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オーディオコンポーネントの頂点を決定する「オーディオ銘機賞2011」。栄えある金賞はエソテリックから登場したハイエンドSACD/CDプレーヤー「K-01」に輝いた。

これまでのCDライブラリを最高音質で再現することはもちろん今後のオーディオソースの主流となるであろうPCライブラリの音源も対応した本機。オーディオの歴史に新たな一ページを刻むにふさわしいモデルがここに誕生した。


 
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ソース機器の多様化が進むのと並行して、ディスクプレーヤーにも着実な進化が進行している。むしろ、ソースのバリエーションが広がるほど、ディスクの見直しが加速していると言っていいかもしれない。登場以来四半世紀を超えたCD、そして10年以上経過したSACD、それぞれの真価を引き出す取り組みがメディアとプレーヤーの両方で熱心に繰り広げられているのだ。この数年間に登場した各社のフラッグシップモデルや、高音質素材を投入したディスクの存在が、それを物語っている。

ディスクプレーヤーの分野で進化を牽引しているメーカーなかでも、代表格といえるのがエソテリックである。高度なメカトロニクス技術の蓄積を生かして開発した究極の「VRDS‐NEO」メカニズムを核に、高音質ディスク再生の最先端を突き進み、特にフラッグシップラインのセパレート型プレーヤーでは圧倒的存在感を示してきた。

そのエソテリックが、一体型プレーヤーの分野においてもさらに一段階上のクオリティを実現することをねらって開発したのが、オーディオ銘機賞の金賞受賞モデルK‐01である。

K-01フロント部   K-01背面部
K-01のフロントパネル。シンプルなボタン配置ながらも使いやすい構成は、同社プレーヤーに共通する仕様だ   背面部。RCA、XLR各1系統を装備したアナログ出力や、RCA同軸、光TOS、USBを搭載したデジタル入力端子など、あらゆるメディアに対応している。PC用には、ESOTERICオリジナルのドライバーソフトウェアを新規に開発。高品位なアシンクロナス伝送と192kHz/24bitまでのハイサンプリングソースに対応する

これまで同社の一体型CDプレーヤーには“X”という呼称が付いていたが、今回は“Kシリーズ”として新たなスタートを切ることになった。

外見も大きく生まれ変わり、これまでのスクエアなデザインから、曲面を生かしたラウンドフォルムに大きく方向転換。世代交代を明確にアピールしつつ、セパレート型のデザイン思想を継承して、ブランドの“顔”を統一する役割も果たす。肉厚のアルミブロックを採用したり、トップパネルからビスを取り去るなど、素材とディテールにこだわった外装は、たしかに以前と比べて格段に高級感を増している。

リモコン
高級機の質感にマッチした、重量感あるアルミボディ×皮革仕上げのリモコンが付属する

 

 
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K‐01の心臓部に当たるドライブメカニズムは、セパレート型トランスポート「P‐03」と同等のVRDS‐NEOをセンター位置に搭載。スチール製ターンテーブルブリッジの厚みは20mmに及び、トレイ開口部には精密なシャッター機構を備えるなど、セパレート型に匹敵する贅沢な仕様を奢った。スピンドルサーボの駆動回路を新たに設計し直し、さらに同回路の電源用に独立したトロイダルトランスを搭載したことも、一体型の製品としては一歩踏み込んだアプローチとして注目に値する。

VRDS-NEO   ドライブ部
メカニカルに面振れを補正することで読み取り精度を高める独自の『VRDS-NEO』。本機では駆動回路設計にリファインを加えたVRDS-NEO『VMK-3.5-20S』が搭載されている。トレー部にシャッター機構を装備したり、スピンドルの軸受けにセラミックボールベアリングをペアで採用するなどした総質量5.2kgにもおよぶハイグレードメカニズムだ。このほかにもミクロン精度のジュラルミン・ターンテーブルや、20mm厚ターンテーブルブリッジを採用するなど、最新の技術力を結集した内容となっている

この徹底した手法が音質に与える効果は小さくないはずだ。ターンテーブルを使用するVRDSメカニズムでは、スピンドルモーターの駆動電流がかなり大きく、独立させることの効果は無視できない。基本的に、駆動系からオーディオ回路への影響を最小に抑えることは、ディスクプレーヤーの音質改善にとって、最も重要性の高い課題のひとつなのである。

本体トップパネルを外して内部に目を向けると、本体後方に左右独立・完全対称の基板があり、さらにステレオ構成のDACを2個搭載したサブ基板が追加されている様子が見える。

内部構造
内部は5分割の2階建て構造とし、各回路ブロックを専用のコンパートに納め、回路同士の相互干渉を最小限に抑えている

DACはこの下の基板上のチップと合わせ、左右それぞれ4個(=8ch分)を搭載する。チャンネル当たり8回路という構成は、最高峰のモノラルDAC「D‐01」と同じだ。本機では左右独立基板に分け、完全デュアルモノ構成で配置している。

