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炭山アキラが聴いた“uno”と“duo”
文/炭山アキラ

■音が前へ飛んでくる大スケールのハイファイ

今回、G2のunoとduoΩ G2を聴くことができた。

uno G2   duo G2
uno G2
 
duo G2

unoはまず軽やかなコントラバスの低域と、それにまったく違和感なくつながる中域、スムーズに伸びきった高域が印象的だ。音の遅れる感じがなく、楽器1本1本が生き生きと弾むように飛び出してくる。広大なコンサートホールに大きな編成のオケがゴージャスに並び、コンサートホールの特等席で味わえる臨場感が眼前に現れて驚かされる。全体に当たりはソフトなのだが、それで音の輪郭が鈍ること、メリハリが阻害されることがまったくない。これは歪みが少ないせいだと思われる。

試聴01   試聴風景02
アバンギャルドのduo Ω G2とuno G2の試聴は5月末、エソテリック(株)試聴室にて行った。レファレンス機器はオール・エソテリック。P-05、D-05、G-0Rb、C-03、A-03を使用

duoΩは、18Ωというハイインピーダンスの中高域ドライバーを搭載している。それによってアンプのダンピングファクターが向上するのだ。高能率を誇るスピーカーでしか実現できない手法である。低域自体はunoと変わらないはずなのに、冒頭のコントラバスから迫力が数段違って聴こえるのが面白い。200Hzよりも下まで中域ホーンが受け持っているせいが大きいのであろう。

パネル01   パネル02
uno G2のフロントパネルを外すと、ウーファーが2発現れた

構成がそう変わらないのに、コンサートホールの空気容量が増えたようなイメージとなり、オケも1人1人が実体感を増し、より眼前に近く定位するようになった。概してオケの至近で聴くと音がきつく感じられるものだが、それを感じさせず、なおかつホールの最前列で聴くような勢いを味わわせるのだから、このスピーカーはすごい表現力だ。

帯域は極めて広く、どこか特定の帯域が突出していたり引っ込んでいたり、輝かしかったり艶やかだったりということもなく、どこまでもナチュラルな質感が耳に快い。低域がホーンの中高域とうまくつながっていることにも驚くほかない。これは最新のMFB技術が有効に働いているのだろう。

炭山氏の機器確認
製品を確認する炭山氏

かつて、スピーカーはホーンが主流だった。ソリッドステート素子が発明されるまでは、出力を稼ぐのが難しい真空管アンプで大きな映画館やコンサート会場の隅々まで音を届けなければならなかったので、それは必然の選択だった。

しかし、その当時花形産業として膨大な開発費を投じて開発された米ウエスタン・エレクトリックの製品や独クラングフィルムのGR LENS A12 28mm F2.5オイロダインなどを聴くと、今なおその完成度の高さ、音楽そのものを眼前に展開してくれる再現に心を打たれる。優れたホーンによる高能率のサウンドというものは、ある種ハイファイの王道だといっても過言ではなかろう。

今回アバンギャルドG2のunoとduo Ωを聴いていて、やはり脳裏に浮かんだのはオイロダインやウエスタン15Aの巨大な存在感であった。しかも、それらと大きな共通点を持ちながら、現代の技術的蓄積が生きているからレンジも広いし、手もかからない。高密度だが音が前へ飛んでくるものが少なくなった現代のスピーカーに飽き足らず、ビンテージへ向かった超マニアには、ぜひ一度味わってほしい世界である。

また、ホーンの時代をご存じない若いマニアにもぜひ体験してほしい。きっとこれまで味わうことのかなわなかった大スケールのハイファイに驚かれることであろう。

 
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