込み&読み取りアンプの性能が大きく影響するからである。

2008年の初頭にリリースされた「マスターサウンドワークス」の1号機、A-100が真空管式であったことは意味深長だ。A-100は、タンノイのプレステージシリーズのスピーカーをドライブするために構想されたように見受けられる。しかしながら同社は(無意識のうちに)、テープデッキが真空管式だった歴史を回顧しつつ、アンプの分野に乗り出していたのかもしれない。

A-100
2008年発売の管球ステレオパワーアンプ「A-100」(¥1,575,000)

 

 
A-02の試聴レポート
ピアノトリオは極めてゴージャスでクラシックは完璧で新発見さえある

「マスターサウンドワークス」の1号機、A-100は終段がKT88プッシュプルの真空管式アンプである。このモデルはカテゴリー的・回路構成的にはパワーアンプだが、セレクターとボリュームコントロール機能も装備しているので、プリメインアンプとして使用することも可能だ。

初段の真空管は12AT7×2、ドライバー段のそれは12AU7×4という豪華な構成で、回路は三段直結となっている。そのサウンドは高性能な真空管アンプらしいパリッとしたものだ。ノスタルジックな要素を排除した現代的な真空管アンプである。

同シリーズのパワーアンプの第2弾はソリッドステート式のモノラル機、A-80である。このモデルには、従来の国産アンプの常識を覆すほどの物量が投入されている。

A-80
2008年発売発売のモノラルパワーアンプ「A-80」(¥840,000)

また、筐体の構造にも配慮がなされており、大型のトロイダルトランスと大型のコンデンサーは回路基板の直下に吊り下げられている。これは真空管時代の戦闘機に搭載されていた通信機によくみられる手法で、制振効果が高い。

回路基板は脚部とダイレクトにつながっており、振動を大地に逃がすような構造になっている。出力は200W・8Ω/400W・4Ωである。

第3のパワーアンプ、A-03はAクラス動作のソリッドステート式ステレオ機だ。このモデルはA-02と機械的な基本構造を同じくするもので、パワーアンプとしては非常に高度で巧妙なデュアルモノラル化が推し進められている。

A-03
2008年発売のステレオパワーアンプ「A-03」(¥945,000)

また、シャーシ/ボディの高剛性化も深化しており、ヒートシンクの鳴きは皆無というレベルまで抑え込まれている。A級動作ゆえに発熱は大きいが、小音量時でも素子がフルスイングしたホットな表現を楽しむことができる。

 
C-03はデュアルモノラル化を徹底しその流れを汲むフォノEQも用意される

C-03は同シリーズ唯一のプリアンプである。プリアンプとしては可能な限りデュアルモノラル化がなされており、電源部も含む同じ回路が筐体の左右にマウントされている。

C-03
2008年発売のプリアンプ「C-03」(¥840,000)

内部を見ると、「よくぞここまで左右を分離したなあ」といった感動を覚えると同時に、「ここまでやるのか」といった一種の恐怖を感じる。このモデルでもシャーシ/ボディの制振が追求されており、5mm厚のボトムパネルは3点支持のピンポイント脚部で大地に接している。そのサウンドはカラーレーションが全くなく、ソースのありようがパワーアンプにダイレクトに送られるような印象だ。

同シリーズはE-03というフォノイコライザーもラインアップしている。

I-03の内部構造
2009年発売のフォノアンプ「E-03」(¥420,000)

このモデルはプリアンプのC-03の流れを汲むコンストラクションがなされており、フォノイコライザーとしては外部からの機械的・電気的影響を最も受けにくい製品のひとつであるといっていい。また、さまざまなカートリッジに対応した定数をフロントパネルのノブで選択できる。

 
新しく登場した2機種の実力と可能性
両機とも音楽を好きになるチャンスをより多く与えてくれる見事なアンプだ

1970年代の初め頃にオーディオに目覚めた私は、エソテリックの製品に接すると、どうしてもティアックのオープンリール式テープデッキを思い出してしまう。1970年代において、ティアックのテープデッキはそれほど輝いていた。

メカニズムとエレクトロニクスの権化のような容姿もさることながら、音が素晴らしかった。同じアナログでもLPには何らかの色づけがあったのに対して、ティアックのテープデッキのサウンドはカラーレーションがほとんどなく、透明度が極めて高かった。

このサウンドはエソテリックのアンプにも確かに受け継がれている。オーディオ王国であるわが国には、いくつかの有力なアンプブランドが存在する。そのなかにあって、エソテリックの製品のサウンドは最も色づけが少なく、最も確実に音楽のありかたを再現するのではないだろうか。この音楽表現は、妥協が許されない録音現場で培われたものにちがいない。

現在において、良質なアンプは数多く存在する。しかしながらエソテリックのアンプほどカラーレーションの少ないアンプは、ほとんど市場にないと言っても過言ではない。もしも貴方が透明度の高いレンズを通して音楽の世界を眺めたいのなら、エソテリックのアンプを試聴することを強くお薦めする。

 
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