もちろん電源部も独立しており、内部をボトム側から見るとアナログ基板直下にそれぞれ専用のトロイダルトランスが取りつけられていることが分かる。

DACチップはD‐01からさらに進化し、K-01には旭化成エレクトロニクスの「AK4399」を新たに投入した。32bit動作の最上位バージョンで、基本性能の高さに加え、ニュートラルな音を再現することが、このDACを採用した主な理由だという。DAC用のクロック信号は大型水晶を内蔵する高精度±0.5ppmの水晶発振器からPLLを介さずダイレクトに供給され、ジッターの大幅な低減を実現した。

DAC部   クロック部アップ
新設計の高精度クロックを搭載し、一体型プレーヤーとしての最高レベルの音質を実現。大型水晶を内蔵した高精度±0.5ppmのVCXO(電圧制御型水晶発振器)を採用し、専用安定化電源回路を組み合わせることで安定した動作を可能とした

機能面でも注目すべき点が多いが、ワードシンクが新たに10MHzに対応した点と、非同期伝送を実現する192kHz/24bit対応のUSB入力を搭載したことが特に話題を呼びそうだ。一体型プレーヤーにおいても多様なデジタルソースへの対応は重要な課題になっており、本機はその需要を先取りする存在といえる。また、セパレート型DACが担ってきた役割の一部をも受け継ぐ対応力の広さも身につけた。

 
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K‐01が金賞にふさわしい製品として評価された最大の理由は、再生音の完成度の高さにある。セパレート型、一体型を問わず、これまでエソテリックのデジタルプレーヤーの音として私たちが支持してきた精密さや圧倒的情報量を基盤に据えつつ、さらにその先の表現力を獲得した点が、特に高く評価されたのだ。

具体例を挙げてみよう。表現の幅が従来よりも確実に広がっている例として、エルガーのチェロ協奏曲冒頭を聴く(独奏:ソル・ガベッタ)。

チェロの独奏に弦楽器、木管楽器が次第に音を重ねていく最初の数十小節を聴くだけで、際立った音色の多様さに息を呑んだ。

音域による厚みや色合いの違いはもちろんのこと、弓の速さや圧力の変化による音色の違いが実に精妙で階調に富み、ひとりの卓越した歌手が歌っているような深い表現力が伝わってくるのだ。その表現力の広がりと、独奏チェロや弦楽器のしなやかで柔らかいタッチは、K‐01が新たに獲得した重要な資質のひとつだと思う。

その後、主題の提示に続いてオーケストラの音量が上がっていくと、今度は地に足の着いた安定感の高さに圧倒される。揺らぎのない安定した低弦のピッチと伸びのある音色は格別で、オーケストラ全体の響きをしっかりと支えている。その安定した響きが土台にあるからこそ、独奏チェロの艶やかな音色や繊細なピアニシモがくっきりと浮かび上がってくるのだ。

ベースやギターのシンプルな伴奏で歌うペトラ・マゴーニのボーカルは、ライブ会場の漂うような空気感と共に、これ以上はないと思わせるほどリアルな存在感がある。

声はどの音域にも潤いがあり、ドライなタッチに傾くことがないし、ギターの木質の余韻も絶妙な柔らかさをたたえている。ベースはアンカーで固定したような安定した音像が立ち上がり、まったくふらつかない。声も楽器もどれひとつとして輪郭がにじんだりぼやけたりしないので、ステージを目の前にしてミュージシャンと直接対峙しているような錯覚に陥るし、スピーカーの存在は最初から意識の外にある。

ここで紹介した表現力の深みはほんの一例に過ぎない。ディスクから新しい表情を引き出すことに関心があるなら、本機の音をぜひ試聴してみることをお薦めする。

 

【受賞コメント】

ティアック(株)
コンシューマーオーディオ事業部
Kシリーズ開発プロジェクトリーダー
加藤徹也 氏

K-01が金賞を受賞いたしましたことは、大変光栄です。心臓部となるVMK-3.5-20Sは、初代X-01から熟成を重ね、スピンドルモーターのドライブ回路を新たに一から設計し、より滑らかなターンテーブルの回転を追求しました。

また、シャーシは高精度なスポット溶接を使った強固なもので、ダンプ材を貼りつけずにシャーシの鳴きを少なくするために、溶接を行う場所やネジ止めの場所を吟味した新設計のものです。

オーディオ回路は、電源トランスから、出力回路にいたる全てが、「デュアルモノ」を追及した構成となっています。また片chあたりDACを8回路使うというのも、音質に効いています。

このようにかなりのこだわりを持って開発したK-01ですが、音楽にのめり込んでいただけると思います。読者のみなさまにも、エソテリック入魂のK-01で、音楽を楽しんでいただけたらと思います。


 
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